「どうしたの?」と聞いても、返ってくるのは「べつに」。
「何が嫌だったの?」と聞いても、「わかんない」。
そのうち黙りこんで、最後は「もういい!」で会話が終わる——。
そんな場面が続くと、「うちの子は気持ちを話してくれない子なのかな」と心配になりますよね。
でも、学校司書として毎日たくさんの子と接していて思うのは、話さない子のほとんどは、話したくないのではなく「使える言葉を持っていない」だけだということです。頭の中にモヤモヤはある。けれど、それにあてはまる言葉が手元にない。だから「嫌だ」か「べつに」で済ませるしかなくなります。
先に、この記事の結論をお伝えします。
気持ちの言葉は「教える」ものではなく、大人が先に使って「渡す」ものです。そして渡す言葉は、学年によって変わります。
この記事では、小学校低学年〜中学年(1〜4年生)のご家庭に向けて、そのまま使える感情語彙のリストと、場面ごとの渡し方をまとめました。覚える必要はありません。困ったときに開いて、ひとつ借りて使ってみる——そんな使い方をしていただければ十分です。
こんな方におすすめの記事
- 「嫌だ」「べつに」「わかんない」しか返ってこなくて困っている方
- 子どもが気持ちを爆発させたあと、どう声をかければいいか迷う方
- 友だちとのトラブルが増えてきて、心の育ちが気になっている方
- 「気持ちを言葉にしなさい」と言ってはみたものの、その先が続かない方
- そのまま使える「気持ちの言葉」の一覧がほしい方
「嫌だ」しか言わないのは、話したくないからじゃない

気持ちを言葉にするまでには、3つの段階がある
大人はつい「気持ちを言う/言わない」の2択で考えてしまいますが、子どもの中では、もう少し細かい手順が踏まれています。
| 段階 | やっていること | つまずきやすいところ |
|---|---|---|
| ① 気づく | 「今、何か変だ」と自分の中の変化に気づく | 体はざわざわするのに、感情だと認識できない |
| ② 選ぶ | その感じにあてはまる言葉を探す | 持っている言葉が「嫌だ」しかない |
| ③ 伝える | 相手にわかる形にして口に出す | 言ったら怒られる/笑われると思って止める |
「うちの子は話さない」と感じているとき、つまずいているのは③ではなく、たいてい②の「選ぶ」です。言葉の在庫が少ないので、どんな出来事も同じ引き出しから出てくる。だから毎回「嫌だ」になります。
ここを「話す気がない」と受け取ってしまうと、大人の側は問い詰める方向に向かってしまいます。でも、在庫が足りないところに質問を重ねても、出てくるものは増えません。必要なのは質問ではなく、選択肢を増やしてあげることです。
じつは、大人でもかなり難しい
試しに、今日いちばん心が動いた瞬間を思い出して、「嬉しい・悲しい・腹が立つ・不安」以外の言葉で説明してみてください。意外と手が止まりませんか。
大人でも難しいことを、子どもは10年に満たない語彙でやろうとしています。できないのが普通で、できたらすごい——まずその前提に立つと、声のかけ方が変わってきます。
なお、そもそも気持ちを言葉にする力そのものについては、感情の言語化が育む自己調整力の記事で、絵本や映画を使った入口のつくり方とあわせて書いています。かんしゃくが起きてしまったときの関わり方も、そちらでくわしく扱っています。
感情語彙が増えると、子どもの何が変わるのか
「感情語彙」とは、うれしい・かなしい・こわい……といった気持ちを言い表すための、言葉の引き出しのことです。
引き出しが増えると何が起きるのか。教室で見ていて、いちばんはっきり変わるのは「気持ちが爆発するまでの時間が延びる」ことです。
| 場面 | 言葉がないとき | 言葉があるとき |
|---|---|---|
| 順番を抜かされた | いきなり押す・泣く | 「ずるいと思った」と言える |
