この記事にはアフィリエイトリンクが含まれています。紹介している商品・サービスは、私自身が良いと思ったものをお伝えしています。
こんな方におすすめの記事
- 子どもに「ネットで調べればいいじゃん」「なんで本を読まなきゃいけないの?」と言われた
- 本を読む意味を、子どもにわかる言葉で伝えたい
- 調べ学習やAIとの付き合い方を、家庭でどうすればいいか迷っている
- ネットやAIと読書のちがい、読書でしか育たない力を知りたい
「ネットで調べればいいじゃん」と言われたら、学校司書としておすすめしたい答えは、難しいことは言わずに「本のほうが、いろいろ見られて楽しいから」です。子ども自身もわかっていることなので、反発されることはまずありません。「まあ、そうだね」と受け入れてくれます。
本を読む意味をひとことで言うなら、いろいろな世界や人と出会えるから。本は、出会いをくれる道具です。ネットが悪いわけではありません。この記事の前半では、学校司書として調べ学習で見てきたネットと本のちがいと、家庭でのネット・AIとの付き合い方を、後半では、本を「読む」ことでしか育たない力を紹介します。
本には「探していなかったもの」との出会いがある

たとえば、道ばたの花の名前が知りたいとき。今は写真を撮って検索すれば、すぐに名前がわかります。でも図鑑を開けば、その花だけでなく、ほかの花も目に入ります。どこに咲くのか、どんな実がなるのか、仲間の花はどれか。関係することに、たくさん出会えます。
この、探していたものとは別に、思いがけないものに偶然出会うことを「セレンディピティ」と言います。この出会いこそ、本の強みです。子どもにとって、出会いや幅広い経験は大切です。それを届けてくれるのが本なのです。
調べ学習なら、ネットより本のほうが「ラク」
意外と気づかれていないのが、小学生にとっては、ネットより本のほうが便利だということです。「ネットでいいじゃん」という気持ちは、たいてい「面倒くさい」から来ています。興味がないことや、学校の課題で調べなければいけないときほど、この気持ちは大きくなります。でも、課題のための調べものこそ、本が向いています。
「豆腐はどうやってできるの?」を調べると
ネットで「豆腐 作り方」と調べると、出てくるのはレシピばかりです。家で作るための情報なので、「大豆とにがりを用意します」から話が始まります。
でも小学生が知りたいのは、材料はもちろん、大豆って何? にがりって何? スーパーの豆腐は、どこで、誰が、どうやって作っているの?ということです。これをネットで調べようとすると、「大豆とは」「にがりとは」と1つずつ調べて、たくさんの情報を自分でまとめなければなりません。
小学生向けに書かれた児童書なら、それが全部載っています。写真があり、作る過程がていねいに書かれていて、漢字にはふりがながついているので、どの学年でも読めます。小学生が調べるために作られた本なので、これ以上のものはありません。「面倒くさい」と思うなら、本のほうが効率がいいくらいです。
ネットは便利ですが、情報がたくさんありすぎるうえに、大人向けの情報が上に出てきます。ふりがなもないので、読めないこともあります。大人になるにつれてネットの便利さは増していきますが、小学生のうちは、本のほうがまとめて理解しやすいと思います。
図書室で見る、本で調べた子とネットで調べた子のちがい

調べ学習では、本で調べた子のほうが、内容がまとまっています。小学生向けの調べ学習の本は、小学生に必要なことが、最初からわかりやすくまとめられているからです。ネットで調べると情報は多いのですが、その中から必要なものを拾い上げて、自分でまとめなければなりません。これは、小学生には難しい作業です。
「ありがとうをフランス語で言うと?」のように、ピンポイントで知りたいことはネットが便利です。でも「フランスの地理や暮らし」のように、まとめて知りたいことは本が便利です。私自身、あまり知らない分野を調べるときは、まず児童書を読みます。基礎をまとめて知るのに、児童書は最適です。
本には「寄り道」がある
豆腐の作り方を調べていると、みそも、しょうゆも、枝豆も、もとは大豆だったことに出会えます。児童書には「実は」「ちょっと寄り道」のようなコラムが入っていることもあります。知ったことを、さらに広げる工夫がされているのが児童書です。
学校司書として伝えている使い分け
