こんな方におすすめの記事
- 小学校低学年〜中学年のお子さんの「読解力」が気になっている方
- 音読はすらすらできるのに、内容を聞くと答えられなくて心配な方
- 読解力のためにドリルを買うべきか迷っている方
- 読み聞かせを続ける意味を、あらためて知りたい方
「うちの子、音読はすらすら読めるのに、内容を聞くとぜんぜん答えられないんです」
先生から聞くことも、ママ友から聞くこともある相談です。そして正直に申し上げると、わが家の次男が、まさにこのタイプでした。
結論:「読める」と「わかる」は、別の力です
音読ができることと、内容がわかることは、まったく別の力です。そして低学年〜中学年は、その2つの差がいちばん大きく開く時期です。
読み聞かせは、この差を埋めるためのいちばん確実な方法です。「文字を読む」という重い作業を親が肩代わりして、「わかる」の練習だけを取り出してさせてあげられるからです。
この記事は小学校低学年〜中学年(1〜4年生)のお子さんがいるご家庭に向けて、学校司書として図書室で見ていること、そしてわが家で実際にやってきたことを中心にお伝えします。
お子さんがすでに一人でどんどん本を読んでいる場合(中学年〜高学年)は、小学生の読解力のつけ方の記事のほうが実践しやすい内容です。
わが家の次男は「音を出しているだけ」でした

次男が低学年のころ、音読の宿題を聞いていて気づいたことがあります。
読めてはいるのです。つっかえもせず、すらすら読む。でも、目の前の文字を音として出しているだけで、内容はまったく頭に入っていませんでした。
「がまくんはどうしたの?」と聞いても、答えられません。
理由ははっきりしていました。スピード感がある方が楽しい。音読は早く終わらせたい。宿題を終わらせることが目的になっていて、内容を理解しようという気持ちがそもそもなかったのです。
これは、責めるような話ではありません。低学年の子にとって、文字を読むことは「文字を音に変える作業」だけで頭の力をかなり使います。音読に力を使い切ってしまうと、意味を考えるための余力が残らないのです。
読む速さで、だいたい見分けがつきます
音読を聞いていると、内容が入っているかどうかは、読む速さにかなり表れます。
| 読み方 | 内容の入り方 | おうちでできる補助 |
|---|---|---|
| 速すぎる | 要注意。音に変えるだけで通り過ぎていることが多い | 「意味がわかるくらいゆっくり読んでみて」と伝える |
| 1文字ずつで、つながりが見えない | 入っていない可能性が高い | 意味のかたまりを読み終えたところで、大人が復唱する |
| ゆっくり読んでいる | わかっていることが多い | そのままで大丈夫。急がせない |
| 1文ごとに立ち止まる | 頭の中で内容を整理している最中 | 待つ。声をかけない |
意外に思われるかもしれませんが、速く読める子より、ゆっくり読んでいる子のほうが、内容はわかっていることが多いです。「すらすら読めている」を安心材料にしないでください。むしろ速すぎるほうが要注意です。
1文字ずつ読んでつながりが見えていない子には、意味のかたまりを読み終えたタイミングで、大人が同じところを読んであげてください。「まあちゃんは魔法の本を読んでいました」——自分で読んだあとに耳からも入ると、意味のかたまりが意識できるようになっていきます。
音読で「点や丸を意識して読みなさい」と指導されるのは、そこに意味の区切れがあるからです。1文ずつ理解しながら読んでいくことが大事で、急ぐ必要はまったくありません。
そもそも「読解力」とは何か
読解力とは、単に文字が読めることではありません。文章の意味を理解し、筆者の意図をつかみ、内容を自分の知識と結びつけながら考える力のことです。
国際学習到達度調査(PISA)では、読解力を「テキストを理解し、評価し、活用する能力」と定義しています。つまり、情報を受け取るだけでなく、それを使って考えられることが求められているのです。
この力は、小学校の間に土台が作られます。だからこそ、家庭でできることが大きな意味を持ちます。
読み聞かせは「わかる練習」だけを取り出せる

耳から聞くときは、「文字を音に変える作業」を親が肩代わりしてあげている状態です。子どもは頭の力のすべてを、意味を理解すること・場面を想像することに使えます。
つまり読み聞かせは、「文字を読む練習」を飛ばして「内容を理解する練習」だけを取り出してさせてあげられる、この時期ならではのトレーニングなのです。