| 発表で失敗した | 「もうやらない」と閉じる | 「恥ずかしかった。悔しい」と整理できる |
| 友だちが賞をとった | そっけない態度をとる | 「うらやましい気持ちもある」と認められる |
| 叱られた | 「うるさい!」で終わる | 「言い方が嫌だった」と中身を返せる |

右の列にいる子は、感情が消えているわけではありません。同じ強さの気持ちを、行動ではなく言葉で外に出せているだけです。言葉は、感情を我慢するための道具ではなく、外に出す別ルートだと考えるとしっくりきます。
相手の気持ちを想像できるようになるのは、そのあと
自分の中で起きていることに名前がついていない子は、他人の中で起きていることも見えません。逆に、「くやしい」を知っている子は、負けた友だちの顔を見て「今、くやしいのかも」と思えるようになります。
思いやりのある子に育ってほしい、と願うとき。その手前にあるのが、この「自分の気持ちに名前がついている」という状態です。共感は、教えて身につくものではなく、自分の感情を扱えるようになった結果として出てくるものだと感じています。
先に必要なのは「わかってもらえた」という経験
言葉を渡すことには、もうひとつ大事な副産物があります。
「くやしかったんだね」と言ってもらえた子は、そのとき言葉を覚えると同時に、わかってもらえた経験もしています。この経験があると、次に何かあったとき「話してみようかな」と思える。語彙が増えるから話すようになるのではなく、わかってもらえたから話すようになる——順番はむしろこちらです。
【学年別】いま渡したい「気持ちの言葉」
渡す言葉は、学年によって変わります。低学年の子に中学年向けの言葉を渡してもピンとこないし、中学年の子に基本の4感情だけ渡しても物足りません。
| この時期の課題 | 渡す言葉 | 親のスタンス | |
|---|---|---|---|
| 低学年(1〜2年) | 気持ちと体の感覚が混ざっている | 基本の4感情+体の感覚の言葉 | 言い当てて、名前をつけてあげる |
| 中学年(3〜4年) | 友だち関係が複雑になる | 混ざった気持ち・微妙な気持ちの言葉 | 決めつけず、選択肢として並べる |
| 高学年が近づいたら | 話す相手と内容を選び始める | 言葉より「話さない自由」 | 聞き出さず、扉を開けておく |
低学年(1〜2年生):体の感覚に名前をつける時期
低学年の子は、感情をまず体で感じています。「おなかがモヤモヤする」「胸がドキドキする」「のどがつまる感じ」。本人の中では、これは気持ちではなく体調の話です。
だからこの時期は、体の感覚のほうから入って、そこに気持ちの名前をつなげてあげるのが効きます。
「胸のあたりが、ぎゅーってする感じ? それはね、『かなしい』っていう気持ちだよ」

「うれしい・かなしい・おこってる・こわい」の基本4つを、体の感覚とセットで確認できれば、この時期は十分です。難しい言葉を急いで教える必要はありません。
中学年(3〜4年生):「混ざった気持ち」に名前をつける時期
中学年は、友だち関係が一気に複雑になります。仲良しグループができて、比べられて、ときには仲間はずれも経験する。いわゆるギャングエイジです。
この時期の子が抱えるのは、一言では言えない混ざった気持ちです。
- 友だちが賞をとって、おめでとうと思うのに、なんかモヤモヤする(=うらやましさ)
- けんかした相手が謝ってきたのに、まだスッキリしない(=わだかまり)
- 本当は遊びたいのに、誘われなかったから「べつにいい」と言ってしまった(=強がりと寂しさ)

こうした気持ちに名前があると知るだけで、子どもは自分を「変な子」ではなく「そういうこともある子」として受け取れるようになります。中学年の友だちトラブルの多くは、この「名前のない気持ち」がふくらんで爆発したものです。
高学年が近づいたら「話さない選択」も認める
