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「やっと寝たと思ったら、もう夜の10時」。「早く寝なさい」と言うほど、子どもは目を輝かせて起き出してきます。
寝ない理由は5つに分かれていて、理由ごとに手の打ち方が違います。そして、眠るように仕向けるより、「今日はここで終わり」という合図をつくるほうが早いです。読み聞かせは、その合図に向いています。
この記事では、寝ない理由の見分け方、寝る前だけ変える読み方、今夜からできる5つの工夫、逆効果になる読み方、そして寝る前にぴったりの絵本5冊をお伝えします。
まず、寝ない理由を見分ける

「うちの子は寝つきが悪い体質なのかな」と考えたくなりますが、寝ないのには理由があって、理由ごとに対応が違います。今夜の様子と照らし合わせてみてください。
| 寝ない理由 | 子どもの様子 | 家庭でできること |
|---|---|---|
| 体が疲れていない | 布団の中で動き回る・跳ねる | 日中に外で体を動かす時間をつくる |
| 頭が興奮している | 目が輝いている・よくしゃべる | 寝る1時間前から刺激を減らす |
| 不安なことがある | 「まだ寝たくない」「そばにいて」 | 気持ちを先に聞いてから布団に入る |
| 「寝なさい」がプレッシャー | 目を閉じて力が入っている | 眠ること自体を目標にしない |
| 親の焦りが伝わっている | 親が離れようとすると起きる | 先に親が「終わった空気」をつくる |
いちばん見落とされやすいのが、3つめの「不安なことがある」です。
子どもは、困っていることを日中に話せるとは限りません。にぎやかな時間帯には、うまく言葉になってくれないのです。部屋が静かになって、体の動きが止まったとき、ようやく心の中のことが浮かび上がってきます。
寝る前に急に「明日学校行きたくない」と言い出す子がいます。あれは寝るのを引き延ばしたいのではなく、やっと言える時間になった、ということが多いです。
眠りが足りない翌日、いちばん先に出るのは「心と集中力」

朝の読書の時間、明らかに眠そうな目をしている子がいます。本を開いてはいるけれど、5分たっても同じページ。声をかけると「面白くない」と言うのですが、たぶん面白くないのではなく、面白さを受け取る余力が残っていないのです。
逆に、よく眠れた翌日の子はよくしゃべります。読んだ本のことを、聞いてもいないのに教えてくれます。同じ子とは思えないくらい違うことがあります。
| 眠れた翌日 | 眠りが足りない翌日 | |
|---|---|---|
| 集中 | ひとつのことに入り込める | 数分でよそを見る |
| 気持ち | 切り替えが早い | 小さなことで泣く・怒る |
| ことば | 自分から話す | 「べつに」「わかんない」 |
| 朝の支度 | 自分で動ける | ひとつずつ声をかけないと進まない |
寝る前の30分をととのえることは、翌日の1日をととのえることでもあります。
効くのは「時刻」ではなく「順番」

子どもの脳は、予測できる流れを必要としています。毎日同じ順番で進むと、脳は「次は眠る時間だ」と準備を始めます。
お風呂 → 歯磨き → 読み聞かせ → おやすみ。この順番が定着すると、「本を読み始めた」という行動そのものが、眠る合図になります。寝る時刻が日によってずれても、順番さえ同じなら働きます。
読み聞かせがこの合図に向いているのには、3つ理由があります。
- 親の声がゆっくりになると、聞いている子どもの呼吸もつられてゆっくりになります
- 物語に入ると、今日のできごとから離れられます。「考えないようにしよう」は子どもにはできませんが、別のことで頭をいっぱいにすることならできます
- 画面と違って、脳を興奮させません。動画は「次が気になる」ように作られていますが、絵本は読み終わりが決まっています
寝る前の動画をやめさせたい場合は、取り上げるのではなく差し出すほうがうまくいきます。「見ちゃダメ」と言われた子は失うものの話しかできませんが、「読むからおいで」と言われると、選ぶ話になります。切り替え方は動画やゲームをやめられない小学生|「やめなさい」より効く切り替え方を学校司書が解説にまとめています。
寝る前だけ、読み方を変える