調べ学習のときは、こう伝えています。「まずは本を見てみましょう。全体がわかります。そこで、もっとここを知りたいと思ったことがあれば、ネットで調べていきましょう。」どちらが悪いということではありません。順番の話です。
ネットの情報は、正しいとは限りません。そのことは、調べ学習の最初に全体へ説明しています。「ネットに書いてあったから」は、根拠になりません。
「知る」と「身につく」はちがう

疑問に思ったことも、算数や社会の答えも、ネットで調べればすぐにわかります。すぐわかるのは便利です。でも、「知る」と「身につく」はちがいます。
「知る」は入り口です。知ったことを自分の知識や力にするには、考えること、くり返すこと、深く掘ることが欠かせません。疑問について自分で考えてみる時間。本や辞書のページをめくりながら答えにたどり着く時間。じっくり読む時間。自分の手でノートに書く時間(コピペなら時間はかかりません)。その疑問に使った時間こそが、身につけるために必要なのに、ネットで調べるとその時間がなくなってしまいます。
時間がかからないことは、タイパがよくて便利です。でも、身につきません。小学生には好奇心も記憶力もあります。ふれた情報をただ流してしまうのは、もったいないことです。これからを生きていく糧として、身につけていってほしいと思っています。
反対に、身につけなくていいことは、ネットでいいのです。今日の天気や、博物館の開館時間など、考える必要がないことにはネットが向いています。
ネット・AIとの付き合い方——「考えてから調べよう」
出かけるときの地図、電車の乗り換え、料金など、暮らしに関わることはネットが便利です。保存したり共有したりできるのも強みです。こうしたことは、子どもにネットで調べてもらってかまいません。
それ以外のことは、「考えてから調べよう」と伝えてください。「どういうことだろうね」「こういうことかな」と考える時間のほうが、答えを知るより大切だからです。答えがすべてではありません。想像すること、思いやること、待つこと。そういうことも含めて、育っていってほしいと願っています。
何でも「タイパがいい」ほうが正しいと思わせてくる時代です。読書は、コスパやタイパとはいちばん遠いところにあるものです。でも、そうではないと抗っていく感覚を、学校司書として大事にしたいと思っています。大事にしていないと、忘れてしまいそうになることだからです。自分で注意を向けて考える力については集中力がない小学生|「集中しなさい」が効かない理由と、家で集中できる子にする方法にも書きました。
宿題や読書感想文に、AIを使わせていい?
ピンポイントで何かを調べるだけなら、かまいません。学校司書としておすすめするのは、そこまでです。とくに、読書感想文や運動会の感想のように、自分の気持ちを書くものには使わないでください。
感想は、仕上がればいいものではありません。自分に起こった出来事や気持ちを感じて、言葉にしていく作業です。自分の気持ちに向き合う時間が大切なのです。時間はかかります。でも、それは消してよい時間ではありません。自分の気持ちと向き合うことが大事だとは、誰も教えてくれません。けれど、とても大事な時間です。
わが家で『窓をひろげて考えよう』(下村健一 著/かもがわ出版)を読んだあと、子どもに変化がありました。それまでは、少しでも知っている情報が流れると、「それ知ってる。こういうことでしょ」と得意げに話すことがよくありました。
それが、すぐに「それ知ってる!」と言わなくなったのです。ちがう情報かもしれない、どういうことだろう、と考える慎重さが身についたように見えます。情報に対してだけでなく、人の話の聞き方も変わりました。前は「はいはい、わかった」と話を切ろうとすることもありましたが、最後まで聞けるようになりました。自分が知っていることがすべてではない、という感覚は、とても大切だと思います。
ニュースの報じ方に子どもが気づいた話は多様性を考える絵本9冊|小学生と読みたい本と、子どもが「あの子へん」と言ったときの話し方に書いています。
ここからは「読むとき」の話

ここまでは、何かを「調べる」ときの話でした。ここからは、本を「読む」ときの話です。調べものはネットでもできても、物語や本をじっくり読む経験でしか育たない力があります。ネット・AI・読書のちがいから順に整理します。
ネット・AI・読書——それぞれの特徴を正直に整理する
まず、どれが「優れている」かではなく、それぞれが何が得意で、何が苦手かを正直に見ていきましょう。
