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「うちの子、話すときにいつも『やばい』か『うざい』しか言わないんですよね…」
「感想文を書かせると、いつも同じ言葉しか出てこなくて」
学校の先生からも、ママ友からも、こうしたお話をよく聞きます。そして続くのはたいてい、「語彙力の本って、結局どれを買えばいいんですか?」という質問です。
この記事では、司書資格を持つ私が小学生向けに選んだ語彙力の本12冊を、「語彙力図鑑・ドリル・辞典」と「物語」の2タイプに分けてご紹介します。学年別の選び方と、買ったあとに効く使い方もあわせてお伝えします。
こんな方におすすめの記事
- 子どもに語彙力をつけさせたいけれど、何を買えばいいかわからない方
- 語彙力図鑑やドリルが気になっているが、本当に効果があるのか迷っている方
- 子どもが話すときに「えーと」「なんか」が多くて気になっている方
- 語彙が豊かになる本の選び方を、学年に合わせて知りたい方
- 小学校の国語・作文・テストで語彙の差が気になっている方
先に、この記事の結論をお伝えします。
小学生の語彙力を伸ばす本は、「言葉を整理して覚える本(図鑑・ドリル・辞典)」と「文脈ごと言葉に出会う本(物語)」の2種類を、組み合わせて使うのがいちばん効きます。
どちらか片方だけでは、うまくいきません。ドリルだけだと覚えた言葉が使われないまま抜けていきますし、物語だけだと出会った言葉が整理されないままになります。物語で出会い、図鑑・ドリルで整理し、辞典で確かめる——この順番が、いちばん自然です。
小学生の語彙力を伸ばす本おすすめ12冊【早見表】
まず全体像です。この記事で紹介する12冊を、タイプ・学年・向いているお子さんで一覧にしました。気になる本があれば、そのままスクロールして詳しい紹介をご覧ください。
| 本 | タイプ | 目安の学年 | こんなお子さんに |
|---|---|---|---|
| ① 12歳までに知っておきたい語彙力図鑑 | 図鑑 | 中〜高学年 | 「やばい」で全部済ませてしまう |
| ② 小学生の語彙力アップ 基礎練習ドリル1200 | ドリル | 中〜高学年 | 読めるのに、書くと言葉が出てこない |
| ③ 小学3年生から始める!こども語彙力1200 | ドリル | 3年生〜 | クイズ・対戦形式なら乗る |
| ④ まんが 言葉のチカラがぐーんと伸びる 語彙力大全 | まんが | 低〜中学年 | 活字の本を嫌がる |
| ⑤ 新レインボー小学国語辞典 改訂第7版 | 辞典 | 全学年 | 読書中に自分で調べられるようにしたい |
| ⑥ ふたりはともだち | 物語 | 低学年〜 | 感情を表す言葉から始めたい |
| ⑦ エルマーのぼうけん | 物語 | 低〜中学年 | はじめての一人読みに |
| ⑧ 大きな森の小さな家 | 物語 | 中学年〜 | 暮らし・季節の言葉を増やしたい |
| ⑨ ハリー・ポッターと賢者の石 | 物語 | 中〜高学年 | 長編に挑戦させたい |
| ⑩ 夏の庭 The Friends | 物語 | 高学年 | 内面を表す言葉を増やしたい |
| ⑪ モモ | 物語 | 高学年 | 抽象的な語彙に触れさせたい |
| ⑫ 銀河鉄道の夜 | 物語 | 高学年 | 日本語の響きを味わわせたい |
迷ったら、この3冊から
12冊すべてをそろえる必要はまったくありません。まず1冊なら、⑤の国語辞典です。読書の量がある子ほど、手元に辞書があるかどうかで伸び方が変わります。
| 状況 | まず選ぶなら |
|---|---|
| 本は読むのに、語彙が増えている実感がない | ⑤ 新レインボー小学国語辞典 |
| 気持ちを聞いても「ふつう」「べつに」で終わる | ① 12歳までに知っておきたい語彙力図鑑 |