そしてもうひとつ。読み聞かせなら、途中で投げ出されません。自分で読む本は「面白くない」と思った瞬間に閉じられますが、耳で聞いている本は最後まで運べます。読解の練習は、最後まで到達しないと成立しません。結末を知って初めて「あの場面はそういうことだったのか」とつながるからです。この点は語彙の記事でも触れています。
読み聞かせが読解力を育てる5つのメカニズム
① 語彙が「文脈の中で」育つ
語彙の豊かさは、読解力の最も重要な土台のひとつです。言葉を知らなければ、文章の意味はつかめません。
ただし、単語を暗記するだけでは読解には結びつきません。大切なのは、言葉がどんな場面でどんな意味で使われるかを理解すること、つまり「文脈の中で語彙を獲得する」ことです。
絵本や児童書には、話し言葉にはあまり登場しない豊かな表現が詰まっています。読み聞かせで出会う言葉の種類が日常会話より格段に多いことは研究でも示されていて、その数字は読み聞かせで語彙力が伸びる理由で紹介しました。
物語の流れの中で「惜しむ」「誇らしい」「途方に暮れる」といった言葉に出会うことで、子どもはその言葉が持つニュアンスを体感的に理解していきます。くわしくは読み聞かせで語彙力が伸びる理由の記事でお伝えしています。
② 「話の構造」を耳で学ぶ
文章には構造があります。「はじめ・なか・おわり」「原因と結果」「問題と解決」といった組み立て方のパターンです。この構造を理解していることが、文章を読んで内容をつかむ力に直結します。
読み聞かせを繰り返し聞くことで、子どもはこうした物語の構造を無意識に学んでいきます。「次に何が起きそう」という予測を立てながら聞く経験が、文章の流れを追う力を育てるのです。
③ 背景知識が積み重なる
読解力の研究で近年注目されているのが、「背景知識」の重要性です。アメリカの教育研究者・ハーシュ博士は、読解力の差は語彙だけでなく、テーマに関する背景知識の有無によって大きく左右されると指摘しています。
同じ文章を読んでも、その分野の基礎知識がある子とない子では、理解の深さに大きな差が生まれます。読み聞かせは、物語を楽しみながら様々なテーマの知識を積み重ねる場です。
④ 聞く力と集中力が鍛えられる
読解は、目で文字を追いながら同時に内容を処理するという、高度な情報処理作業です。この作業を支えるのが、「聞いて理解する力」と「集中力」です。
耳から話を受け取る経験を積んだ子は、文字を追いながら意味を考えるという二重の作業に耐えられます。土台ができているからです。この仕組みは読み聞かせで「聞く力」と「集中力」が育つ理由でくわしく扱っています(研究の裏づけもそちらに載せました)。
⑤ 読書を「楽しいもの」と感じる動機づけ
どんなに優れた読解スキルがあっても、本を読もうとしない子どもには意味がありません。読解力を育てる最大の前提は、読書そのものが楽しいという感覚です。
読み聞かせは、読書と「安心できる大人とのあたたかい時間」をセットにする体験です。この体験が積み重なると、子どもは本に対してポジティブな感情を持つようになります。
図書室で見ている、読み聞かせをされてきた子の「わかり方」

「読み聞かせをされてきた子は読解力がある」と言われますが、具体的に何が違うのか。図書室で子どもたちを見ていて、はっきり感じることが4つあります。
① 接続詞で、話の展開を先読みしている
読み聞かせをたくさんされている子は、物語の展開の流れが身についています。それがいちばん表れるのが、接続詞の受け取り方です。
- 「そして」とあれば、物語が進んでいくな
- 「さらに」とあれば、何かが付け足されるな
- 「ところが」とあれば、違うことが起こるのだな
こうしたことが、自然とわかっています。物語の展開を前もって受け入れる準備ができているので、話がひっかかりなく進んでいくのです。
② 登場人物の関係を整理するのが上手
誰と誰が友だちで、誰と誰は先生と生徒で——という関係です。
この整理ができていないと、読んでいても途中で迷子になります。誰が誰に何を話しているのかを把握できるかどうかは、物語を読むうえでとても大きな分かれ目です。
③ あらすじが話せる
話の展開を理解しているので、読んだ本のあらすじを人に話せます。
低学年・中学年のうちは、あらすじをほぼ全部話すような話し方になります。これも、それだけで十分すごいことです。高学年になると、要点を整理して話せるようになっていきます。お話に触れてきた量は、そのまま子どもの力になっているのを感じます。
④ 知らない本にも手が伸びる
