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「もう終わり!」と何度言っても、動画やゲームをやめない——毎日のこのやり取りに、疲れていませんか。
切り替えは、子どもにまかせず大人が作っていいんです。区切りのいいところで、「やめなさい」ではなく「次」に誘う。その「次」のひと言としておすすめしたいのが、「読み聞かせするからおいで」です。
この記事は、小学校低学年〜中学年(1〜4年生)のお子さんがいるご家庭に向けて、研究でわかった「切り替えやすいタイミング」と、学校司書として見てきた子どもたちの姿をもとに書いています。

やめられないのは、意志が弱いからではありません
動画やゲームがやめにくいのには、いくつか共通した仕掛けがあるように思います。
ひとつは、区切りがないことです。動画は終わると次が自動で始まりますし、スクロールすれば新しい投稿が無限に出てきます。本のように「最後のページ」がないので、自分で線を引かないかぎり、終わりが来ません。
もうひとつは、次に何が起こるかわからないことです。おもしろい動画に当たることもあれば、そうでないこともある。ゲームでも、レアなアイテムが出るかどうかは運次第。この「当たるかもしれない」という感覚が、次の一回を引き出しているように見えます。
そして、達成感が短い間隔でやってくること。数分単位でクリアや報酬が返ってくる体験に慣れると、それより時間のかかるものは「退屈」に感じられやすくなります。
これらは偶然そうなっているのではなく、長く使ってもらうために設計されたものです。大人でも抜け出しにくいのですから、子どもが自力で切り上げられなくても不思議はありません。
本を読んでいる子にも、同じことが起きます
切り替えの難しさは、画面に限った話ではありません。
図書室でも、同じことが毎日起きています。休み時間に本を読み始めて夢中になり、時間を意識することを忘れてしまう子がいます。予鈴が鳴っても、その音自体が聞こえていない子もいます。「そろそろ時間だよ」と声をかけると「うん」と返事はするのに、内容がまったく入っていないことも、よくあります。

そして「〇〇さん」と名前を呼ぶと、びっくりした顔をして、急いで教室に戻っていきます。
時間を破りたいわけではないのです。夢中になっていただけです。
つまりこれは、切り替えが上手か下手かという話ではなく、夢中になれば誰にでも起こることなのだと思います。大人でも、おもしろい本を読んでいて約束の時間を忘れた経験はあるのではないでしょうか。
研究でわかった「切り替えやすいとき」
アメリカのワシントン大学の研究チームが、1〜5歳の子どもがいる家庭で「画面をやめるとき」に何が起きているかを調べています(2016年)。27家族への聞き取りと、別の28家族が2週間つけた記録をもとにした研究です。
わかったことは、大きく3つです。
- 動画が1本終わった、ゲームがひと区切りついた、という「区切りのいいところ」だと切り替えやすい
- 親が「あと2分ね」と予告すると、かえって嫌がりやすかった
- アプリやタイマーなど「機械」が終わりを知らせると、親が止めるより受け入れやすかった
3つめについて研究者は、「親に取り上げられる」という要素がなくなると、子どもはずっと受け入れやすくなる、と説明しています。子どもにとってつらいのは、画面が終わることそのものより、「楽しみを取り上げられる」感じのほうなのかもしれません。
対象は幼児なので、小学生にそのまま当てはまるとは限りません。それでも、「いつ」「だれが」終わりを告げるかで切り替えやすさが変わる、というのは家庭でもすぐに使えるヒントです。
出典:University of Washington「Two-minute warnings make kids’ ‘screen time’ tantrums worse」(2016年5月)/Hiniker ほか「Screen Time Tantrums: How Families Manage Screen Media Experiences for Toddlers and Preschoolers」(CHI 2016)
大人がつくる切り替え 3つのコツ
①「区切りのいいところ」で声をかける
途中で止めるより、区切りのいいところのほうが子どもは切り替えやすくなります。終わりを「あと何分」ではなく、「この動画が終わったら」「このステージが終わったら」と区切りで決めるのが近道です。
区切りがわからないときは、子どもに聞いてしまいましょう。「あと何分で切りがつく?」と聞くと、自分で終わりを決めたことになります。キッチンタイマーやアプリのタイマーに終わりを知らせてもらうのも一つの手です。先ほどの研究でも、親が止めるより機械が知らせるほうが受け入れやすいという結果でした。