| そもそも本を開かない・活字を嫌がる | ④ まんが 語彙力大全 |
「うちの子はどれだろう」と迷う場合は、いちばん下の④から入るのが安全です。読まれない本より、読まれるまんがのほうがはるかに効きます。
タイプ1:語彙力図鑑・ドリル・辞典で「整理して増やす」5冊
言葉を体系的に整理して学べるのが、このタイプの強みです。読書と組み合わせると効果が出ます。逆に、読書がないままドリルだけを進めても、覚えた言葉が使われないまま抜けていきやすいので注意してください。
📖 1. 『「伝える力」が伸びる! 12歳までに知っておきたい語彙力図鑑』
齋藤孝 著 / 日本能率協会マネジメントセンター(2022年)/ 目安の学年:中学年〜高学年
本の内容:「やばい」「神」といったひとことで済ませてしまう表現から抜け出すための一冊です。感情を表す言葉を中心に、言いかえや状況の説明のバリエーションを、イラスト付きで紹介しています。明治大学教授・齋藤孝先生の著書で、対象は小学校中学年〜高学年です。
こんなお子さんに:気持ちを聞いても「ふつう」「べつに」で終わってしまう、感想文がいつも同じ言葉になる、というお子さんに向いています。
使い方のワンポイント:最初から順に読ませようとしないでください。開いたページだけ見て閉じる、を許すと長く続きます。リビングに置いておいて、親がめくって「これ使ってみたい」と言うのがいちばん効きます。
📖 2. 『小学生の語彙力アップ 基礎練習ドリル1200 新装版』
学習国語研究会 著 / メイツ出版(2021年)/ 目安の学年:中学年〜高学年
本の内容:日常生活や新聞・本によく出てくる1,200語を、「言葉+意味+使い方」のセットで学べるドリルです。名詞・動詞・形容詞・ことわざ・四字熟語と章が分かれていて、穴埋め形式で進められます。
こんなお子さんに:読書量はあるのに、テストや作文で言葉が出てこない子。つまり「意味がわかる」で止まっている言葉が、たくさんたまっている子に効きます。
使い方のワンポイント:1日1ページなど、量を決めて短く終えるのがコツです。読書の時間を削ってドリルをやると本末転倒になるので、読書のあとの5分くらいの位置づけがちょうどいいと思います。
📖 3. 『小学3年生から始める! こども語彙力1200』
齋藤孝 著 / KADOKAWA(2018年)/ 目安の学年:3年生〜
本の内容:小学校を卒業するまでに覚えておきたい言葉を、テスト形式で確かめていける一冊です。教科書に出てくる語彙はもちろん、実学年より少し上の言葉まで、背伸びして触れられる構成になっています。
こんなお子さんに:クイズやテスト形式が好きな子。「勉強」より「対戦」のほうが乗るタイプの子に向いています。
使い方のワンポイント:親子で一問ずつ出し合うと、ぐっと続きます。大人がわざと間違えると、子どもは急に前のめりになります。②のドリルとは形式が違うので、どちらか片方で十分です。
📖 4. 『まんが 言葉のチカラがぐーんと伸びる 語彙力大全』
青木伸生 監修 / 西東社(2024年)/ 目安の学年:低学年〜中学年
本の内容:フルカラーのまんがを通して、言いかえ・伝え方・文章の書き方など、日常で役に立つ言葉の力を学べる一冊です。2024年に出た新しい本で、いまの小学生の言葉づかいを踏まえた内容になっています。
こんなお子さんに:活字の本を敬遠する子、ドリル形式に拒否反応がある子に。まんがだからと侮れません。読まれない本より、読まれるまんがのほうがはるかに効きます。
使い方のワンポイント:これは「学習本」の顔をさせないほうがうまくいきます。まんがの棚に、ほかのまんがと一緒に並べておいてください。
📖 5. 『新レインボー小学国語辞典 改訂第7版』
金田一春彦・金田一秀穂 監修 / Gakken(2023年)/ 目安の学年:全学年