4年生の後半あたりから、子どもは話す相手と話す内容を選ぶようになります。これは心が閉じたのではなく、内面ができてきた証拠です。
この時期に言葉を渡そうとしすぎると、かえって面倒がられます。「言いたくなったら聞くよ」という状態で置いておくほうが、結果的によく話してくれるようになります。渡す相手が変わったのではなく、渡し方を変える時期が来た、ということです。
学校のことをそもそも話してくれない、という悩みには「今日どうだった?」に「覚えてない」と返す子が話し出す聞き方の記事が役に立つと思います。この記事は「何を言葉にするか」、あちらは「どう聞くか」の話です。
【保存版】そのまま使える感情語彙リスト
ここからは、実際に使える言葉の一覧です。全部覚える必要はまったくありません。「今日はこの中から1つ使ってみよう」くらいの気持ちで眺めてください。
うれしい系
| 言葉 | どんなとき |
|---|---|
| ほっとした | 心配ごとが終わったとき |
| 誇らしい | 自分のがんばりを認めてもらえたとき |
| わくわくする | これから起きることが楽しみなとき |
| じーんとした | 優しくされて胸が熱くなったとき |
| すっきりした | もやもやが解けたとき |
| 夢中になった | 時間を忘れて何かをしていたとき |
かなしい・つらい系
| 言葉 | どんなとき |
|---|---|
| さびしい | ひとりだと感じたとき |
| 傷ついた | 言われた言葉が胸に刺さったとき |
| がっかりした | 期待していたことがだめになったとき |
| 心細い | 頼れる人がそばにいないとき |
| やるせない | どうしようもなくて行き場がないとき |
| ふがいない | 自分に対してがっかりしたとき |
おこる系
「怒る」は、いちばん中身がばらばらな言葉です。ここを分けられるようになると、けんかの解決がぐっと早くなります。
| 言葉 | どんなとき |
|---|---|
| くやしい | 負けた・できなかったとき |
| ずるいと思った | 不公平だと感じたとき |
| もどかしい | うまく伝わらない・思いどおりに動かないとき |
| ばかにされた気がした | 軽く扱われたと感じたとき |
| 裏切られた気がした | 信じていた相手に期待を外されたとき |
| イライラする | 理由がはっきりしないまま落ち着かないとき |
こわい・不安系
| 言葉 | どんなとき |
|---|---|
| 不安 | この先どうなるかわからないとき |
| 心配 | だれかや何かが気がかりなとき |
| 緊張する | 失敗できない場面の直前 |
| びくびくする | また怒られるかもと思っているとき |
| 気が重い | 行きたくない予定があるとき |
恥ずかしい系
| 言葉 | どんなとき |
|---|---|
| 照れくさい | ほめられて、うれしいけれど落ち着かないとき |
| 気まずい | けんかしたあとに顔を合わせたとき |
| バツが悪い | 自分が悪いと自分でわかっているとき |
| いたたまれない | その場にいるのがつらいとき |
体の感覚の言葉(低学年に渡しやすい)
低学年には、いきなり感情の名前より体の言葉から入るほうが伝わります。「どのへんが、どんな感じ?」と聞いて、この中から選ばせるだけでも会話になります。
| 体の言葉 | つながりやすい気持ち |
|---|---|
| 胸がぎゅーってする | かなしい・さびしい |
| おなかがモヤモヤする | 不安・気が重い |
| 顔があつくなる | 恥ずかしい・怒っている |
| 手にぎゅっと力が入る | くやしい・緊張 |
| のどがつまる | 泣きたい・言いたいのに言えない |
| 体がふわふわする | うれしい・わくわく |
混ざった気持ちの言葉(中学年に渡したい)
| 混ざった気持ち | どんなとき |
|---|---|