② 名前を呼んで、こちらに気づかせる
図書室で、予鈴に気づかなかった子が名前を呼ばれてはっと戻っていくのと同じです。
切り替えは子どもにまかせるのではなく、大人が作ってあげてもいいのではないかと思います。「やめなさい」と責めるのではなく、名前を呼んで、こちらに気づかせてあげる。それだけで、子どもはちゃんと動きます。

③「やめて」ではなく「次」に誘う
取り上げる方法には、その場では効くけれど、繰り返すほど関係が削れていくという難しさがあります。子どもにとっては「楽しみを奪われた」という記憶だけが残りやすく、親のほうも毎回消耗します。
一方で「置き換える」は、子どもが自分から画面を離れる形になります。時間はかかりますが、こちらのほうが親子ともにダメージが少なく、結果として続きやすいと感じています。
つい言ってしまう一言の、言いかえ
| つい言ってしまう | 代わりに |
|---|---|
| 「いい加減にやめなさい」 | 「あと何分で切りがつく?」 |
| 「ずっと見てるでしょ」 | 「その動画、どんな話なの?」 |
| 「目が悪くなるよ」 | 「そろそろ目を休ませてあげよう」 |
| 「本を読みなさい」 | 「これ、読んであげようか?」 |
| 「約束したよね」 | 「昨日は切り上げられたね」 |
どれも、「否定」を「提案」や「関心」に置き換えているだけです。「やめさせる」ではなく「こっちに来てもらう」という向きに変えると、ぶつかりにくくなります。
「次」に読み聞かせをおすすめする理由
子どもは、読み聞かせが好きです。
動画やゲームの強い刺激に慣れているはずの今の子どもたちも、読み聞かせが始まるととても楽しみます。読み聞かせが動画やゲームを超えてしまうことも、しばしばあります。
動画を見ている子どもに「読み聞かせするからおいで」と声をかけると、「やったー」と駆けつけてくることさえあります。画面より絵本を選ぶ瞬間は、思っているよりずっと身近にあります。

「その子のための声」だから
画面の刺激は強いけれど、「自分のためだけに向けられたもの」ではありません。動画は誰に対しても同じように再生されます。けれど読み聞かせの声は、その子のために出されている声です。この違いは、思っているより大きいのではないかと感じています。
いいところで止めると、明日が楽しみになる
「今日はここまで」と、いいところで止めるのも一つの手です。次回への期待が残り、翌日の読み聞かせが子どもから催促されることもあります。動画の「次回に続く」と、やっていることは同じです。
うまく読もうとしなくて大丈夫
そして、これがいちばんお伝えしたいことなのですが——うまく読もうとしなくても大丈夫です。
声色を変えられなくても、つっかえても、子どもは楽しんでくれます。上手さが求められている場面ではありません。どうか自信を持って、生活の一部に取り入れてみてください。
「うまく読めない」「続かない」と感じている方は、こちらもどうぞ。

寝る前は、とくに画面より絵本の時間にしておきたいところです。寝る前の読み聞かせについては、こちらの記事でくわしく書いています。
うまくいかないときは
「おいで」と呼んでも来ない
場所を作っても子どもが来ない、ということがあります。その場合は、親のほうが先にそこに座って、一人で読み始めてしまうのが早いです。「おいで」と呼ぶより、楽しそうにしている場所に自然と寄ってくるほうが、子どもは動きやすいようです。
途中で「動画に戻りたい」と言われる
途中でやめても大丈夫です。無理に最後まで聞かせようとすると、読み聞かせのほうが嫌な記憶になってしまいます。短くても「楽しかった」で終われた日を積み重ねるほうが、結果的に続きます。
どの本にするか決まらない
「なんでもいいよ」と言われて選べない、というのはよくあります。そういうときは、2〜3冊に絞ってから選んでもらうと決まりやすくなります。選択肢が多すぎると、大人でも決められません。図書館で借りるなら、多めに借りて、合わなければ途中でやめてよいというルールにしておくと、失敗が怖くなくなります。
毎日は続かない
毎日が難しいときは、「毎日」を目標から外してしまうほうがうまくいくことがあります。週に2〜3回でも、続いていればそれは習慣です。ゼロの日があっても構いません。
画面を悪者にしなくて大丈夫です
画面そのものを悪者にしないことは、意外と大事だと思っています。友達との共通の話題であることも多く、全面的に否定されると、子どもは話してくれなくなります。
前半でお伝えしたとおり、夢中になって切り替えられなくなるのは、本を読んでいる子にも起きることです。画面だけを取り出して問題にする理由は、実はそれほどありません。問題は「画面」ではなく「切り替えのきっかけがないこと」なのだと思います。
必要なのは禁止ではなく、親子で納得できるルールと、大人からの声かけです。毎日のルールを親子でどう作るかは、こちらで詳しく書いています。