本の内容:小学生向けの定番国語辞典です。ふりがな・例文・イラストが豊富で、小学生が一人で引きやすいように作られています。学校で使っている辞典と同じシリーズ、というご家庭も多いと思います。
こんなお子さんに:すべてのお子さんに、というのが正直なところです。語彙力を伸ばす一番の近道は、読書中に「なんだろう」と思った瞬間、手を伸ばせばそこに辞書があることだからです。
使い方のワンポイント:本棚にしまわず、リビングに出しっぱなしにしてください。そして引きなさいと言わないこと。自分で調べた言葉は、次に本の中で出会ったときに「知ってる!」に変わります。この体験が、次の一語を引く力になります。
タイプ2:物語で「文脈ごと増やす」7冊
ここからは、物語の中で自然に語彙が育つ本です。文脈の中で出会った言葉は、ドリルで覚えた言葉より定着します。物語の流れの中で「なんとなくこういう意味だろう」と推測しながら読むことが、そのまま語彙の習得になっているからです。
学年の目安が低い順に並べています。お子さんの学年より少し上の本に、あえて手を伸ばしてみるのもおすすめです。
📖 6. 『ふたりはともだち』
アーノルド・ローベル 作・絵/三木卓 訳(文化出版局)/ 目安の学年:低学年〜
本の内容:カエルのがまくんとかえるくんの友情を描いた連作短編集。シンプルな言葉でありながら、感情の機微や人間関係の温かさが丁寧に描かれています。
どんな語彙に出会えるか:「心配する」「待ちわびる」「はずかしい」など、感情を表す言葉が豊富に登場します。「嬉しい」「悲しい」だけでない細やかな感情語彙の、入門書として最適です。
司書ママのひとこと:教科書で「お手紙」を読んだ子は、それだけで最後まで読めます。国語の授業のあとに渡すと、驚くほどすんなり入ります。
📖 7. 『エルマーのぼうけん』
ルース・スタイルス・ガネット 作/渡辺茂男 訳(福音館書店)/ 目安の学年:低学年〜中学年
本の内容:男の子エルマーが島に閉じ込められたりゅうの子を助けに行く冒険物語。次々と登場する動物たちとの知恵比べが楽しいシリーズ第一作です。
どんな語彙に出会えるか:「機転をきかせる」「たくみに」「切り抜ける」など、知恵や行動に関する表現が豊富です。論理的に考えて問題を解決する場面が多く、思考と言葉が結びついた語彙の広がりが期待できます。
司書ママのひとこと:絵本から幼年童話へ移る時期の定番です。「はじめて自分ひとりで読み切った本」になりやすい一冊で、この成功体験がその後の読書量を変えます。シリーズは全3巻ですが、まずはこの1巻だけで十分です。気に入れば、『エルマーとりゅう』『エルマーと16ぴきのりゅう』へ自然に進んでいきます。
📖 8. 『大きな森の小さな家』
ローラ・インガルス・ワイルダー 作/恩地三保子 訳(福音館書店)/ 目安の学年:中学年〜
本の内容:19世紀のアメリカの大きな森の中での、家族との暮らしをありありと描いた自伝的物語。シリーズの第一作です。
どんな語彙に出会えるか:食べ物・道具・自然・季節の描写が非常に豊かで、日本語の訳文の美しさでも知られています。「燻製にする」「バターをかきまわす」「霜が降りた」など、生活に根ざした多彩な語彙に触れることができます。
司書ママのひとこと:いまの子どもの日常には存在しない道具や作業がたくさん出てきます。「これ何?」と聞かれたら、それが語彙の増える瞬間です。
📖 9. 『ハリー・ポッターと賢者の石』
J.K.ローリング 著/松岡佑子 訳(静山社)/ 目安の学年:中学年〜高学年
本の内容:言わずと知れた世界的ベストセラー。孤独な少年ハリーが魔法学校に入学し、自分の宿命へと向かっていく物語の第一作です。
どんな語彙に出会えるか:訳文には独自の日本語表現が多く盛り込まれており、日本語の豊かさという点でも読む価値があります。ファンタジー世界ならではの語彙に加え、感情・人間関係・勇気に関する表現も豊富です。
