「うちの子、友だちが泣いていても知らんぷり…」
「自分の気持ちをうまく伝えられなくて、すぐかんしゃくを起こしてしまう」
そんな悩み、感じたことがありませんか?
実は、共感力や感情を言葉にする力は、生まれつき決まっているものではありません。日々の経験の中で、少しずつ育てていくことができます。
そして、そのための最も自然な方法のひとつが——読み聞かせです。
「共感力」ってそもそも何?
共感力というと、「相手の気持ちに寄り添える力」というイメージがありますね。
でも実は、共感力を発揮するためには、まず「感情のことば」を持っていることが必要です。
「悲しい」「悔しい」「不安」「もどかしい」「うれしい」「誇らしい」……
こうした感情を表すことばを知っていないと、自分の気持ちも、相手の気持ちも、正確につかむことができません。
感情語彙が少ない子は、複雑な気持ちをすべて「なんかイヤ」「ムカつく」という大ざっぱなことばで片づけてしまいがちです。するとどうなるでしょうか。
自分の本当の気持ちがわからないまま、もやもやが積み重なる。友だちが困っていても、何を感じているのか読み取れない。だから、どう関わればいいかも分からない。
つまり、感情語彙の豊かさが、共感力の土台になっているのです。
読み聞かせが共感力を育てる3つの理由
① 絵本の中に「感情のお手本」がある
絵本の登場人物は、さまざまな感情を体験します。
転んで泣く。友だちとケンカして悲しくなる。はじめてのことに緊張する。がんばってうまくいって、誇らしく思う。
そうした場面を親と一緒に読み進めながら、
「この子、今どんな気持ちかな?」
「悲しいのかな?それとも、悔しいのかな?」
と言葉にしていくうちに、子どもは感情のことばを自分のものとして身につけていきます。
絵本は、感情語彙を学ぶための「お手本集」ともいえます。教科書のように堅くなく、物語の流れの中で自然に心に入ってくるのが、読み聞かせのすごいところです。
② 「安全な場所」で感情を体験できる
読み聞かせのもうひとつの大切な働きは、「安全に感情を体験できる場をつくる」ことです。
本の中の出来事は、リアルな痛みや危険を伴いません。
主人公がけんかをした場面を読んでも、子どもが実際に傷つくわけではない。でも、その場面で心がぎゅっとなる感覚は、本物です。
こうして絵本を通じて「悲しい」「怖い」「悔しい」「やりきった!」という感情を安全に経験することで、子どもは感情そのものに慣れていきます。
感情に慣れているということは、自分が怖いと感じたとき、悲しいと感じたとき、それを「怖さ」「悲しみ」と認識できるということです。認識できてはじめて、相手の「怖さ」「悲しみ」にも気づけるようになります。
これが共感の第一歩です。
③ 親子で「気持ちを語る時間」が生まれる
読み聞かせは、親子が同じ場面を見て、同じ感情の動きを体験する時間でもあります。
「このシーン、なんかじんとするね」とお母さんが言う。
「うん、かわいそうだった」と子どもが答える。
このやり取りの中で、子どもは大切なことを学んでいます。
「感情について話してもいいんだ」ということを。
感情を表に出すことを恥ずかしいと感じている子、気持ちをうまく言葉にできない子にとって、読み聞かせはとても安心できる練習の場になります。
親が先に感情を言葉にして見せることで、子どもも「自分の気持ちを言っていい」と感じられるようになっていくのです。
感情語彙を育てる読み聞かせのポイント
まずは余韻を大切にする
読み聞かせが終わったら、すぐに感想を求めたり、質問したりするのはちょっと待ってください。
物語に没頭した後には、しばらく余韻に浸る時間が大切です。その静かな間に、子どもの心の中でさまざまな感情が動いています。
子どもが何か話したそうにしていたら、耳を傾けてあげましょう。また、「どんな気持ちだったかな」と聞いてほしそうなそぶりがあれば、一緒に絵本のことを話してみるのもいいですね。
「この子、なんで泣いていたんだろうね?」
「あなたが同じ立場だったら、どんな気持ちになるかな?」
子どもが「悲しいかな」「怒ってる?」とつぶやいたら、「そうかもしれないね。もしかして、悔しいっていう気持ちもあるかな」と、ことばを少し広げてあげるのもいい方法です。
会話が広がらなくても、それで十分です。余韻をそっと守ってあげることが、次に本を開くときの心の準備になります。
感情のことばを「たくさん持っていること」を見せる
親御さん自身が、豊かな感情語彙を使うことも大切です。
「悲しい」だけでなく、「切ない」「もどかしい」「寂しい」「がっかりした」。
「うれしい」だけでなく、「誇らしい」「じんとする」「ほっとした」「感動した」。
難しい言葉を教え込む必要はありません。読み聞かせの中で親御さんが自然に使うことで、子どもはそのことばをどんどん吸収していきます。
「正解」を求めない
「この子は今、悔しいと思っているんだよ」と正解を教えることよりも、「どんな気持ちだと思う?」と一緒に考える方が大切です。
感情の読み取りに「絶対の正解」はありません。自由に想像し、言葉にする経験そのものが、共感力の土台をつくります。
感情語彙を育てるのにおすすめの絵本・本
『ともだちほしいな おおかみくん』(さとうわきこ 作・絵/フレーベル館)
内容
友だちがほしいおおかみくんが、勇気を出して声をかけようとするお話。緊張・不安・期待・うれしさが丁寧に描かれています。
感情語彙に効く理由
「仲良くなりたい」という気持ちの複雑さ(緊張・期待・怖さ)に共感しやすく、「おおかみくん、どんな気持ちだったかな?」という会話が自然に生まれます。
『はじめてのおつかい』(筒井頼子 作・林明子 絵/福音館書店)
内容
5歳のみいちゃんがはじめて一人でおつかいに行くお話。どきどき・はらはら・がんばる気持ちが、繊細なイラストで描かれています。
感情語彙に効く理由
主人公の緊張や達成感が非常に丁寧に表現されており、「みいちゃん、緊張してるね」「うまくできてよかったね、ほっとした?」といった言葉かけが自然にできる一冊です。
まとめ|感情のことばを持つ子は、人とつながれる
共感力は、「やさしい性格」だから持てるものではありません。
感情を言葉にする経験を重ねることで、少しずつ育っていくものです。
読み聞かせは、その経験を毎日、自然な形で積み重ねられる場所です。
- 絵本の中に「感情のお手本」がある
- 安全な場所で感情を体験できる
- 親子で気持ちを語る時間が生まれる
特別なトレーニングも、高価な教材も必要ありません。
「この子、今どんな気持ちかな?」と、一緒に考えながら絵本を読む。それだけで、子どもの感情語彙は少しずつ豊かになっていきます。
感情をことばにできる子は、自分の気持ちを整理できます。そして、人の気持ちにも気づけます。
ことばは、人と人をつなぐ橋です。その橋をしっかり育てていきましょう。
このブログでは、読み聞かせをはじめとする日常の中でできる「ことばを育てるヒント」をお届けしています。ほかの記事もぜひのぞいてみてください。


コメント