「読み聞かせをしたら興奮してしまった」という声をよく聞きます。その多くは、本の選び方ではなく読み方が原因です。日中の楽しい読み方を、そのまま寝る前に持ち込むと、子どもは元気になります。
| 日中の読み聞かせ | 寝る前の読み聞かせ | |
|---|---|---|
| 目的 | 一緒に楽しむ | 気持ちをしずめる |
| 声 | 大きく、抑揚たっぷり | 小さく、抑揚はひかえめ |
| 速さ | 場面に応じて変える | 終わりに向けてゆっくりに |
| 本 | 展開のある本・しかけ絵本もOK | 繰り返しの多い穏やかな本 |
| やりとり | 質問し合う・声を出して笑う | 感想を求めない |
| 終わり方 | 「もう1冊読もうか」 | 「おやすみ」で静かに閉じる |
いちばん効くのは、最後のページに近づくにつれて、声をだんだん小さくしていくことです。フェードアウトするように読むと、子どもの体もそれに合わせて静かになっていきます。
そして、読み終わったあとに感想を聞かないこと。「どこが面白かった?」と聞くと、子どもの脳はもう一度動き出します。感想は明日の朝で十分です。
寝る前は、子どもの心の扉がひらいている時間でもあります。昼間の子どもは、学校でも家でも気を張っています。「早くしなさい」と急かされ、友だちに気をつかい、できる・できないを毎日たしかめられています。布団に入ると、その緊張がゆるみます。そういうときに届いた言葉は、まっすぐ心に入っていきます。
叱ってばかりの一日だったとしても、寝る前に絵本を1冊読めば、その日の終わりを穏やかな時間で締めくくれます。最後の場面を取り返せるというのは、親にとっても救いです。「大好き」を絵本に言ってもらう方法は小学生の甘えん坊は愛情不足?|甘えは「充電」。寝る前の絵本で満たす方法に書きました。
今夜からできる、5つの工夫

- ① 部屋を少し暗くする。本が見える程度の柔らかい明かりに。小さなライトを子ども自身にパチンと点けさせると、それも合図になります
- ② 声のトーンを落とす。上手に読む必要はありません。親のほうが少し眠くなるくらいがちょうどいいです
- ③ 読む前に「今日のよかったこと」を一言。コツはこちらから先に言うこと。「今日どうだった?」と質問すると「べつに」で終わります
- ④ 冊数を先に決めて、子どもに選ばせる。「今日は2冊ね。どれとどれにする?」。読み終わりの交渉は、決まっていなかったから起きます
- ⑤ 終わりの合図をそろえる。本を閉じる音、電気を消す順番、同じ「おやすみ」。毎晩まったく同じ終わり方が、眠りのスイッチになります
どれか1つでかまいません。全部やろうとすると、続きません。
つい、やってしまいがちな読み方

よかれと思ってやっていることが、眠りを遠ざけていることもあります。私自身、心当たりのあるものばかりです。
| やってしまいがち | 子どもに起きること | やりかえ |
|---|---|---|
| 「この字読める?」と聞く | 勉強の時間になり、気が張る | 読み聞かせの時間は教えない |
| 「早く寝ないと明日つらいよ」 | 眠れないことが不安になる | 眠ることに触れず、本の話だけする |
| 盛り上げて楽しく読む | 目が輝いて元気になる | 後半にかけて声を落としていく |
| 読み終わりに感想を聞く | 頭がもう一度動き出す | 感想は翌朝に聞く |
| 読み終わってすぐスマホを見る | 「まだ夜は続く」と伝わる | 親も画面を伏せて部屋を出る |
| 寝ないので途中で本を閉じる | 読み聞かせが罰になる | 短い本に変えて最後まで読む |
いちばん気をつけたいのは、最後の「寝ないから本を取り上げる」です。何度か繰り返すと、読み聞かせが「言うことを聞かないと取り上げられるもの」に変わってしまいます。安心の時間が、緊張の時間になってしまうのです。
切り上げたい夜は、途中でやめるのではなく、最初からごく短い本を選ぶほうがうまくいきます。読み聞かせがしんどい夜の乗り切り方は読み聞かせがしんどい・めんどくさい夜に|がんばらずに続けるための9つのQ&Aに書いています。
学年別・寝る前の読み聞かせ
| 学年 | 向いている本 | 目安 | 関わり方 |
|---|---|---|---|
| 低学年(1〜2年生) | 穏やかな物語絵本・おやすみがテーマの絵本 | 10分ほど | 自分で読める子にも読んであげる |
| 中学年(3〜4年生) | 短い章のある読み物・絵の美しい絵本 | 10〜15分 | 1章ずつ区切って「続きは明日」 |
| 高学年(5〜6年生) | 本人が読んでいる本・詩や短い読み物 | 数分でも | 読み聞かせから「本の話」へ移す |
中学年で「絵本は卒業した」と言い出す子もいますが、絵の美しい絵本は中学年でこそ深く味わえます。「小さい子の本」ではなく「きれいな本」として差し出すと、すんなり受け取ってくれることが多いです。
高学年では、毎晩の読み聞かせは自然と減っていきます。無理に続けなくて大丈夫です。ただ、やめるのではなく形を変えると、夜の静かな時間だけは残せます。「今読んでる本、どんな話なの?」と聞く。詩を1つだけ読む。数分で十分です。
どの学年でもよく聞かれるのが「もう自分で読めるのに、読んであげてもいいんですか?」という質問です。答えは、読んであげてください、です。自分で読むときは文字を追う仕事が発生しますが、読んでもらうときは物語だけを受け取れます。寝る前に必要なのは、後者のほうです。やめどきの目安は読み聞かせはいつまで続ける?目安は小3・やめどきのサインを学校司書が解説に書いています。
眠りに向かう本の選び方