司書ママのひとこと:厚さで敬遠されがちですが、分厚い本を読み切った経験は、語彙そのものより大きな財産になります。文庫版(静山社ペガサス文庫)なら分冊されていて、ハードルがぐっと下がります。
📖 10. 『夏の庭 The Friends』
湯本香樹実 著(新潮社)/ 目安の学年:高学年
本の内容:小学6年生の男の子3人が、近所のひとり暮らしのおじいさんを「見守る」うちに、生と死について深く考えていく物語です。
どんな語彙に出会えるか:日常の何気ない場面の描写が細やかで、感情や関係性を言語化するための表現が豊富です。「照れくさい」「胸がざわつく」といった、繊細な内面の変化を表す語彙に多く出会えます。
司書ママのひとこと:主人公が小学6年生なので、高学年の子は自分を重ねながら読みます。読んだあとに何か言いたそうにしていたら、急かさず待ってあげてください。
📖 11. 『モモ』
ミヒャエル・エンデ 著/大島かおり 訳(岩波書店)/ 目安の学年:高学年
本の内容:「時間どろぼう」から人々の時間を取り戻そうとする少女モモの物語。「時間」「豊かさ」「生きるとはどういうことか」を深く問いかける名作です。
どんな語彙に出会えるか:哲学的な問いを含む文章の中で、抽象的な概念を言葉にする表現に数多く触れられます。「効率」「余裕」「本当の豊かさ」など、高学年で伸ばしたい抽象語彙が自然に身につきます。
司書ママのひとこと:すぐに読み切れなくて大丈夫です。中学生になってから読み返して、やっと刺さる子もいます。本棚に置いておく価値のある一冊です。
📖 12. 『銀河鉄道の夜』
宮沢賢治 著(世界文化社)/ 目安の学年:高学年
本の内容:孤独な少年ジョバンニが親友カムパネルラと銀河を旅する幻想的な物語。宮沢賢治の代表作のひとつです。
どんな語彙に出会えるか:宮沢賢治の独特の日本語世界に触れることで、音やリズムを持った言葉の美しさを体験できます。
司書ママのひとこと:難しい言葉も多い作品です。意味がわからなくても構わないので、声に出して読む(あるいは高学年でも読み聞かせる)と、言葉の豊かさが耳から入ってきます。
学年別・語彙力を伸ばす本の選び方
同じ「語彙力を伸ばす本」でも、学年によって合う本は変わります。目の前のお子さんに合わせて調整してみてください。
低学年(1〜2年生):耳から語彙を増やす
まだ自分で読める字に限りがある時期は、読み聞かせで「耳から」語彙を増やすのが近道です。オノマトペや感覚を表す言葉が豊かな絵本がおすすめです。この記事の中では⑥ふたりはともだち・⑦エルマーのぼうけん・④まんが語彙力大全が合います。
読み聞かせと語彙の関係は、読み聞かせで子どもの語彙力が伸びる理由の記事でくわしく紹介しています。
中学年(3〜4年生):世界が広がる物語で増やす
一人読みが安定してくるこの時期は、日常から少し離れた世界——冒険、ファンタジー、昔の時代——が舞台の物語が、新しい語彙の宝庫になります。⑧大きな森の小さな家・⑨ハリー・ポッターあたりが入口です。語彙を整理する本を1冊足すなら、①語彙力図鑑か③こども語彙力1200を。
高学年(5〜6年生):「抽象語彙」を意識する
高学年で伸ばしたいのは、「環境」「制度」「影響」のような抽象的な語彙です。⑩夏の庭・⑪モモ・⑫銀河鉄道の夜のような作品に加えて、興味のある分野のノンフィクションや子ども新聞を組み合わせてみてください。
組み合わせ方は、「本は読むのに国語が苦手」の原因と対策の記事で解説しています。
語彙が育つ本の「選び方」3つのポイント

ここまで12冊を挙げてきましたが、この先も自分で選べるように、司書としての選書の視点をお伝えしておきます。
ポイント1:「ちょっと難しい」言葉が出てくる本を選ぶ
