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「うちの子、すぐ怒ったり泣いたりして……」
「感情のコントロールが、どうもうまくできないみたいで」
小学生のお子さんを持つ方から、こういうお話をよく聞きます。毎日一生懸命向き合っているのに、思うようにいかない。そんな日が続くと、ふと「私の関わり方が悪いのかな」と自分を責めてしまうこともあるかもしれません。
でも、どうか安心してください。子どもの感情が育つには、時間と積み重ねが必要です。そしてその積み重ねのなかで、いちばんの栄養になるのが「自分は愛されている」という実感です。
やっかいなのは、この実感が「親が愛しているかどうか」だけでは決まらないことです。親の側に愛情がたっぷりあっても、それが子どもに届いていなければ、子どもの心には積み上がっていきません。愛情は、持っているだけでは伝わらない。伝える形が要ります。
そこで力を貸してくれるのが、絵本です。この記事では、学校司書として子どもたちを見てきた立場から、読み聞かせが「愛されている実感」を届ける時間になる理由と、今夜から使えるコツ、そして「大好き」を伝えられる絵本を8冊ご紹介します。

こんな方におすすめの記事
- 子どもの感情の波が大きく、どう関わればいいか迷っている方
- 愛情はあるのに、「大好き」と言葉にするのが照れくさい方
- 叱ってばかりの一日を、寝る前にリセットしたい方
- 子どもが自分に自信を持てていないように見えて、気になっている方
- 読み聞かせを続けているけれど、意味があるのか不安になってきた方
この記事は小学校低学年〜中学年(1〜4年生)のお子さんをお持ちの方に向けて書いています。紹介する絵本は0歳から読めるものが中心ですが、「大好き」を伝える絵本は、大きくなってからのほうが言葉の意味が深く届きます。高学年のお子さんにも十分使える8冊です。
子どもの「メンタルが安定している」ってどういうこと?
感情の波がなくなるのではなく、戻ってくるのが早くなる
「メンタルが安定した子」と聞くと、いつもニコニコしていて、めったに怒らない子を思い浮かべるかもしれません。でも、それは少し違います。
小学生はまだ、感情が大きく揺れる時期です。友だちとぶつかれば腹が立つし、失敗すれば落ち込む。それは健康なことで、揺れないほうがむしろ心配です。安定しているというのは、揺れないことではなく、揺れたあとに元の場所へ戻ってこられることを指します。
図書室で子どもたちを見ていると、この「戻ってくる速さ」に差があることがよくわかります。休み時間にケンカをして泣きながら入ってきた子が、5分後には本を選んで笑っていることもあれば、一日じゅう引きずってしまう子もいる。同じ出来事でも、そのあとの回復のしかたはずいぶん違います。

戻ってこられる子の足元にあるもの
では、その差はどこから来るのでしょうか。性格の違いももちろんありますが、私が見ていて大きいと感じるのは「何があっても自分は大丈夫」という感覚を持っているかどうかです。
この感覚の正体は、自信でも能力でもありません。「自分は大切にされている」「帰る場所がある」という安心感です。心理学では、こうした安心できる存在のことを「安全基地」と呼びます。安全基地があるからこそ、子どもは外の世界で冒険ができ、傷ついても戻ってきて回復できます。
つまり、子どものメンタルを安定させたいなら、感情のコントロールを教えるより先に、安心の土台を厚くするほうが効きます。根っこが育てば、枝葉は自然と落ち着いてくるからです。
この「土台」がどう自己肯定感につながっていくのかは、こちらの記事でくわしく書いています。

愛情は、持っているだけでは伝わらない
親の「愛情量」と子どもの「受け取り量」は別もの
「愛情ならたっぷりあります」——そう思われるのは当然のことです。実際、ここを読んでくださっている時点で、愛情がないわけがありません。
ただ、子どもの心に積み上がるのは、親が持っている愛情の量ではなく、子どもが「受け取れた」と感じた分だけです。ここにズレが生まれることがあります。
たとえば、栄養を考えてごはんを作る、忘れ物がないように持ち物を整える、宿題を見てあげる。どれも紛れもない愛情です。でも子どもの側からは「食べなさい」「早くしなさい」「まだ終わってないの」という言葉として届いていることがあります。世話をすればするほど、口から出る言葉は指示や注意に寄っていく——これは、どの家庭にも起こることです。
| 親がしていること | 子どもに届きやすい形 |
|---|---|
| 栄養を考えて食事を作る | 「好き嫌いしないで」と言われた |
| 忘れ物がないよう確認する | 「また忘れたの」と注意された |
| 宿題を見てあげる | 「ここ間違ってる」と直された |
| 早く寝かせようとする | 「早くしなさい」と急かされた |
| 絵本を1冊読む | お母さんが自分のために時間を使ってくれた |
上の4つが悪いわけでは、まったくありません。どれも必要なことです。ただ、それだけだと「大切にされている」という手ざわりが、子どもの側に残りにくいのです。だからこそ、それが確実に伝わる時間を、一日のどこかに1つだけ用意しておきたい。読み聞かせは、その1つになれます。