| 寝る前に向く本 | 日中にとっておきたい本 | |
|---|---|---|
| 展開 | 大きな事件が起きない | どんどん展開する |
| ことば | 繰り返しが多い | 次々に新しい表現が出る |
| 絵 | 色がおさえめ・夜の色 | 色数が多い・にぎやか |
| 結末 | 眠る・帰る・安心する | 「つづく」で終わる |
| 長さ | 10分以内で読み切れる | 章が長い・分厚い |
もうひとつのコツは、寝る前用の本を3〜4冊だけ、枕元にまとめておくことです。本棚まで選びに行くと、その移動と物色でまた元気になってしまいます。
寝る前に読みたい絵本・本5冊
①『おやすみなさいおつきさま』マーガレット・ワイズ・ブラウン 作/あおきひさこ 訳(評論社)
寝室にあるものひとつひとつに「おやすみなさい」と声をかけながら、うさぎの子どもが眠りにつくまでの絵本です。この本を読むこと自体が、入眠の儀式になります。
読み方:ページが進むごとに声を小さくして、最後の「おやすみなさい」がほとんどささやき声になるように読んでみてください。
②『おつきさまこんばんは』林明子 作(福音館書店)
雲の向こうからお月さまが顔を出すまでを描いた絵本。夜を「怖いもの」ではなく「おだやかで美しいもの」として感じられます。暗いのがこわいと言う夜に。ページ数が少ないので、時間がない夜の1冊にも向きます。
読み方:「おつきさまこんばんは」のところは、寝る前ならひそひそ声で一緒に言ってみてください。
③『ねむれないの?ちいくまくん』マーティン・ワッデル 作/バーバラ・ファース 絵/角野栄子 訳(評論社)
眠れないちいくまくんが「こわい」と言うたびに、おおくまさんがランタンを持ってそばに来てくれる物語。「こわい」と言っていいこと、言えば来てくれることが、物語の形で伝わります。ひとりで寝る練習をしている夜に。
読み方:おおくまさんの「こわくないよ」は、ゆっくり低い声で。その一言が、親からの言葉として届きます。
④『よるくま』酒井駒子 作(偕成社)
夜中に男の子のところに来た小さなくまの子と、お母さんを探しに行く物語。甘えたそうにしている夜、日中に離れている時間が長かった日に。親のほうがぐっとくる絵本でもあります。
読み方:文章が少ないので、めくる手を急がないこと。絵だけのページで数秒黙ると、その静けさが子どもの呼吸をゆっくりにします。
⑤『絵本 星の王子さま』サン=テグジュペリ 作(集英社)
「絵本は卒業した」と言い出した中学年以上の子と、夜の時間を続けるのにちょうどいい1冊です。短く区切って読めます。
読み方:1回で読み切らず、1章ずつで閉じてください。「続きは明日」で終われると、翌日の夜が楽しみになります。
読む元気がない夜のために

「わかるけど、そんな余力がない日もある」。私もそうです。だから先に書いておきます。読み聞かせは、毎晩ちゃんとやらなくても効果があります。
- いちばん短い本にする——3分の絵本でも、流れは守れます
- 読み慣れた同じ本にする——初めての本は親のほうが疲れます
- 横になったまま読む——姿勢を正す必要はありません
- 表紙と絵だけ見る夜にする——「今日は絵を見る日」でいい
- 読まない夜をつくる——1日空けても習慣は消えません
大事なのは、「できない夜のやり方も決めておく」ことです。ゼロか百かにすると、途切れたときに戻れなくなります。
「疲れた日は、読み聞かせのCDや音声絵本でもいいのでは?」と聞かれることもあります。昼間に楽しむならそれもいいのですが、寝る前に限っては、上手な朗読より、たどたどしくても親の声をおすすめします。子どもが安心するのは物語の上手さではなく、今この部屋に、自分のために時間を使ってくれている人がいることのほうだからです。噛んでもいいし、眠そうな声でもかまいません。
それから、案外知られていないのですが、読み聞かせは読んでいる親のほうも落ち着きます。声を出してゆっくり読むと、自分の呼吸も整っていきます。「子どものために」だけでなく、自分のための10分だと思うと、少し続けやすくなります。
もうひとつ。効果が出ているかを毎晩チェックしないでください。「今日も寝なかった」と数え始めると、読み聞かせが成果を出すための作業になります。眠ったかどうかではなく、一緒に読めたかどうかだけを見ていれば十分です。
よくある質問
まとめ
今夜から何かひとつ試すなら、この3つだけで十分です。
- 部屋の照明を落として、いつもより静かな声で読む
- 読み始める前に冊数を決めて、子どもに選ばせる
- 読み終わったら感想を聞かずに「おやすみ」で閉じる
うまく読もうとしなくて大丈夫です。子どもが安心しているのは、物語の上手さではなく、あなたがそこにいることに対してです。
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