読み聞かせをしてもらっていると「本は楽しいもの」という土台があるので、本に対する抵抗感が少ないのです。馴染みのない本でも「とりあえず読んでみようかな」と手に取ることができます。
図書室に知っている本が増えていくのも自信になりますし、本がより身近になるという好循環も生まれます。
そしてもうひとつ大切なのが、「自分で読めなかったら、おうちの人に読んでもらう」という選択肢を持っていることです。「本は自分で読むしかない」という状態だと、自分で読めなさそうな本は最初から選ばれません。読み聞かせなら自分で読める以上のものも理解できるのに、それはとても残念なことです。
わが家の読み聞かせ——「エルマーはどうしたんだっけ?」

わが家の読み聞かせは、ずっと同じ形でした。
寝る前、布団の上で、1回に1冊、10分程度。週5日くらい。寝室に行くのが遅くなってしまった日はスキップ。読むのは私です。「もう寝る時間だよ」→歯みがき→寝室で読み聞かせ→「おやすみ」という流れが、いちばん典型的な夜でした。
男の子2人に同時に読むので、同じ側に座るのではなく、向かい合って読むスタイルです。低学年まではどちらもじっと聞いていました。
区切って読むと、要約の練習になります
絵本から児童書の読み聞かせに移行していく時期に、意識してやっていたことがあります。長い本を一気に読まず、区切って何日かに分けて読むことです。
『エルマーのぼうけん』は、まさにこの読み方をしました。次の日、読み始める前にこう聞きます。
「エルマーはどうしたんだっけ?」
ここで大事なのは、テストみたいにならないようにすることです。あたかも私が忘れちゃった、という姿勢で聞きます。すると「こうだよ!」と教えてくれます。
子どもは教えるのが大好きです。「教えて」と言うと答えてくれますし、教えてあげようという気持ちを持ちながら読み聞かせを聞くと、集中しますし、理解もしやすくなります。
前日の内容を思い出して話すことが、そのまま「長い物語を頭の中で保持する力」の練習になります。授業で扱う文章も、中学年から一気に長く複雑になります。その変化を支える、ちょうどいい準備運動です。
3年生を過ぎたころ、大喜利が始まりました
小学3年生を過ぎたころから、2人で内容をちゃかすことが増えました。
「このパターンはこうなるな」「そんなこと起こらないよ」。男の子2人なので、だんだん大喜利状態です。
言い出した言葉自体は、そのままにしておきました。プチ反抗期なのか成長過程なのか、そういうふうに考えだしたんだなと、こちらも発見のように思ったからです。実はこれ、読解力としては悪くない反応でもあります。「このパターンはこうなる」は、話の構造を先読みできている証拠だからです。
ただ、しばらく続けているうちに、話をそのまま受け入れるというよりつっこみ所を探すのが目的になっているように感じてきました。それは読み聞かせの主旨からはそれるなと思い、「お話は静かに聞こうね」と伝えました。
それからは静かに聞いています。もちろん「えっ」とか「そういうことね」といった反応はします。それは、聞けている証拠です。
1年ほど、まったく読めなかった時期があります
正直にお伝えしておきたいことがあります。
司書の仕事を始めて1年くらい、読み聞かせを中断していました。新しい仕事と職場で、私自身がいっぱいいっぱいで余裕がなかったのです。「また明日ね」と言いながら読まずにいたら、いつの間にか時間が経っていました。
読み聞かせや読書が大事だと伝えていきたいと思って始めた仕事なのに、自分の子どもに与えていない。そのことにはっと気づいて、再開しました。
再開は、驚くほどスムーズでした。「今日は読み聞かせするよ」と伝えたら「やったー」と言って、すぐ読み聞かせの時間になりました。
子どもは「今まで読み聞かせをしていなかったのに、なんでまた始めたのだろう」なんて聞きません。考えてもいないと思います。ブランクを気にしているのは、親のほうだけです。
今も読み聞かせは続けています。でも毎日ではなく、週4日くらい。習い事などで寝るのが遅くなる日はスキップしています。5分でも読めるのですが、週4日くらいが長く続けられるちょうどいい塩梅だなと思って、このくらいに落ち着きました。
【学年別】読解力を育てる読み聞かせのポイント

低学年(1〜2年生):絵本で「お話の型」をたくさん体験する
低学年は、物語の基本構造——「はじまり・できごと・解決」——を体で覚える時期です。
- 「問題→解決」がはっきりした絵本を繰り返し読む
- 同じ本を何度も読むのも大歓迎。繰り返すほど、話の流れを先取りして聞けるようになります
