目次
こんな方におすすめの記事
- 「子どものために読み聞かせをしなければ」と義務感で取り組んでいる方
- 疲れていて読む気になれず、罪悪感を感じている方
- 読み聞かせを続けているけれど、「本当に意味があるのかな」と感じ始めた方
- 子どもとの関係をもっと豊かにしたいと思っている方
- 読み聞かせを通じて、自分自身も変わっていきたいと思っている方
「読み聞かせって、子どものためにするものでしょ?」 そう思っていませんか? もちろん、子どもへの効果は言わずもがなです。でも、脳科学や心理学の研究が明らかにしているのは、読み聞かせは「してあげるもの」ではなく、「一緒に育つもの」だということ。 この記事では、読み聞かせのメリットを「子どもとの関係につながるもの」と「読む側自身に直接返ってくるもの」に分けて整理します。自分のためにもなり、子どものためにもなる。そう知ると、今夜絵本を開く理由が少し変わるかもしれません。
読み聞かせ中、親の脳では何が起きているか
まず、一つの研究結果をご紹介します。 東北大学加齢医学研究所の研究グループは、親子が読み聞かせをしているときの脳活動を計測しました。その結果、読み聞かせをしている親の脳で最も活発に動いていたのは「言語野」ではなく「コミュニケーション領域」だったことがわかりました。 親子の脳を同時に計測すると、コミュニケーションを担う部分が親子で同じような活動を示し、「共感関係(お互いの気持ちを理解し、思いやれる状態)」にありました。 絵本を読むという行為は、子どもの脳だけでなく、親の脳にも確かに働きかけているのです。【子どもとの関係につながるメリット】
① 親子の安全基地が育まれる
「どんなことがあっても、あの人のそばに行けば大丈夫」という感覚——これを心理学では「安全基地」と呼びます。 毎晩、あるいは気が向いたときに、親の声で物語が聞こえてくる。自分だけのためにそこにいてくれる時間がある。それはそれだけで、子どもにとって強い安心感の源になります。 安全基地がしっかり育った子どもは、外の世界に挑戦しやすくなるといわれます。失敗しても「戻れる場所がある」という感覚が、子どもを強くするのです。② 思春期以降の関係の土台になる
「小学生の間に読み聞かせをしておくと、思春期になって急に話が通じなくなる感じが少なくなる」と話す親御さんは少なくありません。 言葉には出しにくい感情を、物語を通じて共有してきた経験は、静かに積み重なっています。中学生になって「親には言えない」と思う場面でも、「あの本に出てきた話みたいなことがあった」という記憶が、会話の糸口になることがあります。 読み聞かせは今この瞬間の体験であると同時に、数年後の親子関係への積み立てでもあります。③ 子どもの成長が間近で感じられる
読み聞かせを続けていると、子どもの変化に気づける場面がたくさんあります。- 以前は知らなかった単語を自分で読み取るようになった
- 登場人物の気持ちについて、以前より深い感想を言えるようになった
- 長い話でも集中して最後まで聞けるようになった
④ 子どものことがもっとわかるようになる
「どのページで目が輝くか」「どんなセリフに笑うか」「どの場面でぼーっとしてしまうか」——読み聞かせをしながら子どもをじっくり観察していると、意外な一面が見えてきます。 「この子、こういうことに興味があったんだ」「最近こんな言葉を使えるようになったんだな」という気づきが積み重なると、日常の関わりの中での言葉かけも変わってきます。 テストの点数や通知表では見えない、子どもの内側にあるものが、読み聞かせの時間には見えやすくなります。⑤ 子どもの悩みや不安に気づきやすくなる
読み聞かせの後、子どもが「ぽろっと」話すことがあります。 「ねえ、この子みたいなこと、学校でもある」 「これって、ずるいと思う?」 物語を通じて安心できる状態になったとき、日常では言えなかったことが出てくることがあります。読み聞かせの後のひとときは、子どもが本音を話しやすい時間になりやすいのです。 親から「どうだった?」と聞かれると構えてしまう子でも、物語を介すると自然と話し始めることがあります。⑥ 子どもの世界を追体験できる
「自分が子ども時代にやりたかったこと」「してほしかったこと」を、今から体験できる——読み聞かせには、そういう側面があります。 自分が親にしてもらえなかった体験を、今の子どもに届けているという感覚は、多くの親御さんが静かに感じていることです。子どもの反応を見ながら、かつての自分の気持ちに気づくこともあります。読み聞かせは、子どもを育てながら自分の子ども時代と向き合う時間になることもあるのです。⑦ 「ちゃんと関われている」という自信になる