| うれしいけど、恥ずかしい | みんなの前でほめられたとき |
| くやしいけど、やりきった感じもする | 負けたけれど全力を出せたとき |
| うらやましい | 友だちの活躍を素直に喜べないとき |
| わだかまりが残る | 謝られたのにスッキリしないとき |
| 強がってしまった | 本当は寂しいのに「べつに」と言ったとき |
| ほっとしたけど、申し訳ない | 自分だけ助かったとき |
リストの使い方は「並べて、選ばせる」

このリストは、子どもに見せて覚えさせるものではありません。大人が2〜3個を口に出して並べ、子どもに選んでもらう——それがいちばん使いやすい形です。
「それは、くやしい? それとも、ずるいと思った感じ? ちがう?」
「ちがう」と返ってきても大成功です。「ちがう」と言えたということは、子どもが自分の中を確かめた証拠だからです。当てにいく必要はありません。
気持ちには「強さ」もある
もうひとつ、見落とされがちな軸があります。気持ちの強さです。
同じ「嫌だ」でも、ちょっと引っかかる程度の嫌と、もう学校に行きたくないほどの嫌があります。ところが子どもはどちらも「嫌だ」と言うので、大人の側が重さを読み違えてしまうことが起きます。
軽く受け流したら実は深刻だった、逆に慌てて動いたら本人はもう忘れていた——どちらも、強さの情報が渡っていないために起きるすれ違いです。
数字で聞くと、いちばん早い
強さを聞くのに、言葉はいりません。「10のうち、いくつ嫌?」と数字で聞くのがいちばん速いです。
「その嫌な感じ、10のうちだといくつくらい?」
「7か……。じゃあ、けっこう嫌だったんだね」

数字なら、言葉を探さなくても答えられます。低学年なら「大・中・小」や、手を広げる幅でも構いません。言葉が出てこない子ほど、この方法はよく効きます。
強さを表す言葉も渡しておく
| 強さ | 渡せる言葉 | 大人の受け方 |
|---|---|---|
| 弱い | ちょっと引っかかる・なんとなく気になる | 「そっか」で流していい |
| ふつう | けっこう嫌だった・わりとくやしい | そのまま繰り返して返す |
| 強い | すごく嫌だった・耐えられなかった | 予定を止めて、話を最後まで聞く |
| とても強い | もう行きたくない・どうしたらいいかわからない | その場で判断せず、担任やスクールカウンセラーにも相談する |
強さの言葉を持っている子は、大人に助けを求めるのが上手になります。「ちょっと嫌」と「すごく嫌」を言い分けられることは、自分を守る力そのものです。
場面別|こんなとき、どの言葉を渡す?
よくある場面と、そのとき渡せる言葉をまとめました。そのまま言ってみるだけで使えます。
| 場面 | 子どもの言葉 | 渡す声かけ |
|---|---|---|
| 友だちに無視された | 「べつに」 | 「さびしかった? それとも、傷ついた感じ?」 |
| 発表で失敗した | 「もうやだ」 | 「恥ずかしかったね。くやしい気持ちもある?」 |
| テストが返ってきた | 「ふつう」 | 「思ってたより取れた? ちょっと誇らしい感じ?」 |
| 習い事に行きたがらない | 「行きたくない」 | 「気が重いんだね。行く前がいちばん重い?」 |
| きょうだいげんかのあと | 「あっちが悪い」 | 「ずるいと思ったんだね。何がいちばん嫌だった?」 |
| 誘われなかった | 「行きたくなかったし」 | 「行きたかった気持ちもあった? あってもいいよ」 |
| 友だちが表彰された | (そっけない) | 「うらやましいって思う日もあるよね」 |
共通しているのは、すべて「?」で終わっていることです。「さびしかったんでしょう」と決めつけると、子どもは自分の中を確かめる前に「ちがう」と反射で返します。問いかけの形にするだけで、探す時間が生まれます。
けんかのあとに使うと、いちばん効く