全部わかる本より、「知らない言葉が少し混じっている本」が語彙を育てます。
すべての言葉がわかる本は読みやすいですが、語彙は広がりません。一方、知らない言葉が多すぎると読むのが苦しくなります。「だいたいわかるけれど、ときどき知らない言葉が出てくる」——これが語彙を育てる読書のちょうどよい難しさです。
お子さんが「この言葉、どういう意味?」と聞いてくれたとき、それは語彙が育ちつつあるサインです。すぐに答えを教えるより、「なんとなくどんな意味だと思う?」と一緒に考えてみるのも、語彙の定着を助けます。
ポイント2:「描写が豊かな本」を選ぶ
風景・感情・動作の描写が丁寧な本は、表現の引き出しを増やしてくれます。
たとえば「雨が降っていた」と書く本もあれば、「雨が石畳を黒く濡らし、軒先からしずくが一定のリズムで落ちていた」と書く本もあります。後者のような描写の豊かな文章に触れることで、子どもは「見たものを言葉にする」ことへの感覚が磨かれていきます。
文学作品・児童文学の名作には、こうした豊かな描写が随所にあります。ファンタジー、歴史もの、自然を舞台にした作品などは、描写の豊かさという点でとくにおすすめです。
ポイント3:「自分とは違う世界」が舞台の本を選ぶ
異なる時代・文化・環境が舞台の本は、日常では出会えない言葉の宝庫です。
江戸時代が舞台の時代小説なら「のれん」「番頭」「お天道様」のような言葉に出会えます。外国が舞台の翻訳作品なら、日本語の中に異文化の価値観を内包した表現が登場します。自分とは違う世界を舞台にした本は、日常とは異なる語彙を、物語の文脈の中でいきいきと体験させてくれます。
そもそも「語彙力」とは何か?
語彙力とは、「知っている言葉の数」と「使いこなせる言葉の数」の両方を指します。
「知っている」だけでは十分ではありません。たとえば「感激する」という言葉を知っていても、実際に「あのシーン、感激したよ」と自然に使えるかどうかは別の話です。
| 種類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 受容語彙 | 読んだり聞いたりして「わかる」言葉 | 「郷愁」と聞いて意味がわかる |
| 産出語彙 | 自分が話したり書いたりして「使える」言葉 | 「郷愁」を会話や文章の中で自然に使える |
一般的に、受容語彙のほうが産出語彙より多くなります。読書で触れた言葉は、まず受容語彙として蓄積され、繰り返しの出会いを経て産出語彙へと育っていきます。この記事で「物語」と「ドリル」の両方をすすめているのは、前者が受容語彙を、後者が産出語彙への橋渡しを担うからです。
読書はなぜ語彙力を育てるのか

読書は、日常会話では出会えない言葉と、もっとも自然な形で出会える場所だからです。
文部科学省の調査などでも、読書量と語彙力には強い相関があることが示されています。その理由は主に3つあります。
① 日常会話にはない「書き言葉」に触れられる
日常会話で使われる語彙は、思っているよりずっと限られています。「おいしい」「びっくりした」「すごく」「やばい」——これらは便利な言葉ですが、表現の幅は狭いものです。
本の中には「舌鼓を打つ」「驚嘆する」「際立って」のような、書き言葉ならではの表現が豊富に使われています。物語の文脈の中でこれらの言葉に出会うとき、子どもは意味を辞書で引かなくても、前後の流れから自然に意味を推測します。これが「文脈の中で語彙を覚える」という、読書ならではの語彙習得のしかたです。
② 同じ概念を、さまざまな表現で体験できる
「悲しい」という気持ちひとつとっても、本の中では「涙があふれてとまらなかった」「胸がしめつけられるような気がした」「空がいつもより低く見えた」など、さまざまな言葉で表現されています。