ネット検索の特徴
| 得意なこと | 苦手なこと・注意点 |
|---|---|
| 最新の情報に即座にアクセスできる | 情報の正確さにばらつきがある(誰でも発信できるため) |
| 気になった言葉をすぐに調べられる | 「知りたいこと」しか出てこないため、知識に偏りが生まれやすい |
| 幅広いジャンルの情報を横断的に集められる | 断片的な情報が多く、物事の「背景」「文脈」がわかりにくい |
| 無料で大量の情報にアクセスできる | 目先の情報に流されやすく、深く考え続けにくい |
AIの特徴
| 得意なこと | 苦手なこと・注意点 |
|---|---|
| 自然な言葉で質問すると、丁寧な要約・説明を返してくれる | 内容が正しいかどうかは自分で確かめる必要がある |
| 大量の情報を処理して、まとめてくれる | 独自の視点や、深く考え抜いた意見を持てるわけではない |
| 文章を書いたり、翻訳したりするサポートが得意 | AIを使いこなすには、人間側の読解力・思考力が必要 |
| 決まった形の作業を速く・正確にこなせる | どう質問するか(プロンプト)によって結果が大きく変わる |
読書の特徴
| 得意なこと | 苦手なこと・注意点 |
|---|---|
| 一つのテーマを時間をかけて深く理解できる | 最新情報には弱い(出版までに時間がかかる) |
| 著者の思考プロセスごと、まとまった「考え方」が手に入る | 特定の知識をピンポイントに調べるには効率が悪い |
| 知らなかった世界・価値観・感情に出会える | 続けるには習慣と環境が必要 |
| 語彙・表現力・想像力・集中力が育ちやすい | |
| 穏やかに没頭でき、メンタルが安定しやすい |
3つを比べてみると……
| ネット検索 | AI | 読書 | |
|---|---|---|---|
| 情報の速さ | ◎ | ◎ | △ |
| 情報の正確さ | △〜○ | △(要確認) | ○ |
| 深さ・文脈 | △ | △〜○ | ◎ |
| 思考力を育てる | △ | △ | ◎ |
| 語彙・表現力 | △ | △ | ◎ |
| 最新情報への対応 | ◎ | ○ | △ |
| コスト | ◎ | ○ | △〜○ |
「速さ・手軽さ」ではネットやAIが圧倒的に優れています。 では、読書の「◎」はどこにあるか——それが「深さ」「思考力」「語彙・表現力」です。
ここに、今の時代でも読書が必要な理由があります。
「流し読み・拾い読み」と「精読」——ここに大きな違いがある
ネットにも文字情報はたくさんあります。スマートフォンで毎日大量の文章を読んでいるお子さんは多い。では、それと読書は何が違うのでしょうか。
その答えが、「読み方」の違いです。
ネットの読み方は「流し読み・拾い読み」
ネット上の文字情報の読み方は、もっぱら流し読みと拾い読みです。
これはネットを使う目的を考えると自然なことです。私たちがネット検索をするとき、「このことを知りたい」とおおよそわかっていて、いわば知識の欠落部分を埋める断片を求めているに過ぎません。目当ての情報が見つかれば、あとは読み飛ばす。SNSやコミュニケーションツールでも、端から丹念に読むという作業は普通必要とされません。
流し読み・拾い読みで事足りるのは、そういう使い方に最適化されているからです。
本の読み方は「精読」——一語一語をたどる読み方
それに対して、ある程度の長さのある本を読もうとしたら、一つ一つの言葉を丹念にたどって、情報を整理し、それをもとに想像力を働かせなければなりません。
これを「精読」と言います。
流し読み・拾い読みと精読とでは、頭の中で起こることがまるで違います。
精読では、言葉を一つひとつ受け取りながら、「どんな場所なのか」「どんな人物なのか」「なぜそうなったのか」を思考力で整理し、それを自分の中に映像として立ち上げていきます。この一連の作業が、思考力・想像力・記憶力を同時に鍛えるのです。
「映像」は想像力を必要としない
アニメや動画は主に映像の連なりです。映像は勝手に展開していってくれるので、思考力を駆使しなくてもおおよそのことはわかります。
一方、文字で書かれた本は違います。文字の情報を拾い集め、思考力で整理し、想像力を働かせるところまで進まないと、物語を楽しむことができません。