- 読み終わったら「どこが好きだった?」の一言だけで十分
この学年は、聞けているかどうかが見ればわかります。聞き方の学年差については読み聞かせで「聞く力」と「集中力」が育つ理由の記事にまとめました。
中学年(3〜4年生):章立ての本で「長い話を追う力」を育てる
中学年になったら、絵本に加えて章のある物語の読み聞かせにステップアップするのがおすすめです。
- 1日1章ずつ、「続きはまた明日」と区切って読む
- 翌日、読み始める前に「昨日どこまで読んだっけ?」と聞く
- 前日の内容を思い出して話すことで、長い物語を頭の中で保持する力が育ちます
この読み方の効果は、翌日すぐには見えません。「昨日どこまで読んだっけ?」に答えられるようになってきたら、長い話を頭の中に置いておく力がついてきた証拠です。答えられない日があっても、責めないであげてください。
ちなみに、わが家で続きものがうまくいったのは小学校に入ってからでした。好きなジャンルは、動物が出てくるものと昔話です。物語の型がはっきりしているものほど、次の展開を追いやすくなります。
読解力を育てる読み聞かせ:3つの実践ポイント

ポイント① 読む前に「どんな話だと思う?」と聞く
表紙を見せながら「どんなお話だと思う?」と聞くだけで、子どもは物語の予測を立て始めます。この「予測する」という行為が、読み聞かせを能動的な体験に変えます。
予測が当たっていなくても大丈夫。「全然違ったね、面白い!」という会話が、子どもの思考を活性化させます。
ポイント② 知らない言葉は、そのまま言い換えない
「惜しむって、どういう意味?」と聞かれたとき、すぐに「もったいないってこと」と言い換えてしまうのはもったいないことです。
「そうだね、大切なものを手放したくないな、という気持ちがあったんだよね。そういう気持ちのことを『惜しむ』って言うんだよ」と、物語の文脈を使って説明してみてください。
説明したあとに、もう一度その文章を読んでみるのがおすすめです。「そういうことか」と腑に落ちる様子が見えます。首をかしげていたら、わかるまで追加で説明します。「?」と立ち止まっているのは、興味がある証拠。腑に落ちると、しっかり身につきます。
ポイント③ 読み終わったあとに「どこが好きだった?」と聞く
感想を求めるのではなく、「好きなところ」を聞くのがポイントです。感想は少し難しく感じる子でも、好きな場面なら答えやすい。
「なんでそこが好きなの?」とさらに聞いてみると、子どもなりの理由が出てきます。この「理由を言葉にする」練習が、文章を分析する力の土台になります。
つい、やってしまいがちなこと

わたし自身が失敗してきたことを、3つ書いておきます。
読んでいる途中で「今のところ、わかった?」と聞いてしまう
これは、やってしまいました。
返ってきたのは「わかったよ!」という、少しイライラした声でした。話の流れも止めてしまい、余計なことを言ったなと思いました。
それ以来、子どもを信頼して、質問してこなければそのまま読むようにしています。理解できているかを確かめたい気持ちはわかりますが、確かめるのは読み終わったあとで十分です。
学年に合わない長い本を読んでしまう
絵本でも、読み聞かせをすると20分を超えるものがあります。内容がいいから読んであげたいと思って選んだのに、途中で「まだー」と飽きられてしまいました。
最初から最後まで面白がれる長さがいい——これは、失敗して学んだことです。いい本かどうかより、その子がいま最後まで楽しめる長さかどうかで選んでください。
疲れた日にスキップしようとする
疲れすぎて今日はやめようと思ったら、「読んでー!!」とごねられて機嫌が悪くなり、結果的に逆に大変になってしまったことがあります。
短い本を5分、ただ読めばよかったなと思いました。読み聞かせをやめる労力のほうが、読む労力より大きい日があります。
読解力を育てる絵本・本のおすすめ
図書室で実際に読んで、子どもたちがしっかり物語を追えていた本をご紹介します。
低学年向け
『王さまと九人のきょうだい』(君島久子 訳/赤羽末吉 絵・岩波書店)
読み聞かせとしては長く、10分を超えます。それでも低学年が最後まで楽しめる本です。そっくりのきょうだいがそれぞれの特徴を使って、ピンチを次々と乗り越えていく。この「次はどうなる」の連続が、話の流れを追う力そのものを使わせてくれます。ちょっとありえない特徴なのも、楽しめるところです。
『かいじゅうたちのいるところ』(モーリス・センダック 作/じんぐうてるお 訳・冨山房)
