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「どうせ無理」「ぼくは算数ができないから」。やる前から、自分を小さく言う子がいます。
そんなとき最初に要るのは、励ましより「受け止め」です。そして本は、その子と同じ悩みが描かれた話でなくてもかまいません。本を読む時間そのものが、心を落ち着かせてくれます。
この記事では、学校司書として「どうせ〜」と言う子にかけている言葉と、自己肯定感が育つ絵本10冊をご紹介します。
「どうせ無理」と言われたら、まず受け止める

「どうせ〜」と言う子には、まず「そうやって感じているんだね」と、その言葉を受け止めます。否定もしないし、すぐに励ましもしません。
そのうえで、「あなたのこういう所が、先生はいいと思っているよ」と、「どうせ」とは直接関係のない、その子のいいところを伝えます。
気になることが1つあると、「どうせ自分は」と自分を丸ごと否定する考えになっているときがあるからです。いいところにも目を向けてほしい。そう思っています。
「頑張ってね」が届かない子もいます

「頑張ってね」「応援してるよ」は、気をつけて使っている言葉です。
小学生はとても素直なので、応援が力になることは多いです。でも、心が疲れてしまっている子には効きません。応援したつもりが、「そうは言ってもなぁ」とがっかりされたこともあります。
そういうときは、「気楽にね」「何かあったら、また話にきてね」と、頑張らなくてもいい道を残しておくようにしています。
わが家では、算数のテストの前に
わが家の子も、算数のテストをひかえていると「ぼくは算数ができないから」と言います。やる前から「できないと思う」と言うのです。
自信がない部分に向き合わなければいけないときに出る言葉で、日常では深刻なものではないことが多いです。ちょっと逃げたい気持ちがあるのだと思います。
そんなときは、明るく「大丈夫だよ」と送り出します。終わったら「できたね」。うまくいかなくても「やってみてよかったね」と、経験値が上がったことを伝えます。
本は「同じ悩みの話」でなくていい