気持ちの言葉がもっとも力を発揮するのは、けんかのあとです。きょうだいげんかでも、友だちとのトラブルでも同じです。
けんかのあと、大人はつい「何があったの?」から入ります。ところが、事実から聞くと、子どもは自分に有利な説明を組み立て始めます。「あっちが先にやった」「わたしは何もしてない」。こうなると、話は水掛け論に入ります。
順番を「気持ち→事実→これから」に変える
| 順番 | 聞くこと | ここでやらないこと |
|---|---|---|
| ① 気持ち | 「今、どんな気持ち? くやしい? ずるいと思った?」 | 正しさの判定 |
| ② 事実 | 「何があったのか、順番に教えて」 | 途中で口を挟む |
| ③ これから | 「これからどうしたい?」 | 謝らせることを目的にする |

気持ちを先に置くと、子どもは自分を守る必要がなくなるので、事実を正直に話しやすくなります。「くやしかったんだね」と受け取ってもらえたあとの「で、何があったの?」は、まったく別の質問として届きます。
「ごめんなさい」を急がない
大人としては、その場で謝らせて終わりにしたくなります。けれど気持ちが片づく前に言わされた「ごめんなさい」は、次のけんかを減らしません。形だけ整って、中身は残ったままになるからです。
逆に、自分の気持ちに名前がついた子は、相手の側にも同じものがあると気づきやすくなります。「わたしもくやしかったけど、あの子もくやしかったのかも」——この一歩が出てきたら、謝罪は自然に出てきます。
善悪の感覚がどう育つのかについては、読み聞かせは「道徳の教科書」の記事で、絵本を使った育て方とあわせて書いています。
つい言ってしまう声かけと、その言いかえ
どれも悪気なく出てしまう言葉ばかりです。私も言ってしまいます。大事なのは言わないことではなく、言ったあとに一言足せることだと思っています。
| つい言ってしまう | 子どもの側で起きること | 言いかえ |
|---|---|---|
| 「なんで泣いてるの?」 | 理由を説明する義務が生まれ、泣きながら考えることになる | 「泣きたい感じなんだね」 |
| 「そんなことで怒らないの」 | 気持ちそのものが間違いだと受け取る | 「怒るくらい嫌だったんだね」 |
| 「気にしなくていいよ」 | 気にしている自分がおかしいと感じる | 「気になるよね。私でも気になる」 |
| 「お友だちの気持ちも考えて」 | 自分の気持ちを飛ばされたと感じる | 「まず、あなたはどう思った?」 |
| 「どうしたいの?」(早すぎる) | 整理がつく前に結論を迫られる | 「今はどんな気持ち? 答えは決めなくていいよ」 |
| 「男の子でしょ/お姉ちゃんでしょ」 | 感じてはいけない気持ちがあると学ぶ | (言わない。役割ではなく本人の気持ちを聞く) |
言ってしまったあとでも、「さっきはああ言ったけど、嫌だったよね」と戻れば、それで十分に取り返せます。完璧に対応する必要はまったくありません。
言葉を渡すときの4つのコツ
① 断定せずに、選択肢として並べる
「くやしかったね」と言い切るより、「くやしい? それとも恥ずかしい感じ?」と並べる。当てることが目的ではなく、子どもが自分の中を探すきっかけを作るのが目的です。
② 出てきた言葉を訂正しない
「それは怒ってるんじゃなくて、さびしいんだよ」と大人が上書きしてしまうと、子どもは自分の感覚より大人の判断を信じるようになります。
言葉づかいが多少ずれていても、本人が選んだ言葉をそのまま受け取る。「そっか、怒ってたんだね」と返すだけで、次はもう少し細かく言おうとしてくれます。
③ 顔を見ないで話す
気持ちの話は、向かい合うより並ぶほうが出てきます。車の中、お風呂、寝る前の暗い部屋、帰り道。図書室でも、カウンター越しに向かい合っているときより、隣で本を並べているときのほうが、子どもはよく話してくれます。