さし絵のある本でも、その絵を立体化させ、動かし、生命を吹き込み、描かれていない場面へも広げていくのは、読み手の想像力の働きです。
これが、読書が映像コンテンツとは根本的に違う理由です。
「読むのが大変」には理由がある——精読のプロセスを知っておこう
「うちの子、本を読もうとしない」「読み始めてもすぐやめてしまう」——そういうお悩みをよく聞きます。
でも実は、読み始めが辛いのは読書に慣れた大人でも同じです。なぜかというと、読み始めは情報整理に追われているからです。
新しい本を読み始めると、どんな場所なのか、どんな人物なのか、という情報がどんどん押し寄せてきます。想像力の土台がまだできていない段階では、情報整理だけで精一杯になってしまいます。
でも、情報整理がある程度進んで「どんな世界なのか」がつかめてくると、状況が変わります。
物語の出来事が、自分自身の体験の記憶に似たものになっていき、新しく加わってくる情報がずっと整理しやすくなる。読むのが面白くなってくれば、思考力を使う情報整理も不思議なくらい楽になって、どんどん読み進められるようになります。
大切なのは、「混乱したら立ち止まって考えたり、前に戻って確認したりしていい」と知っておくことです。映像と違って、本は自分のペースで向き合えます。
「調べる力」と「考える力」は、どう違うのか
ネット検索もAIも、「知りたいことを調べる力」を補ってくれます。でも「自分で考える力」は、自分で育てるしかない。
読書は、この「考える力」を育てるのにとても向いています。
読書では「著者の思考プロセス」ごと受け取れる
読書で得られるのは「結論」だけでなく、「なぜそうなるのか」というプロセスです。
ネットで「読書のメリット」と検索すると、箇条書きで10個くらいの答えが出てきます。でも本を読むと、なぜそう言えるのか、どんな経験や背景からそう考えるのか——そのプロセスごと受け取ることができます。
「なぜ?」を理解することが、本当の思考力の土台になります。
AIを使いこなすためにも、読書で育つ力が必要
少し驚くかもしれませんが、AIを上手に使いこなすためにも、人間側の読解力・語彙力・思考力が欠かせません。
- AIが返してくれた文章が正しいかどうかを判断する
- AIへの質問をうまく組み立てる
- AIが出した答えの「意味」を読み解いて活用する
これらはすべて、人間側の言葉の力があってこそできることです。
国立情報学研究所の研究でも、AI時代においてこそ人間の「読解力」が重要になることが指摘されています。AIが出してくれた答えを正しく評価し、活用するためには、まず人間が「何を求めているか」を言語化できなければなりません。
その読解力を家庭でどう育てるかについては、小学生の読解力の鍛え方|「読解力がない?」のサインと家庭でできること・おすすめドリル6選でくわしくお伝えしています。
子どもにとって「読書でしか育ちにくい力」とは
精読を重ねることで、具体的にどんな力が育つのでしょうか。
① 思考力・情報整理する力
本を読む経験は、「情報を受け取って、整理して、理解する」という一連の思考の流れを繰り返し鍛えます。
ネット上の短い断片情報を拾い集めるのとは違い、まとまった文章を精読することで、論理の流れを追う力・複数の情報を結びつける力が育ちます。これは学校の全教科の土台になる力です。
② 想像力・共感力
物語を精読する経験が、自分とは違う誰かの気持ちや感覚を「内側から」想像する力を育てます。
描写が深くなるにつれて、物音が聞こえ、匂いが感じられ、空気感まで味わえるようになっていきます。主人公の複雑な心情が、まるで自分自身の思いのように心にのしかかる——そういう体験を重ねることが、共感力の土台をつくります。
これは映像コンテンツでは受け取れるものの、自分で想像力を使って作り出す体験ではありません。
③ 語彙力・表現力
語彙が豊かになると、自分の気持ちを正確に言葉にする力が育ちます。
日常の会話やネットの文章で使われる語彙には限りがあります。本の中には、日常ではなかなか出会えない言葉や表現が豊富に含まれています。
「なんかイヤ」「むかつく」だけでなく、「悔しい」「情けない」「やるせない」——感情を細かく言語化できるようになると、自分を理解する力、相手に伝える力、そして感情を整える力も育っていきます。
④ 記憶力
読み進めながら「それまでのお話」を記憶していられるのは、想像力が情報を自分の体験記憶のようなものに変換してくれているからです。