「大好き」は、思っているより言えない
いちばん確実なのは、言葉で直接伝えることです。「大好きだよ」「あなたは大切な存在だよ」。それが言えるなら、絵本はいりません。
でも、これが意外と難しい。照れくさかったり、タイミングを逃したり、赤ちゃんのころは自然に言えていたのに、子どもが大きくなるにつれて言いにくくなったり。日本の家庭では、気持ちを直接ことばにする習慣そのものが薄いので、言えないのは性格の問題ではありません。
特に小学生になると、「もう大きいんだから」という気持ちがお互いに芽生えます。子どもの側も照れて「やめてよ」と返してきたりする。そうやって、言葉にする機会は年々減っていきます。
そんなときに、代わりに言ってくれるものがあります。絵本です。
絵本が「大好き」の橋渡しをしてくれる
絵本の言葉は、親の声で子どもに届く
「わたしは あなたが だいすきです せかいで いちばん あなたが だいじ」
「きみのこと こんくらい すきだよ」
「あなたが きょう ここにいる っていうこと ほんとに ほんとに すごいんだから」
こういう言葉が並んでいる絵本は、たくさんあります。そしてこれを読み聞かせると、不思議なことが起こります。絵本に書いてある言葉なのに、子どもには「お母さん(お父さん)の声」として届くのです。
子どもは、誰が書いた文章かを気にしていません。目の前の人が、自分に向かって「だいすき」と言っている。その事実だけが残ります。絵本が橋渡しをしてくれるとは、こういうことです。

照れくささを、絵本が引き受けてくれる
面と向かって「大好きだよ」と言うのはハードルが高くても、絵本を開いて文字を読むだけなら、ずっと気楽です。「これは絵本に書いてあることだから」という逃げ道があるおかげで、照れずに、まっすぐな言葉を口にできます。
これは、受け取る子どもの側にとっても同じです。真正面から「大好きだよ」と言われると、小学生は照れて茶化してしまうことがあります。でも絵本なら、絵を見ているふりをしながら、まっすぐ受け取れる。お互いが照れなくて済むというのは、思っている以上に大きな利点です。
何度でもくり返せる
そして絵本の最大の強みは、くり返せることです。
「大好きだよ」と面と向かって毎晩言うのは、正直むずかしい。でも同じ絵本を毎晩読むのは、まったく自然です。子どもも「もう1回」とせがみます。愛情の実感は一度伝えて終わりではなく、毎日少しずつ積み上がっていくものなので、くり返せることには大きな意味があります。
届けるなら、1日の終わりがいちばん
眠る前は、心の扉がひらいている
読むタイミングはいつでもかまいませんが、おすすめは寝る前です。
昼間の子どもは、学校でも家でも気を張っています。「早くしなさい」と急かされ、友だちと気をつかい、できる・できないを毎日たしかめられている。ところが布団に入ると、その緊張がゆるみます。警戒がとけているときに届いた言葉は、そのまま心の奥まで入っていきます。
叱ってばかりの一日だったとしても、寝る前に絵本を1冊読めば、その日の終わりは「大好きだよ」で締めくくれます。子どもがその日を思い返すときに最後に残るのは、いちばん最後の場面です。ここを取り返せるというのは、親にとっても救いになります。

寝る前の読み聞かせは、眠りそのものにもいい影響があります。こちらの記事にまとめました。

10分あれば足りる
「毎晩なんて無理です」と思われたかもしれません。でも必要な時間は、思っているより短いのです。
絵本1冊は、だいたい5分から10分。長い本を選ばなければ、寝る前の10分で終わります。大事なのは1回の長さではなく、その時間が毎日あることです。30分を週1回より、5分を毎日のほうが、子どもの心には積み上がります。