目が合わない場面のほうが、言いにくいことは言いやすい——これは大人も同じだと思います。
④ 親が先に、自分の気持ちを言葉にする
子どもは、大人の使う言葉をそのまま吸収します。「気持ちを話していい家だ」と伝わるいちばん早い方法は、親が先に話してみせることです。
- 「今日はちょっと疲れたな。ぐったりした感じ」
- 「あなたががんばってるの見て、お母さんも誇らしかったよ」
- 「あのとき、じつは少し心配してたんだよね」
- 「さっきは言いすぎた。自分でも気まずい」
とくに最後のようなかっこ悪い気持ちを言葉にして見せると、子どもは「失敗した気持ちも言っていいんだ」と受け取ります。ここが伝わると、話す量が変わります。
本の力を借りると、ぐっと早くなる
ここまでは会話の話をしてきましたが、感情語彙を増やすうえで本にしかできないことがひとつあります。
それは、主語を自分にしないまま、気持ちの話ができることです。
「あなたはどう思ったの?」は答えにくくても、「この子、どんな気持ちだったんだろうね」なら答えられます。物語の登場人物を借りて話しているうちに、「◯◯もね、じつはこの前……」と自分の話が出てくる。図書室で、本を挟むと話してくれる子はたくさんいます。
読んだあとに使えるひとことは、この3つで足ります。
「この子、どんな気持ちだったと思う?」
「あなたがその場にいたら、どんな気持ちになってたかな」
「かなしいだけじゃなくて、くやしいとかもあったかな?」

ここでも、感想を言わせようとしないことが大事です。「わかんない」で終わっても構いません。問いを置いておくだけで、子どもの中では考えが動いています。
どんな本を選べばいいかについては、対象によって記事を分けています。本を読むと共感力が育つ理由|読み聞かせでも読書でも育つ仕組みと、おすすめの本12冊に、読み聞かせ向けの絵本7冊と、一人読みが始まったお子さん向けの児童書5冊をまとめています。語彙そのものを本で伸ばしたい方には小学生の語彙力を伸ばす本の記事、読み聞かせと語彙の関係は読み聞かせで語彙力が伸びる理由の記事にまとめました。
「合う本が見つからない」ときの選択肢
とはいえ、その子の今の気持ちに合う本を毎回選ぶのは、正直かなり大変です。私も司書として選書していますが、子ども一人ひとりに合わせるのは時間がかかります。
本選びで止まってしまうくらいなら、選書を任せてしまう手もあります。ヨンデミーを兄弟で使った正直レビューはこちら
気持ちを扱った本は「読ませたい大人」と「読みたい子ども」がずれやすい分野なので、第三者が選んだほうが素直に読んでくれることも多いです。
よくある質問
まとめ:気持ちの言葉は、渡すもの
「嫌だ」しか言わない子は、話す気がないのではなく、手元に「嫌だ」しかないだけです。だから大人がすることは、聞き出すことではなく、言葉を並べて渡すこと。
- 低学年は、体の感覚から入って基本の感情に名前をつける
- 中学年は、友だち関係で生まれる「混ざった気持ち」に名前を渡す
- 渡すときは断定せず、2〜3個並べて選んでもらう
- 出てきた言葉は訂正しない。「ちがう」と言えたら大成功
- 言いにくいことほど、顔を見ないで、並んで話す
「くやしかったんだね」と言ってもらえた経験は、そのまま「あの子も、くやしかったのかな」という想像力の芽になります。自分の気持ちを扱えるようになった子が、そのあとで人の気持ちに手を伸ばせるようになる。順番はいつもこちらです。
特別な教材も、決まった時間も要りません。今日の帰り道に、ひとつだけ言葉を渡してみる。それだけで十分に始まっています。
ことばの力全体をどう育てるかはこのブログの歩き方に、読み聞かせで育つ力の全体像は読み聞かせで育つ11の力の記事にまとめています。あわせてどうぞ。
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