画面から離れたあとに読みたい絵本
読んだあとに台所や外へ、そのまま遊びが続いていく絵本を3冊選びました。画面に戻るより楽しいことが、すぐ目の前にあるようにしておくのがねらいです。
📖 『ぐりとぐら』中川李枝子・大村百合子(福音館書店)
野ねずみのぐりとぐらが大きなたまごを見つけ、森の動物みんなでカステラを作って食べる物語。シンプルなストーリーと繰り返しのリズムが心地よい、ロングセラー絵本の代表作です。
「一緒に作る・一緒に食べる」という喜びを絵本を通じて体感できます。読み終わったあと「カステラ作ってみたい!」と子どもが言い出すことも。
ここがこの絵本の特別なところです。絵本の世界が現実の台所につながり、親子で一緒に作って食べるという体験が生まれる——これこそ、スクリーンには絶対にできないことです。「読む→作る→食べる→また読みたくなる」という好循環が、自然なデジタルデトックスにつながっていきます。
📚 関連本:『絵本からうまれたおいしいレシピ 絵本とお菓子の幸せな関係』ぐりとぐらのカステラをはじめ、人気絵本に登場するお菓子や料理を実際に作れるレシピ集。絵本を読んだあとにそのまま台所へ向かえる、読み聞かせの「次の一手」として最高の一冊です。「絵本の中のあれ、本当に作れるんだ!」という発見が、子どもの本への興味をさらに深めてくれます。
📖 『あっ!みーつけたっ!!』くすのきしげのり・大島妙子(光村教育図書)
学校の帰り道、「ぼく」はライオンに見える石を見つけます。「そうや、ええことかんがえた!」——毎日石を拾っては色を塗り、動物に見立てて、自分だけの動物園を作っていく男の子のお話。なぜそこまで一生懸命なのか、その理由が明かされるラストに心が温かくなります。
「足元の石ころが、宝物に見えてくる」——これが、この絵本の最大の贈り物です。読み終わったあと、ぜひ子どもと一緒に外に出てみてください。
💡 絵本のあとにできる「石ころ動物園」遊び
散歩や公園で「動物に見える石」を探す → 家に持ち帰って水で洗う → 絵の具やペンで目や模様を描いて動物に仕上げる → 並べて「自分だけの動物園」を作る
スマホもゲームも要らない、地面を見つめて歩くこの時間こそ、最高のデジタルデトックスです。「これはカエルに見える!」「こっちはゾウ!」と夢中で石を探す子どもの目は、画面の前とはまるで違う輝きを持っています。

📖 『やさいのおなか』きうちかつ(福音館書店)
野菜を輪切りにした断面のシルエットクイズ絵本。「これはなんのやさい?」と問いかける形式で、子どもが自然に参加しながら楽しめます。
「見る・考える・答える」という体験が、受動的なスクリーン視聴とは真逆の「能動的な関わり」を生み出します。正解したときの達成感がゲームにも似ていて、読み聞かせへの抵抗が強い子どもの入口としても最適。台所に連れて行って「本物の断面」を見せる遊びに発展させることもできます。
よくある質問
まとめ|「やめさせる」から「こっちに来てもらう」へ
- やめられないのは意志が弱いからではない。夢中になれば、本を読んでいる子にも同じことが起きる
- 切り替えは子どもにまかせず、大人が作っていい
- 「区切りのいいところ」で声をかける。「あと2分ね」の予告より、区切りやタイマーで
- 名前を呼んで気づかせ、「やめて」ではなく「次」に誘う
- 「次」には読み聞かせ。上手に読めなくても、子どもは来てくれる
画面を取り上げるのは、その場では効いても、繰り返すほど親子ともに消耗していきます。「やめさせる」から「こっちに来てもらう」に切り替える——それがこの記事でお伝えしたかったことです。
うまく読もうとしなくて大丈夫です。今夜、動画を見ているお子さんに「読み聞かせするからおいで」と声をかけてみてください。「やったー」と駆けつけてくるかもしれません。
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