音読の宿題は、毎日あります。土日もあります。子どもは喜んでやりません。毎回こちらが働きかけて、やらせる状態です。
結論から言うと、音読の宿題には意味があります。1日5分、お子さんにつきあってあげてください。学校司書の立場から言えば、音読を毎日することはとても大切です。そのうえで、毎日が大変なのも、よくわかります。
学校司書として子どもたちの読む姿を見てきて、家では小1から小6まで音読カードにサインをしてきました。意味があると言い切れる理由と、少しでも楽につきあうための型、そして「ここは見ておいてほしい」というサインをお伝えします。
音読の宿題に意味はあるの? 理由は2つあります
音読は「声に出して読む練習」だと思われがちですが、ねらいはもう少し先にあります。

① 文章への感度が上がる
音読で読むのは、授業で扱った教科書の文章です。すでに知っている文章をくり返し読むことで、文の組み立てや言葉のまとまりに慣れていきます。知らない文章を1回読むより、知っている文章を何回も読むほうが、文章そのものへの感度は上がります。
小学校学習指導要領(平成29年告示)の国語でも、音読は学年ごとに求められることが変わっていきます。
| 学年 | 音読で求められること |
|---|---|
| 1・2年 | 語のまとまりや言葉の響きなどに気を付けて音読する |
| 3・4年 | 文章全体の構成や内容の大体を意識しながら音読する |
| 5・6年 | 音読に加えて、朗読(自分の思いや考えが伝わる読み方)も扱う |
低学年は「言葉のかたまりで読めること」、中学年からは「意味をつかんで読めること」。同じ音読という宿題でも、学年が上がるほど、読解に近いことを求められています。だから高学年まで残るのです。読解力そのものの育て方は小学生の読解力の鍛え方|「読解力がない?」のサインと家庭でできること・おすすめドリル6選にまとめています。
② 読みのつまずきに、早く気づける
こちらは見落とされがちですが、とても大事な視点です。
小学生の毎日には、長い文章を声に出して読む場面がほとんどありません。音読の宿題は、子どもが読んでいるところを大人が耳で確かめられる、数少ない時間です。
読むことに困難をかかえている子は、一定数います。会話は普通にできるので、家でも学校でも気づかれにくいのですが、文章題の意味が取れない、プリントの説明を読み切れない、読書の時間が退屈になる、といった小さな困りごとが先に出ます。音読は、その手前で気づける場になります。具体的なサインはこの記事の後半にまとめました。
毎日きちんと、とはいかない日もあります
正直に書きます。わたしも、サボることがあります。

音読カードは、平日だけでなく土日も読むように作られています。土曜も日曜も音読をさせるのは、面倒に感じることが多々あります。金曜日の夜に1回やってもらって、土日の分もサインをしてしまうこと、あります。子どもが寝たあとに「やっていない」と気づいて、そのままサインしてしまうこともあります。
翌朝に持ち越せばいいのでしょうが、朝はバタバタで音読させるのも大変ですし、音読カードの入れ忘れが出るかもしれない。夜のうちにランドセルへ入れてしまいたい、という気持ちもあります。
先生が見ているのは「やったかどうか」
わが家の音読カードに書く欄は、日付・国語の教科書の読む範囲・保護者のサインだけでした。読み方の採点欄はありません。
担任の先生も、中身の出来より「毎日続けられたか」を見ています。上手に読めた日をつくることより、途切れずに続くことのほうが大事だからです。そう思えば、完璧に聞き取ろうとしなくて大丈夫です。
「ながら聞き」でもいいですか?
手を止めて聞いてあげるのが、いちばんよいです。ただ、子どもにやる気があるなら、ながら聞きでもかまいません。
気にしてほしいのは、子どものほうが「できればやりたくない」と思っている場合です。そういう子には、聞いてもらえること自体が宿題に向かう助けになります。自分の声を聞いてもらえる、好きな時間になることもあります。
毎日聞くのは大変です。学校から出される範囲は同じ話が何日も続くので、同じ場面を何回も聞くことになります。それでも音読は1回5分程度です。この5分だけ、お子さんの声を聞いてあげる価値はあると思います。
座る位置も変えてかまいません。面と向かって聞かれると恥ずかしがる子もいますし、見られるのが好きな子もいます。正面、横、少し離れて。その子がリラックスして読める場所を選んでください。
わが家がたどりついた、いちばん短い音読
音読は、毎回こちらが働きかけないと始まりません。適当に読んだり、嫌々な態度をとられたりして、イライラしてしまうこともあります。
そこで「音読する以外のことは、子どもに何もさせない」形にしました。動きそうにない日は、ここまで親がやってしまいます。
- ランドセルから国語の教科書と音読カードを出す
- 指定されたページを開いて、子どもに渡す
- 冒頭のひと言だけ、親が読む。「そこで、おじいさんが」と読んで、次をうながす
- 読み終わったらカードに書いて、ランドセルにしまう
- 最後に拍手して、おしまい