「愛されている実感」が育つと、子どもはこう変わる
安心の土台が厚くなってくると、子どもの様子は少しずつ変わってきます。劇的な変化ではありませんが、日常のあちこちに小さく表れます。
立ち直りが早くなる
友だちとケンカしても、テストで失敗しても、引きずる時間が短くなります。「うまくいかなかったけど、まあ大丈夫」と思えるようになるからです。これは打たれ強くなったのではなく、帰る場所があるから前に出られるようになったということです。
「やってみる」が増える
図書室でも、「これ読めるかな」と少し背伸びした本に手を伸ばす子と、「どうせ読めないもん」と最初からあきらめる子がいます。この差は読む力の差というより、失敗しても自分の価値は減らないと思えているかどうかの差です。土台がある子は、失敗を怖がりません。

感情を爆発させることが減る
すぐ怒る、泣きわめく、物を投げる——こうした行動の裏には、「わかってもらえない」という不安があることが少なくありません。安心が満ちてくると、この不安が薄まります。感情のコントロールを練習させたからではなく、爆発させる必要がなくなったから静かになるのです。
気持ちを言葉にできるようになる
そして、読み聞かせにはもうひとつのおまけがあります。絵本の中で「うれしい」「さみしい」「くやしい」といった気持ちの言葉に何度も出会ううちに、子どもは自分の感情に名前をつけられるようになっていきます。
気持ちに名前がつくと、暴れる代わりに「くやしかった」と言えるようになります。安心の土台と、気持ちのことば。この2つがそろうと、子どもの心はぐっと扱いやすくなります。

今夜からできる、愛情を届ける読み聞かせ7つのコツ
特別なことは何もいりません。ちょっとした工夫で、同じ1冊がもっとまっすぐ届くようになります。
コツ① 名前を入れて読む
絵本の中の「きみ」「あなた」「ちびちび」といった言葉を、お子さんの名前に置き換えて読んでみてください。「○○のことが、だいすき」——たったこれだけで、絵本の言葉が自分ごとになります。
子どもは自分の名前に驚くほど敏感です。名前を呼ばれた瞬間、聞く姿勢が変わります。恥ずかしければ、最後の1ページだけでもかまいません。
コツ② 読み終わったら「ぎゅっ」をする
絵本を閉じたあと、そっと抱きしめる。言葉と体温が重なると、実感はぐっと深くなります。
照れて逃げる子には、無理に抱きつかなくてかまいません。頭にぽんと手を置く、背中をとんとんする、手をにぎる。触れ方は何でもいいのです。大事なのは、読み終わりに必ず何かひとつ、体で伝わる合図があることです。

コツ③ 毎晩、同じ時間に読む
「歯みがきのあとは絵本」というように、順番を決めてしまうと迷いません。次に何が起こるかわかっている状態そのものが、子どもを落ち着かせます。
そして、決めておくと親も楽です。毎晩「今日は読もうか、どうしようか」と考える必要がなくなるからです。
コツ④ うまく読もうとしない
読み聞かせがうまくいかない理由の多くは、上手に読もうとしすぎることです。声色を変えなきゃ、抑揚をつけなきゃ、間違えずに読まなきゃ——そう思うほど、読むのがしんどくなります。
子どもが受け取っているのは、読み方のうまさではなく「自分のために時間を使ってくれている」という事実だけです。つっかえても、読み飛ばしても、途中で眠くなっても、伝わるものは変わりません。
コツ⑤ 子どもが選んだ本を否定しない
「また同じ本?」「もっと長いのにしたら?」——つい言ってしまいがちですが、子どもにとって本選びは自己主張です。ここを受け入れてもらえること自体が、「自分は受け入れられている」という体験になります。
選んだ本を黙って読んであげる。それだけで、「あなたの好きなものを大事にするよ」というメッセージになります。
コツ⑥ 読み終わりに一言だけ添える
絵本を閉じたあと、感想を求める必要はありません。ただ、こちらから一言そえるだけで、絵本の言葉が現実につながります。
「お母さんも、○○のことこれくらい好きだよ」「今日もいてくれてありがとう」。絵本の余韻に乗せると、普段は言えない言葉がするりと出てきます。これが言えるのは、読み終わった直後だけの特権です。
コツ⑦ できない日があっていい
疲れて声が出ない日、帰りが遅くなった日、こちらの機嫌が悪い日。読めない日は必ずあります。
1日抜けたくらいで、積み上げたものは崩れません。むしろ、無理に続けて読み聞かせが苦役になるほうが問題です。読めない日は表紙を見せて「明日これ読もうね」と言うだけでも、約束という形で愛情は届きます。
| コツ | ひとことで言うと | できないときは |
|---|---|---|
| ① 名前を入れる | 絵本の言葉を自分ごとにする | 最後の1ページだけでいい |
| ② ぎゅっをする | 言葉に体温を重ねる | 頭に手を置く、手をにぎる |
| ③ 同じ時間に読む | 予測できる安心をつくる | 曜日を決めるだけでも可 |
| ④ うまく読まない | 読み方より、そこにいること | つっかえてもそのまま進む |
| ⑤ 選んだ本を否定しない | 好みを受け入れる=本人を受け入れる | 同じ本なら読み方を変える |
| ⑥ 一言そえる | 絵本の言葉を現実につなぐ | 「おやすみ」だけでもいい |
| ⑦ 休んでいい | 続けることを目的にしない | 表紙を見せて明日に回す |
読み聞かせがしんどくなってきたときの逃げ道は、こちらにまとめてあります。