子育てをしていると、「もっとやってあげられたのでは」という罪悪感が積み重なりやすいものです。 読み聞かせをした日は、「今日は子どもと向き合えた」という、小さくて確かな実感が残ります。それは自己評価の高い低いではなく、親としての地に足のついた自信になっていきます。 毎日でなくてかまいません。「週に何回か、子どものそばで声を出して読んだ」という事実は、積み重なって親自身の支えになります。⑧ 「本を読むのが当たり前」という家庭の文化が育まれる
読み聞かせが日常にある家庭では、本が空気のような存在になっていきます。「読まなければいけないもの」ではなく、「そこにあるもの」として本が馴染んでいく。 子どもが一人で読む本も、宿題の文章も、将来の仕事での文書も——文字を読むことへの親しみは、子ども時代の読み聞かせの積み重ねから始まっています。⑨ 子どもの将来への投資になる
読み聞かせが子どもにもたらす効果は、語彙力・読解力・集中力・共感力・自己肯定感・睡眠の質など、多岐にわたることが研究で示されています。 「何かひとつ子どもにしてあげるなら」という問いに対して、多くの研究者が「読み聞かせ」を挙げるのには理由があります。特別な教材や習い事がなくても、親の声と一冊の本があれば始められる最良の子どもへの投資です。 https://ichica-kotoba.com/yomikikase-11-chikara-shogakusei/
【読む側自身に直接返ってくるメリット】
実は読み聞かせは、子どもとの関係だけでなく、読む側のスキルや心の状態にも直接影響することがわかっています。⑩ 音読が脳を広範囲に刺激する
黙読と音読は、脳への影響がまったく異なります。 黙読では目から情報を読み取って脳に送るだけですが、音読では「目で読む・声に出す・耳で聴く・意味を理解する」という複数の作業が同時に行われます。脳の研究者によると、音読中には脳の70%以上の神経細胞が働くとも言われ、黙読よりはるかに多くの領域が活性化します。 「読み聞かせをした後、なんとなく頭がすっきりした気がする」——その感覚は、脳が広範囲に刺激を受けたことによるものかもしれません。⑪ ストレスが軽減される
「忙しい毎日の中に、多少無理してでも読み聞かせの時間を作ることで、かえって子育てがラクになる」と断言するのは、東北大学・川島隆太教授です。逆に、スマホやテレビに子守をさせていると、短期的にはラクになるように感じても、親子関係が希薄になり、子育てストレスが増えるという研究結果があります。 また、声を出すことで幸福感や落ち着きに関わるセロトニンの分泌が促されることが知られています。物語のリズムに乗って声を出す時間は、日常の雑念から一時的に離れ、気分転換や頭の切り替えにもなります。⑫ 滑舌・発声のトレーニングになる
読み聞かせは毎回、声に出して文章を読む練習です。慣れてくるにつれて、口の動きがなめらかになり、滑舌が改善したと感じる方もいます。 普段の会話では意識しない「声の張り」「抑揚」「間の取り方」なども、読み聞かせを続けるうちに自然と磨かれていきます。これは仕事でのプレゼンや接客、電話応対など、「声を使う場面」すべてに活きるスキルです。⑬ 表現力・伝える力が磨かれる
読み聞かせをするとき、「どう読めば伝わるか」「どこで間を置けばドキドキするか」を自然と考えます。 「次のページにめくるタイミング」「声のトーンを落とす場面」「ゆっくり読むことで緊張感を出す場面」——これらはすべて、伝える力・表現力のトレーニングです。 営業の場でもプレゼンの場でも、「相手に届く話し方」は一朝一夕には身につきません。読み聞かせはその練習を、日常の中で自然にできる場でもあります。⑭ 語彙力・言葉への感度が高まる
読み聞かせをしていると、普段の会話では使わないような言葉や表現に触れることになります。 「こんな言い回しがあったんだ」「この単語、どう説明しよう」という気づきが積み重なることで、親自身の語彙の引き出しも少しずつ豊かになっていきます。 また、「子どもに伝わるように言い換える」という作業は、思っている以上に言語化能力のトレーニングになります。なんとなくわかっているけど説明できなかった言葉を、自分のものにしていく機会が、読み聞かせには随所にあります。⑮ 自分の価値観を見直すきっかけになる
読み聞かせをしていると、子どもが予期しない質問をしてくることがあります。 「なんでこの人、意地悪したの?」「嘘ついたほうがよかったんじゃない?」「これって、かわいそうじゃないの?」 そのとき、大人は改めて「自分はどう思うか」を考えます。当たり前だと思っていた価値観を、子どもの問いかけを通じて見直す機会になる。これは、読み聞かせがもたらす、静かで深いメリットです。 答えを用意しなくていいのです。一緒に考えること自体が、親子にとって豊かな時間になります。「うまく読めなくていい」は本当のこと