自分自身の印象的な体験は、努力しなくても覚えていられます。物語の出来事も、想像力が働き出せばそれと似た記憶として残ります。精読を重ねることで、記憶力そのものが鍛えられていきます。
⑤ 矛盾や不自然さに「気づく力」
これは見落とされやすいのですが、とても大切な力です。
よく鍛えられた想像力は、矛盾があるとつまずきます。 そしてそのつまずきが、「おかしいぞ」というサインになります。
映像はその映像が存在しているだけで現実感を与えるため、矛盾や不自然さを含んでいてもそのまま受け入れてしまいやすい。でも精読で鍛えられた想像力と思考力があれば、情報の矛盾やごまかしに気づける。
AI時代に必要な「情報を見極める力」の根っこには、この力があります。
⑥ 穏やかな没頭——気持ちが荒れずに日常に戻れる
これは、読書ならではの大切な特徴です。
ゲームも動画も読書も、没頭するという点では同じです。ハラハラして、ドキドキして、怖くなって、笑って。続きが気になって、時間を忘れてしまう。その感覚はどれも変わりません。
でも、没頭の「質」が違います。
ゲームや動画は、興奮させるように設計されています。対戦ゲームでうまくいかないとき、本気で怒りを感じることがある。ボスが倒せない、ミスが続く——そんなとき、思わず乱暴な言葉が出てしまう。他のことは二の次になって、「やめなさい」の声かけがケンカのきっかけになることも、多くのご家庭で経験されていると思います。
これはお子さんの性格の問題ではありません。ゲームや動画には、脳の興奮を高める仕組みが組み込まれているからです。
読書は違います。
冒険のようなスリリングな場面でも、手に汗を握るような緊張感があっても——本を読んでいるとき、気持ちが荒れることはありません。穏やかに集中し、本を閉じたあと、穏やかに日常に戻れる。 これが、読書という没頭の特徴です。
興奮したままで終わるゲームや動画と違い、読書は心を整えながら楽しめる時間になります。思考力や語彙力を育てながら、同時に心も穏やかにしてくれる——これは、読書だけが持っているとても大きな利点です。
「本じゃなくてネットで読んでもいいじゃん」という問いに答えるなら
ネット上にも、質の高い文章はたくさんあります。本当のことを言えば、「本か、ネットか」という二択ではなく、どちらも上手に使い分けることが大切です。
ただ、ネットの文章と本の文章には「向かい方の違い」があります。
ネットで何かを読むとき、私たちは無意識のうちに「パパッと次へ」という向き合い方をしています。より面白そうなものへ、視線が流れていく。これは「流し読み・拾い読み」という読み方です。
一方、本を読むときは、始まりから終わりまで、ひとりの著者の言葉を一語一語たどっていきます。この精読という経験こそが、思考力・想像力・語彙力を育てるのです。
AI時代だからこそ「ことばの力」が子どもの武器になる
少し未来のことを考えてみましょう。
今、AIはどんどん進化しています。単純な作業はAIが代わりにやってくれる時代です。では、AIには何ができないのでしょうか。
- 自分の経験をもとに、独自の視点で考えること
- 複雑な感情を言語化して、相手に伝えること
- 文脈を読んで、場の空気に合った言葉を選ぶこと
- 情報の矛盾や不自然さに気づき、正しく見極めること
- 正解のない問いに、自分なりの答えを出し続けること
これらはすべて、「ことばの力」「考える力」「想像力」が根っこにあります。そしてこの力は、子ども時代の読書——とりわけ精読の経験が大きく育てます。
「どうせAIがやってくれる」ではなく、「AIと一緒に考え、AIを使いこなす人間になる」——そのための基礎体力が、読書で育つのです。
「難しい本じゃなくていい」——まず読む楽しさから
ここで、一つ大切なことをお伝えします。
読書の力を育てるために、「難しい本」や「教育的な本」を読ませる必要はありません。
大好きなキャラクターが出てくるマンガ原作の小説でも、図鑑でも——「一語一語たどって、想像する」という経験そのものが力になります。
読み始めは大変に感じても、少しずつ想像力の土台ができてくれば、読むのが楽しくなってきます。まずは「読む楽しさ」を知ること。好きな本に出会うこと。それが読書習慣の、すべての出発点です。
読書は「勉強」ではなく、「楽しみ」として体験させてあげることが、長い目で見てもっとも大切なことだと私は思っています。
タブレットや電子書籍で読むのは「読書」?