うまくいかない日の切り抜け方
「大好きを届けよう」と思って始めても、現実はそう理想通りにいきません。よくある場面と、その切り抜け方を並べておきます。
| よくある場面 | 切り抜け方 |
|---|---|
| 「大好き」の場面で茶化してくる | のってあげる。照れ隠しなので、届いている証拠 |
| 反応がまったくない | 反応は求めない。聞いていないようで耳は開いている |
| 下の子が邪魔をする | 下の子も一緒に。名前を両方入れて読む |
| こちらが疲れて声が出ない | 短い本を1冊。表紙を見て話すだけの日も可 |
| 叱ったあとで気まずい | 謝らなくていい。絵本を持っていくだけで仲直りになる |
| 「もう大きいからいい」と言われた | 強制しない。本人が選んだ本を一緒に読む形に切り替える |
いちばん多いのは、いちばん上の「茶化される」ケースです。「うわ、恥ずかしい」「やめてよ」と言われると、こちらもひるみます。でも照れるということは、その言葉がちゃんと自分に向けられたものとして届いた証拠です。聞き流されているときは、照れる必要すらありません。
それから、叱ったあとの気まずさ。これも絵本が引き受けてくれます。言葉で謝るのが難しいときでも、絵本を持って隣に座れば、それだけで「もう怒ってないよ」が伝わります。読み聞かせは、仲直りの道具としてもよく効きます。