不思議な世界に、最初からぐっと惹きつけられます。まず、絵。ふだん可愛いイラストに慣れている子たちには、なじみのない色合いやタッチです。そして描かれるのはかいじゅう。どんなかいじゅうかわからないので、ドキドキしながら物語に入っていきます。
中盤に、文字のないページがあります。子どもたちはじーっと絵を見ます。そのとき、教室がシーンと静寂につつまれます。物語に没入している証拠です。文字がなくても場面を読み取っている——これ以上ない、読解の練習です。
中学年向け
『エルマーのぼうけん』(ルース・スタイルス・ガネット 作/わたなべしげお 訳・福音館書店)
章ごとに区切って読める、読み聞かせにちょうどいい長さの物語です。わが家でも「昨日どこまで読んだっけ?」をやっていたのがこの本でした。1日1章、続きを翌日に持ち越す経験ができます。
『スーホの白い馬』(大塚勇三 再話/赤羽末吉 絵・福音館書店)
教科書にも載っているので、すじを知っている子が多い本です。読解の練習としては、それがむしろ好都合です。
次に何が起きるかを追う負担がないぶん、「なぜそうなったのか」を考える余裕が生まれます。すじを知っている本をもう一度読むのは、読み飛ばしていた部分に気づく練習になります。
『100万回生きたねこ』(佐野洋子 作・講談社)
絵本の存在は知っているけれど、内容は知らない子が多い本です。前半は笑いや苦笑いが出て声が出る場面もありますが、後半からはじっと聞き入ります。
こちらはただ読むだけ。でも、お話の力で子どもたちの感情が揺さぶられていくのがわかります。読み聞かせのあとに、深い沈黙が生まれる絵本です。名作は読み手の演出がいらず、本の力だけで人を動かしてきます。
逆に、読解の負荷が高すぎる本もあります

「いい本なのに、なぜか子どもが乗らなかった」という経験も、正直にお伝えしておきます。読解力という点で、参考になると思うからです。
落語絵本は、低学年には難しい
『まんじゅうこわい』『めぐろのさんま』『ときそば』などの落語絵本(川端誠 作・クレヨンハウス)です。
落語は、話のからくりがわかって楽しめるものです。しかも、その答えはきちんとは説明されません。聞き漏らさず聞いていないと大事なところがわからず、よくわからないまま、面白みがわからないまま終わってしまいます。
低学年に読み聞かせをすると、よくわからない子が多くいます。何が面白いのかわからないのですよね。聞く集中力と想像力が育ってからだと楽しめます。高学年だと、しっかり楽しめます。
裏を返せば、落語絵本を楽しめるかどうかは、読解力がどこまで育っているかのひとつの目安になります。
絵のない読み聞かせは、低学年には負荷が高い
絵本を使わずに昔話を読み聞かせたことがあるのですが、これも低学年には難しかったです。
読み聞かせだけだと、言葉の情報だけでお話を理解する必要があります。絵の補助がないので、話を見失う子が出てきます。
読み聞かせをする場合は、聞くだけで話の内容がわかるものを、しっかり選ぶ必要があります。絵があるかないかで、子どもに求められる読解の負荷はまったく変わります。低学年のうちは、絵という手がかりを取り上げないほうが安全です。
ちなみに、同じ昔話でも本によって言葉づかいや長さがまるで違います。語彙という観点での選び方は読み聞かせで語彙力が伸びる理由の記事にまとめました。
よくある質問
まとめ:読み聞かせは「わかる練習」の時間
この記事でお伝えしたかったことを、もう一度まとめます。
- 音読ができることと、内容がわかることは別の力。すらすら読めているからと安心しないでください
- 読む速さで、だいたい見分けがつきます。速すぎる子は要注意、ゆっくりの子はわかっていることが多い
- 読み聞かせは、「文字を読む」作業を親が肩代わりして「わかる」の練習だけを取り出せる方法
- 読み聞かせをされてきた子は、接続詞で展開を先読みし、登場人物の関係を整理でき、あらすじを話せます
- 長い本は区切って読み、翌日「どうしたんだっけ?」と聞く。教える気持ちで聞くと、集中も理解も上がります
- 読めない日があっても大丈夫。ブランクを気にしているのは親のほうだけです
低学年〜中学年は、「読める」と「わかる」の段差がいちばん大きい時期です。読み聞かせは、その段差を埋める「わかる練習」を、毎日10分で届けられる方法です。
今夜、一冊だけ。そこから始めてみてください。
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