自信をなくしている子に本を渡すとき、「その子と同じ場面が描かれた本を」と考えがちです。でも、同じ悩みの話でなくても、本を読むこと自体で心が落ち着くことがあります。
小学校の最初の4年間は、自己肯定感がいちばん揺れる時期でもあります。低学年は、初めての学校生活で、音読、計算、縄跳び、係の仕事と、「できる・できない」を毎日突きつけられます。中学年になると「9歳の壁」と言われる時期に入り、友だちと自分を比べられるようになって、「あの子のほうが足が速い」「私は絵が下手」と、自分の苦手が見えてきます。
子どもは学校で、一日中「できる・できない」を測られています。読み聞かせは、その物差しが一切ない時間です。読んでいるのは親なので、どの本を選んでも、その子の実力は測られません。だから、本に苦手意識のある子ほど効きます。
ひとつだけ気をつけてほしいのは、「自己肯定感を育てるための本」として渡さないことです。子どもは大人の意図にすぐ気づきます。気づいた瞬間に、その本は説教の道具になります。面白そうだから読む。それで十分です。
【司書が解説】読書は子どもの心を育てる|メンタルが安定する6つの理由にまとめています。自己肯定感が育つ絵本10冊
先に一覧を置きます。気になる1冊から読んでみてください。
| 本 | こんな子に | 目安 |
|---|---|---|
| ①わたしはあかねこ | きょうだいや友だちと比べられている子 | 低学年〜 |
| ②じぶんだけのいろ | 「自分には何もない」と思っている子 | 低学年〜 |
| ③ぼくだけのこと | 自分の特別なところが見つからない子 | 低〜中学年 |
| ④わたしとなかよし | 自分のことを好きと言えない子 | 低学年 |
| ⑤きみのことが だいすき | がんばりすぎて疲れている子 | 低学年〜 |
| ⑥いいこってどんなこ? | 「いい子」でいようとしすぎる子 | 低学年 |
| ⑦あなたの すてきな ところはね | 入学・進級で不安な子 | 低学年 |
| ⑧てん | 「どうせ下手だから」と手をつけない子 | 低〜中学年 |
| ⑨だいじょうぶ だいじょうぶ | こわいこと・不安なことが多い子 | 低〜中学年 |
| ⑩くまのこうちょうせんせい | 声が小さい子、発表が苦手な子 | 中学年〜 |
ありのままの自分でいい、と思える本
①『わたしはあかねこ』
サトシン 作/西村敏雄 絵(文溪堂)
白と黒のねこの家族に、1匹だけ赤く生まれた子ねこ。家族は心配しますが、あかねこは自分の色が気に入っています。わかってもらえず家を出たあかねこに、新しい出会いが待っています。
こんな子に:みんなと同じでなければ、と思っている子。「わたしは、わたし」でいいと伝わります。
②『じぶんだけのいろ』
レオ・レオニ 作/谷川俊太郎 訳(好学社)
いる場所によって色が変わってしまうカメレオンは、自分だけの色がほしいと願います。最後に見つけたのは、自分の色ではなく、一緒に色を変えていける仲間でした。
こんな子に:「自分には何もない」と思っている子。
③『ぼくだけのこと』
森絵都 作/スギヤマカナヨ 絵(偕成社)
「家族の中で、右のほっぺにえくぼがあるのはぼくだけ」。ようたくんは「ぼくだけのこと」を探すのが好きです。家族から友だち、クラス、学校へと、探す範囲がどんどん広がっていきます。
こんな子に:自分の特別なところが見つからない子。読んだあとに「あなただけのことは?」と一緒に探すと、楽しく続きます。
④『わたしとなかよし』
ナンシー・カールソン 作/なかがわちひろ 訳(瑞雲舎)
ぶたの女の子は、まんまるのおなかも、くるくるのしっぽも、自分のぜんぶが大好き。朝は鏡に「おはよう、きょうもかわいいね!」。失敗しても大丈夫、わたしはいつもわたしと一緒です。
こんな子に:自分のことを「好き」と言えない子。
できなくても大好きだよ、と伝わる本
⑤『きみのことが だいすき』
いぬいさえこ 作(パイ インターナショナル)
森の小さな動物たちが、やさしい言葉をかけてくれるメッセージ絵本です。うまくできなくても、みんなと同じにできなくてもいい。悲しい気持ちも隠さなくていい。そう語りかけてくれます。
こんな子に:がんばりすぎて疲れている子。「頑張ってね」が届かないときに、代わりに渡せる本です。
⑥『いいこってどんなこ?』
ジーン・モデシット 文/ロビン・スポワート 絵/もきかずこ 訳(冨山房)
いい子ってどんな子? 泣かないのがいい子なの? 子うさぎは、次々にお母さんに聞きます。お母さんの答えは、いつも同じ。いまのままのあなたが大好き、です。
こんな子に:「いい子」でいようとしすぎる子。
⑦『あなたの すてきな ところはね』
玉置永吉 文/えがしらみちこ 絵(KADOKAWA)
「あなたのすてきなところはね」と、子どものいいところを一つずつ伝えていく絵本です。入園・入学を迎える子への「お守りの言葉」として作られました。
こんな子に:入学・進級で不安がある子。読み終えたら、親から「あなたのすてきなところ」を1つ足してみてください。
やってみる勇気をくれる本
⑧『てん』
ピーター・レイノルズ 作/谷川俊太郎 訳(あすなろ書房)
「絵なんて描けない」と白い紙の前で動かないワシテ。先生に言われて点をひとつだけ打つと、先生はそれを額に入れて飾ります。そこから、ワシテの点はどんどん変わっていきます。
こんな子に:「どうせ下手だから」と手をつけない子。小さな一歩を認められると、次の一歩が出ることがわかります。
⑨『だいじょうぶ だいじょうぶ』
いとうひろし 作(講談社)
おじいちゃんとのお散歩で、ぼくはこわいことや困ったことに出会います。そのたびにおじいちゃんが言ってくれるのが「だいじょうぶ だいじょうぶ」。
わが家の1冊です。子どもが自信をなくしていた時期に、よく読みました。「大丈夫だよ」は魔法の言葉です。不安なとき、こわいとき、この言葉で支えられることがあります。
⑩『くまのこうちょうせんせい』
こんのひとみ 作/いもとようこ 絵(金の星社)
大きな声が出せないひつじくんは、大好きなくまの校長先生のために、声を出す練習をがんばります。ところが校長先生は病気になって、声も小さくなってしまいます。
こんな子に:声が小さい子、発表が苦手な子。病気と闘った実在の校長先生がもとになった話なので、中学年くらいからがおすすめです。
図書室で見ている「どうせ読めない」