読み聞かせをもっと気楽な「遊び」としてとらえたい方は、こちらもどうぞ。

「大好き」を伝えられるおすすめ絵本8冊
ここからは、愛情がまっすぐ言葉になっている絵本を8冊ご紹介します。どれも読み聞かせの最後の1冊にぴったりの本です。
選ぶときのポイントは、親が読んでいて照れずに口に出せる言葉かどうか。読み手が恥ずかしがっていると、それも一緒に伝わってしまいます。まずは表を見て、ご家庭に合いそうな1冊から選んでみてください。
| 絵本 | 届くメッセージ | 目安の学年 |
|---|---|---|
| どんなに きみが すきだか あててごらん | 「これくらい好き」を体で表して伝え合う | 年少〜低学年 |
| だいすき ぎゅっ ぎゅっ | 一日に何度でも抱きしめていい | 年少〜低学年 |
| ちびゴリラのちびちび | 大きくなっても愛情は変わらない | 年中〜中学年 |
| あなたがだいすき | あなたを守る、世界でいちばん大事 | 0歳〜中学年 |
| きみのことが だいすき | できなくてもいい、そのままでいい | 低学年〜高学年 |
| あなたの すてきな ところはね | いてくれるだけですごい | 低学年〜高学年 |
| きょうもうれしい | 毎日の中に「うれしい」がある | 年中〜低学年 |
| ちいさなあなたへ | 離れていっても愛は続く | 中学年〜大人 |
1. 『どんなに きみが すきだか あててごらん』
作:サム・マクブラットニィ/絵:アニタ・ジェラーム/訳:小川仁央/評論社
どんな絵本? チビウサギとデカウサギが「きみのこと、このぐらいすきだよ」と腕をいっぱいに広げて、「大好き」の大きさをくらべ合う絵本です。腕の長さでは勝てないチビウサギが、跳んだり、逆立ちしたり、なんとかして自分の気持ちを表そうとする姿がいじらしい。1995年の日本語版刊行以来、世界中で読み継がれているロングセラーです。
読み聞かせでこう届きます この絵本のいいところは、「大好き」を言葉ではなく動きで表せることです。読みながら実際に腕を広げてみてください。子どもも真似します。最後の「つきのうえまでとどくくらい、すきだよ」で、そのまま「おやすみ」に入れる、寝る前にぴったりの一冊です。
2. 『だいすき ぎゅっ ぎゅっ』
文:フィリス・ゲイシャイトー、ミム・グリーン/絵:デイヴィッド・ウォーカー/訳:福本友美子/岩崎書店
どんな絵本? 朝ごはんを食べたあと、ぎゅっ! 本を読んだあと、ぎゅっ! おさんぽしたあと、ぎゅっ! うさぎの親子が一日のあちこちで何度も抱きしめ合う絵本です。原書のタイトルは「TIME for a HUG(ハグの時間)」。やわらかい色づかいで、眠る前の空気によく合います。
読み聞かせでこう届きます 「ぎゅっ」が出てくるたびに実際に抱きしめると、絵本がそのままスキンシップの合図になります。コツ②の「読み終わったらぎゅっ」を習慣にしたい方は、この本から始めるのがいちばん自然です。照れくさがりの親子でも、絵本のせいにして抱きしめられます。
3. 『ちびゴリラのちびちび』
作・絵:ルース・ボーンスタイン/訳:いわたみみ/ほるぷ出版
どんな絵本? 生まれたその日から森のみんなに愛されている「ちびちび」。ところがある日、ちびちびはぐんぐん大きくなりはじめます。もう「ちび」ではなくなっても、みんなの気持ちはまったく変わらない——という物語です。1978年の日本語版刊行から100刷を超えるロングセラー。
読み聞かせでこう届きます 「大きくなっても、変わっても、あなたが好き」というメッセージは、小学生にこそ効きます。成長するほど「できるかどうか」で見られる場面が増えるからです。「ちびちび」をお子さんの名前に置き換えて読むと、そのまま自分の話になります。コツ①を試すのに最適な一冊です。
4. 『あなたがだいすき』
作・絵:鈴木まもる/ポプラ社
どんな絵本? 「わたしは あなたが だいすきです せかいで いちばん あなたが だいじ いつでも あなたを まもってあげる」——動物の親が小さな子をすっぽり包みこむ絵が、ページごとに続きます。文章はとても短く、言葉はまっすぐです。
読み聞かせでこう届きます 短いので、疲れている日でも読めます。そして読むだけで「守るよ」と宣言したことになるのが、この本の強さです。0歳から読めますが、不安なことがあった日や、学校で嫌なことがあった日に読むと、言葉の重みが変わります。困ったときの一冊として、手元に置いておきたい本です。
5. 『きみのことが だいすき』
作・絵:いぬいさえこ/パイ インターナショナル
どんな絵本? 小さなどうぶつたちが暮らす森を舞台にしたメッセージ絵本。「かなしい きもちはね、ふたを しなくて いいんだよ」「あなたは よいこ。なにかを じょうずに できなくても」——つらいときにそっと寄り添う言葉が並びます。50万部を超えるベストセラーです(パイ インターナショナル、2022年)。
読み聞かせでこう届きます 「できなくてもいい」という無条件の肯定は、できる・できないを毎日たしかめられている小学生にいちばん届く言葉です。そして、この本は読んでいる親のほうが泣きそうになります。自分を責めがちな方は、まずご自身のために読んでみてください。
6. 『あなたの すてきな ところはね』
文:玉置永吉/絵:えがしらみちこ/KADOKAWA
どんな絵本? 子どものすてきなところを一つひとつ数えあげながら、四季の中での成長を描いた絵本です。「まよっちゃっても だいじょうぶ。あなたの みているほうが まえよ」「あなたが きょう ここにいる っていうこと ほんとに ほんとに すごいんだから」(KADOKAWA、2021年)。
読み聞かせでこう届きます 何かができるからではなく、ただそこにいるだけで肯定される——これが安心の土台そのものです。最後のページにはお子さんの名前を書き込む欄があり、書いた瞬間に世界でひとつの絵本になります。入学や進級の節目、誕生日の贈り物にも向いています。
7. 『きょうもうれしい』
作・絵:えがしらみちこ/理論社
どんな絵本? 朝ごはんのにおい、幼稚園での出来事、石のコレクション、おふとんの心地よさ——男の子の一日の中にある、たくさんの小さな「うれしい」を描いた絵本です。やわらかな水彩のタッチで、日常の一場面ずつが丁寧にすくい取られています。
読み聞かせでこう届きます 読んだあとに「今日の『うれしい』は何だった?」と聞いてみてください。一日をふり返って、いいところを一つ見つけて終わる。この習慣そのものが、心を安定させます。「学校どうだった?」と聞いても「べつに」しか返ってこないご家庭にも、この聞き方は使えます。
8. 『ちいさなあなたへ』
作:アリスン・マギー/絵:ピーター・レイノルズ/訳:なかがわちひろ/主婦の友社
どんな絵本? 親から子へのメッセージを、詩のように綴った絵本です。生まれた日から、やがて子どもが自分の道を歩き出すその先まで。「いつか あなたは ひとりで たっていくのだろう」という一行に、多くの親が立ち止まります。
読み聞かせでこう届きます これは子どもに読みながら、親自身の心が整う絵本です。日々の「早くしなさい」に埋もれてしまいがちな気持ちが、読んでいるうちに戻ってきます。子どもが大きくなってからも手元に残しておきたい、一生ものの一冊です。
絵本を通して気持ちのことばを増やしていく方法は、こちらの記事でくわしく紹介しています。