こうした多様な表現に触れることで、子どもは「悲しい」にはさまざまな質やグラデーションがあると感じ始め、自分の気持ちを表現するときのことばの引き出しが増えていきます。
③ 読書量が「累積的に」語彙を広げる
語彙は、一度覚えたら終わりではありません。ある言葉に10回、20回と繰り返し出会うことで、少しずつ自分のものになっていきます。本をたくさん読む子は、さまざまな文脈で同じ言葉に何度も出会えるため、語彙が「定着」しやすいのです。
語彙が増えると、何が変わるのか

語彙が豊かになると、「考える力」「伝える力」「感情を整える力」のすべてが育ちます。
考える力との関係:言葉は、思考の道具です。「なんかもやもやする」と感じているとき、「これは不公平さへの憤りだ」と言語化できる子どもは、その感情を整理して次の行動を考えることができます。語彙が増えるということは、考えられることの幅が広がるということでもあります。
伝える力との関係:「言いたいことはあるのに、言葉が出てこない」——この状態は、語彙の不足が原因のひとつです。作文で同じ言葉が繰り返されたり、発表で言葉に詰まったりするのも、表現の引き出しが少ない状態のあらわれです。
感情を整える力との関係:自分の気持ちに名前がつけられると、感情をコントロールしやすくなることが、心理学の研究でも示されています。「なんかむかつく」ではなく「悔しかった、認めてほしかった」と言える子どもは、その気持ちを誰かに伝えたり、自分で消化したりする力があります。
📖 語彙力が子どもの思考・表現・感情にどう影響するかは、小学生の語彙力の増やし方でさらに詳しく解説しています。
本を買ったあとが本番:語彙が定着する読み方
本を選んだあとの「読み方」も、語彙の育ちに大きく影響します。ここが、実は買う本の種類より効きます。
「読んだあとの一言」を大切にする
読んだあとすぐに「どうだった?」と聞くのではなく、「あの場面、どんな気持ちだったんだろうね」と一言添えるだけでも、子どもは自分の言葉で気持ちを表現しようとし始めます。
- 「一番印象に残った場面はどこ?」
- 「主人公のこと、好き?嫌い?なんで?」
- 「もし自分だったら、どうしてたと思う?」
- 「この本の中で、知らなかった言葉はあった?」
「正解」を求めるのではなく、子どもが自分の言葉で語る体験を積み重ねることが、表現力を育てます。
「気になった言葉メモ」を作る
読書中に出会った「知らなかった言葉」や「かっこいいと思った表現」を、小さなノートや手帳に書き留める習慣は、語彙を定着させるうえでとても効果的です。
辞書的な意味だけでなく、「どんな場面で使われていたか」を一言添えておくと、記憶に残りやすくなります。このノートが、作文や発表のときに「言葉の引き出し」として活きてきます。
語彙を「使う」練習も忘れずに
読書でインプットを増やしながら、アウトプットの機会も作ることで、受容語彙が産出語彙へと育っていきます。
- 「今日の一言メモ」:読んだ本や学校での出来事から、「今日一番印象に残った言葉」を一文だけ書く。週に2〜3回でも「言葉を選ぶ力」が育ちます。
- 「言い換えゲーム」:「おいしい」を別の言葉で言ったら?「びっくりした」を3つの言い方で表すと?——食事中や車の中でさっとやるだけで、引き出しが増えます。
- 「誰かに語る」:家族に本の内容を紹介する経験は、受容語彙を産出語彙へ変える自然な機会です。「あらすじ」ではなく「どんなところが好きだったか」を話すのがコツです。
「本選び」に迷ったら、ヨンデミーに任せてみよう
ここまで12冊をご紹介しましたが、正直なところ、語彙力の本を買うことより、その子に合う本を選び続けることのほうがずっと難しいというのが司書としての実感です。
- 手に取ったら簡単すぎた
- 読み始めたけれど難しくて途中でやめてしまった
- 何を選べばいいかわからなくて、いつも同じシリーズになってしまう