「どうせ読めない」と言う子、思っている子は、図書室にもけっこういます。本の前に立った時点で、もうあきらめている子がいるのです。
だから図書の時間には、全体にこう伝えています。「これだけ本があるのだから、楽しめる本は絶対あるよ。宝さがしみたいに探してみてね」。「読めない」を「まだ出会っていないだけ」に言い換えてしまうのです。
本を持ってきたら、まず「いい本選んだね」。難しい本が読めることはかっこいい、と子どもは思っているので、絵本を選んだ子は劣等感を持っていることがあります。でも、大事なのは本を楽しむこと。ここはゆずれません。
本にかなり強い苦手意識がある子には、本の話をしないこともあります。好きなゲームや友だちの話を聞くだけ。まずは、そこにいることが心地よいと思ってもらうところからです。
本以外のところで、自信が育つこともあります
本を丁寧に扱ってくれる子がいます。大事に持つ、置くときもゆっくり、本棚にきちんと返す、乱れた棚を整えてくれる。そういう場面に出会ったら、「ありがとう」「本も喜んでるね」とほめるようにしています。
すると、自分のしていることはいいことなんだと、明るい表情になります。「本を丁寧に扱える」。それも、とても素敵な得意なことです。
「絵本はあいうえお順に並んでいるんだよ」と教えると、順番を確かめて、違う場所の本を直してくれる子もいます。新しく知ったことを試せて楽しい、褒められていい気分。こちらも助かります。
図書室は、本を読まなくてもいい場所です
本を読みに来るというより、そこにいたくて来る子がいます。休み時間にゆっくり話していく子もいれば、「先生、やっほー」と挨拶だけしていく子もいます。本を借りなくても、まったく問題ありません。
教室に入りづらい子が、図書室で過ごして本を借りて帰ることもあります。お子さんが教室に入りづらそうなとき、選択肢は「教室か、家か」だけではありません。図書室や保健室で過ごす形もあるので、学校に相談してみてください。
何かができるから居ていいのではなく、いるだけで居ていい場所がある。そのこと自体が、自己肯定感に効きます。
読み終えたあとに、ぽつりと出てくる言葉

喧嘩のお話を読んだ夜のことです。読み終えたあとに、子どもが「今日、喧嘩した」と言い出しました。休み時間の遊びが決まらなくて、結局遊べなくなってしまった。そして最後に、こう言いました。
「明日、ごめんね言う」
わたしは何も聞いていませんし、アドバイスもしていません。物語がクッションになって、直接は話しにくい気持ちが出てきたのだと思います。「今日どうだった?」と聞いても「ふつう」しか返ってこない子でも、物語が挟まると話せることがあります。
出てきたときに大事なのは、評価しないことです。「それはあなたが悪いんじゃない?」も「そんな子とは遊ばなくていいよ」も要りません。自分で気持ちを整理して、自分で決めた。その経験そのものが自己肯定感になります。話し出さない子への聞き方は小学生が学校のことを話さない理由|「覚えてない」と返す子が話し出す聞き方4つのコツに書いています。
つい、言ってしまうこと

| つい言ってしまうこと | 子どもが受け取るもの | 代わりに |
|---|---|---|
| 「もう少し難しい本にしたら?」 | いまの自分ではダメなんだ | 「いい本選んだね」 |
| 「この本のテーマは何だと思う?」 | 正解を言わないといけない | 「どこが好きだった?」 |
| 「感想を言いなさい」 | 感じたことを採点される | 何も言わなくていい |
| 「それはあなたが悪いんじゃない?」 | 話さなければよかった | ただ聞く |
| 「頑張ってね」(疲れている子に) | そうは言ってもなぁ | 「気楽にね」「また話にきてね」 |
どれも、よかれと思って出てくる言葉です。わたし自身も言ってしまったことがあります。共通しているのは、子どもの選んだこと・感じたことに、大人が点数をつけてしまっていることです。
きょうだい一緒だと、うまくいかないこともあります

わが家は、きょうだい一緒に読み聞かせをしています。正直に書くと、うまくいかないことのほうが多いです。2人とも読んでほしい本がある日は、どちらの本を先に読むかで喧嘩になります。
やっていることは単純で、我慢したほうは次の日に先に読むか、別の時間に読むか。「いつも自分だけ我慢させられる」という感覚が積み重なると、自分は大事にされていないという感覚につながるからです。
とはいえ、喧嘩は絶えません。完璧にやることより、「気にかけている」ということが子どもに伝わればいいと思っています。
よくある質問
まとめ

- 「どうせ無理」には、まず「そう感じているんだね」。そのあとに、関係のないいいところを伝える
- 心が疲れている子には「頑張ってね」より「気楽にね」「また話にきてね」
- 本は同じ悩みの話でなくていい。読む時間そのものが心を落ち着かせる
- 「自己肯定感のための本」として渡さない。面白そうだから読む、で十分
- 選んだ本は、まず「いい本選んだね」
- 話し出したら、評価せずに聞くだけ
特別なことをしなくて大丈夫です。隣に座って、声を届ける。今夜、1冊だけ。
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