大きくなった子には、どう伝える?
高学年になると、「絵本なんて」と言われることが増えてきます。読み聞かせを卒業していく時期です。
それは順調に育っている証拠なので、引き止める必要はありません。ただ、読み聞かせが終わっても、「あなたを大事に思っている」を伝える必要はなくなりません。形を変えていくだけです。
- 本人が読んでいる本を、こちらも読んで感想を言い合う
- 「これ、あなたに合うと思って」と1冊さりげなく置いておく
- 誕生日や節目に、メッセージを書いた本を贈る
- 下のきょうだいへの読み聞かせに、読み手として参加してもらう
とくに最後のものは効きます。「もう読んでもらう側じゃない」というプライドを守りながら、同じ場所に一緒にいられるからです。上の子が読み手になった日は、こちらが聞き役に回って、思いきりほめてあげてください。

読む側の心も、ちゃんと守られる
最後に、ひとつだけ付け加えさせてください。
「大好き」を届ける読み聞かせは、子どものためだけのものではありません。読んでいる親の側にも、同じ言葉が届きます。「きみのことが だいすき」の「できなくてもいい」も、「ちいさなあなたへ」の一行も、読んでいるのは大人です。
一日じゅう叱ってばかりで落ち込んでいた夜に、絵本を読みながら「そうだ、私はこの子が好きなんだった」と思い出す——そういうことが、実際に起こります。子どもの心を整える時間は、親の心も一緒に整えてくれます。

よくある質問
まとめ:今夜、「大好き」を届けてみてください
子どものメンタルを安定させるのは、特別なトレーニングでも、上手な声かけの技術でもありません。「自分は愛されている」という実感を、毎日少しずつ積み重ねること。それだけです。
直接ことばにするのが難しくても大丈夫。絵本が代わりに届けてくれます。今夜、1冊手にとって、子どもの隣に座ってみてください。その時間そのものが、子どもへの「大好き」です。
- メンタルの安定とは、揺れないことではなく、揺れても戻ってこられること
- その土台は「自分は愛されている」という実感でできている
- 愛情は持っているだけでは伝わらない。伝わる形が要る
- 絵本は、照れずに「大好き」を言うための橋渡しになる
- 読むなら寝る前。10分あれば足りる
- 名前を入れて読み、読み終わったら「ぎゅっ」をする
- うまく読めなくていい。読めない日があってもいい
お子さんが一人で本を読むようになっている場合は、読書にも同じはたらきがあります。読書版はこちらにまとめました。

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