こうした経験がある方におすすめしたいのが、ヨンデミーです。AIが一人ひとりの子どもの読書レベル・興味・過去に読んだ本をもとに、「ちょうどよい本」を提案してくれるオンラインの読書習慣サポートサービスです。
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 対象年齢 | 小学生(幼児〜中学生も対応) |
| 本の提案 | AIが個別に「その子にぴったりの本」を選書 |
| 読書記録 | 読んだ本をアプリで記録・管理できる |
| 継続サポート | 読書習慣が身につくような工夫が詰まっている |
この記事でお伝えした「ちょっと難しい本」「描写が豊かな本」——そういった視点での選書を、AIが子どもに合わせて自動でやってくれます。無料体験があるので、まず試してみるのがいいと思います。
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語彙力の本についてよくある質問
Q. 語彙力図鑑・ドリル・物語、どれから始めればいいですか?
A. まず「本人が面白がって読めるもの」から、が鉄則です。
読書習慣がまだない子に図鑑・ドリルから入ると、「語彙=勉強」になってしまいがちです。物語で「読むのは楽しい」という土台をつくってから、図鑑・ドリルで整理する順番をおすすめします。
Q. マンガ形式の語彙本でも効果はありますか?
A. あります。「意味+使う場面」がセットで頭に入るのがマンガ形式の強みです。
ただし、語彙は「使って」はじめて定着します。覚えた言葉を日常会話で使ってみる機会も、あわせて作ってあげてください。
Q. 語彙力の本は何冊そろえればいいですか?
A. 図鑑・ドリル系は1冊で十分です。
この記事の①〜④は、どれか1冊あれば役割は果たせます。複数買っても、やり切らないまま積まれるだけになりがちです。それより、⑤の国語辞典を1冊置いて、あとは物語の冊数を増やすほうが伸びます。
Q. 語彙力ドリルをやらせても続きません。
A. 「毎日やる」の設計をやめてみてください。
ドリルが続かないのは、お子さんの意志の問題ではなく分量の問題であることがほとんどです。1日1ページ、5分で終わる形にして、読書の時間は削らない。それでも続かなければ、④のまんが形式に切り替えてください。
Q. 何冊くらい読めば語彙力は伸びますか?
A. 冊数より「続けること」です。
1冊を何度もくり返し読むのでも、月に数冊のペースでも、読み続けている子の語彙は着実に増えていきます。大切なのは、途切れずに本と付き合い続けることです。
まとめ:語彙力の本は「出会う本」と「整理する本」を1冊ずつ
今日お伝えしたことを振り返ります。
- 語彙力は「知っている言葉(受容語彙)」と「使える言葉(産出語彙)」の両輪
- 物語が受容語彙を増やし、図鑑・ドリルが産出語彙への橋渡しをする
- まず1冊なら、国語辞典。リビングに出しっぱなしにする
- 図鑑・ドリル系は1冊で十分。複数買うより物語の冊数を増やす
- 買ったあとの「読んだあとの一言」が、いちばん語彙を定着させる
語彙力を育てるために、特別な教材は必要ありません。子どもが「面白い」と感じる本を一冊手に取ることが、すべての始まりです。まずは一冊、今日お伝えした視点で選んでみてください。
なお、選び方以前に「そもそも本を開かない」という段階のお子さんもいます。その場合にどこから手をつけるかは、読書が苦手な小学生が0冊から抜け出す7つのステップにまとめました。
また、語彙の中でも「気持ちを表す言葉」は、本がなくても日常会話から増やせます。学年別の渡し方とそのまま使えるリストは感情語彙を育てる親の声かけの記事をどうぞ。
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