学校司書としては、紙の本をおすすめします。読書は「体験」だからです。
本の重み、本の厚み、ページをめくる感覚、本のにおい、その本が置いてあった場所、手ざわり、何度も読んでよれていく過程。汚れてしまったことさえ、体験です。中身を知ればいいわけではなく、文字さえあればいいわけでもありません。
とくに小学生のうちは、本の総合的な体験を大事にしてほしいと思っています。その体験が、子どもの中に積み重なっていくことに価値があります。スマホやタブレットで見るだけでは得られない体験が、本にはあります。タブレット学習と読書の両立についてはチャレンジタッチで読書は減る?学校司書ママが両立できる理由を解説にまとめています。
研究でも、紙の本の良さは示されています。紙と画面で読んだときの理解を比べた54件の研究(約17万人)をまとめた分析では、紙で読んだほうが内容の理解がやや高いという結果でした(Delgado ほか、2018年)。差は大きくはありませんが、とくに説明的な文章や、時間に追われて読むときに差が出やすいとされています。
もうひとつ、電子書籍は同じ端末で動画やゲームができることも多く、「ちょっとだけ」と気が散りやすくなります。紙の本は、読む以外のことができません。それだけで、集中しやすい環境になります。
「親が本を読まないから…」と心配な方へ
親が読書家でないと子どもは読まない、ということはありません。図書室には、家に本がほとんどないのに大の読書好きという子もいます。大事なのは、読む姿を見せることより、本が目に入る場所にあることです。図書館で借りた本をリビングのテーブルに置いておく、それだけで手に取る子はいます。読書の全体像は本を読む子と読まない子、何がちがう?|学校司書が図書室で見ている読書の効果にまとめています。
わが家では、置き場所を本の種類で分けています。図書館で借りた本はリビングのソファのそばの箱に、気に入って買った本は子どもの横の本棚に、絵本はベッドのそばに。置いてある場所が、そのまま「いつ読む本か」になっています。本棚を1か所にまとめるより、生活の動線に散らしておくほうが、手に取る回数は増えるように感じています。
『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(新井紀子 著/東洋経済新報社)
国立情報学研究所の研究者が、AIにできることとできないこと、そして中高生の読解力の調査結果を書いた本です。「なぜ今、読む力なのか」を、親が納得するための1冊です。
『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン 著/新潮新書)
スウェーデンの精神科医が、スマートフォンが集中力や心に与える影響を書いた本です。子どもにタブレットやスマホを渡す前に、親が一度読んでおくと、ルールの考え方が変わります。
本選びに迷ったら:ヨンデミーという方法
「出会い」が本の強みでも、その子がおもしろいと思える本に出会い続けるのは簡単ではありません。ヨンデミーは、AIがその子の読書記録をもとに本を提案してくれるオンラインの読書習い事です。自分では手に取らないジャンルの本との出会いもあります。わが家で兄弟で使った感想は【小5・小3の兄弟で1年】ヨンデミーの口コミ・評判|本が苦手な次男の変化と、一度やめた長男が戻った理由にまとめています。
よくある質問
まとめ
- 「ネットでいいじゃん」には「本のほうが、いろいろ見られて楽しいから」で十分
- 本を読む意味は、いろいろな世界や人と出会えること。探していなかったものに出会えるのが本の強み
- 調べ学習は、小学生向けの児童書のほうがまとまっていて「ラク」。まず本で全体、気になったところをネットで
- 「知る」と「身につく」はちがう。考える時間、ページをめくる時間が、身につける力になる
- 暮らしの実用はネット、それ以外は「考えてから調べる」。読書感想文など気持ちを書くものにAIは使わない
- 「ネットに書いてあったから」は根拠にならない
- 読むときは、ネットの「流し読み・拾い読み」と本の「精読」はまったく別の体験。読み始めが大変なのは、情報の整理で手いっぱいだから
- 精読が育てるのは、思考力・想像力・語彙力・記憶力、矛盾に気づく力、穏やかな没頭。AI時代こそ、ことばの力が子どもの武器になる
- 小学生のうちは紙の本を。重さ、めくる感覚、よれていく過程まで、読書は体験
次に「ネットで調べればいいじゃん」と言われたら、図鑑を1冊、一緒に開いてみてください。
あわせて読みたい







コメント