読み聞かせに対して、「上手に読まなければ」というプレッシャーを感じている方もいるかもしれません。 でも、川島隆太教授はこう言っています。「どんなに短い時間でも、どんなに下手でも、子どもにとって身近な大人が読み聞かせをしてあげてほしい」 東北大学の研究では、読み聞かせの効果は「誰が読んでも一律ではなく、親(特に母親)が読み聞かせたときに子どもの集中度が最も高くなる」という結果も出ています。プロのナレーターより、あなたの声が子どもには届いているのです。
参考になる本のご紹介
読み聞かせに使える本
『ココロが育つよみきかせ絵本 日本の昔ばなし 名作50選』田島信元 著(東京書店)リンク
桃太郎、かぐや姫、雪女など日本の昔話が50話収録されています。大判イラスト付きで読みやすく、声に出して読むのにちょうどいいリズムの文章が揃っています。読み聞かせのネタに困ったときに重宝する一冊です。
『決定版 まんが日本昔ばなし101』川内彩友美 編(講談社)
リンク
TVアニメ「まんが日本昔ばなし」から傑作101話を収録。桃太郎・鶴の恩返し・雪女など、馴染みのある話が多く、読む側も楽しめます。昔話は読み聞かせの音読練習にも向いていて、言葉のリズムが自然に身につきます。
音読のメリットをさらに知りたい方に
『1日1文読むだけで記憶力が上がる!おとなの音読』加藤俊徳 著(きずな出版)リンク
脳内科医である著者が、音読が脳の複数の領域を同時に活性化することを解説。読み聞かせを続けているうちに「頭がすっきりする」と感じる理由が、脳科学的にわかります。
『心とカラダを整える おとなのための1分音読』山口謠司 著(自由国民社)
リンク
セロトニン分泌・ストレス軽減・脳の活性化など、音読が心身に与える効果を紹介。名文を1分間声に出して読む習慣が、日常の気分転換にもなります。読み聞かせをしながら自分自身も整えたい方におすすめです。
『毎日音読366日』川島隆太 監修(西東社)
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「脳トレ」で知られる東北大学・川島隆太教授が監修した音読本。1日1ページで声に出す習慣を続けていくための構成になっています。読み聞かせとあわせて大人自身の音読習慣を作りたい方に。
『頭がよくなる!寝るまえ1分おんどく366日』加藤俊徳 著(西東社)
リンク
子ども向けに設計された音読本ですが、親子で一緒に取り組むのにも最適です。寝る前の短い時間に声に出す習慣が、親の脳にもよい刺激を与えてくれます。読み聞かせのあとにそのまま使える構成です。
『小学生なら声に出したい音読366』齋藤孝 著(小学館)
リンク
「声に出して読みたい日本語」で知られる齋藤孝先生による子ども向け音読本。日本語の美しいリズムを声に出して感じる体験は、読む側の大人にとっても言葉への感度を高めてくれます。
子どもとの対話を深めたい方に
『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』天野ひかり 著(サンクチュアリ出版)リンク
読み聞かせの後の「ひとこと」や、日常の親子会話をよりよくしたい方に。子どもとの対話を豊かにするための具体的な言葉かけが紹介されています。
『子どもが聴いてくれる話し方と子どもが話してくれる聴き方 大全』天野ひかり 著(すばる舎)
リンク
同じく天野先生による充実版。場面別の言葉かけが豊富で、読み聞かせ後の会話だけでなく、日常のさまざまな場面で役立てられます。
まとめ:読み聞かせは「親子で育つ時間」
今日お伝えしたことを振り返ります。 【子どもとの関係につながるメリット】- 親子の安全基地が育まれる
- 思春期以降の関係の土台になる
- 子どもの成長を間近で実感できる
- 子どものことがもっとわかるようになる
- 子どもの悩みや不安に気づきやすくなる
- 子どもの世界を追体験できる
- 「ちゃんと関われている」という自信になる
- 「本を読むのが当たり前」の家庭文化が育まれる
- 子どもの将来への投資になる
- 音読が脳を広範囲に刺激する
- ストレスが軽減される・気分転換になる
- 滑舌・発声のトレーニングになる
- 表現力・伝える力が磨かれる
- 語彙力・言葉への感度が高まる
- 自分の価値観を見直すきっかけになる
子どものことば・コミュニケーション・読書の力を育てるヒントを発信しています。 他の記事もぜひご覧ください。
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