「やだー」「早く持ってきて」「今日は何ページ?」「教科書開いて」。ここでひとつずつ時間をかけると、お互い疲れます。音読そのもの以外は全部こちらが引き受けてしまうほうが、子どものハードルも親の負担も下がります。5分つきあうために、そこは省いてしまう、という考え方です。
何回読めばいいですか
学校の方針や、担任の先生の方針によります。カードに回数が指定されていれば、その回数で大丈夫です。
回数を重ねると、その文章に馴染んでいけます。1回目より2回目以降のほうがスムーズに読めて、「読めた」という喜びを感じられることもあります。
ただ、宿題が1回なのに3回読ませる、というところまではしなくていいと思います。負担にならないことのほうが大切です。
「なんでやらなきゃいけないの」と言われたら
基本、嫌がります。やらなくていいものなら、子どもはやらないと思います。「めんどくさい」「なんでやらなきゃいけないの」「なくなればいいのに」。よく言われます。
そのとき、音読がなぜ必要なのか、あれこれ説明はしません。「宿題だからやっちゃうよ」と言って、読んでもらって、終了。とにかく短く終わらせて、「すぐ終わるものだ」と思ってもらうようにしています。
意味を説明して納得させようとすると、そこで一戦始まります。説明は、この記事を読んでいる大人が持っていればいい話です。これは子どものためになっている、と自分が思えていること。毎日続けるには、その心の支えのほうが要ります。
読み間違いは、どこまで直しますか
一字一句、訂正する必要はありません。聞いているとつい直したくなりますが、全部拾うと音読が「間違いを指摘される時間」になってしまいます。
ただし、そのままでは意味が変わってしまうときだけは、そっと入ります。たとえばこの2つは、別の意味になります。
- おじいさんにあげました
- おじいさんがあげました
だれがしたことなのか、だれにしたことなのか。主語や対象をつかむことは、内容の理解にとって大切です。ここがずれたまま進むと、話が分からなくなります。

直し方は「大人が読み直すだけ」
「おじいさんがあげました」と読み間違えたら、「おじいさんにあげました」と、大人が正しく読み直します。それだけです。
「あっ、そうか」と納得した顔をしたら、それでOKです。そこから自分で読み直す子もいますし、大人に読んでもらって納得したので、そのまま先を続ける子もいます。どちらでもかまいません。
「もう1回読んで」と戻らせなくて大丈夫です。大切なのは内容を理解することなので、読み直しそのものが目的ではありません。大人も子どももハードルが低いことが、いちばん大事です。
読めない漢字は、その場で教えてください
漢字の読み間違いや、読めない漢字が出てきたときは、音読を機に覚えてもらいましょう。「これは〜って読むんだよ」と教えてあげてください。
教科書の文章は何日も続けて読みます。1日目に教えた読み方が、2日目3日目で自分から出てくるようになります。音読は、漢字の読みを覚える場でもあります。
つっかえる・声が小さい・棒読み。それで大丈夫です
音読が苦手な子はいます。ただ、「苦手意識がある」のと「読むことに困難がある」のは別です。ここを分けて考えてください。
声に出すこと、人前で読むことが苦手な子はたくさんいます。わたし自身がそうでした。無理に人前で読ませる必要はありません。
- 声を出すのが苦手なら、口を動かすだけでも効果があります。図書室で静かに口が動いている子は、ちゃんと読んでいます。1文字ずつ体で感じながら進められます
- 理解より速く読む必要はありません。速さを求めると、音だけ出て中身が残りません
- 低学年の音読は、スロー再生のような速さです。それで大丈夫です
- 派手に表現しなくてもかまいません。大事なのは、声を出すことではなく内容の理解です

ゆっくりでも、小さな声でも、その子の理解に合わせて進めば大丈夫です。少しずつの経験で力がつくので、月単位ではなく年単位で見ていくぐらいの心構えでいてください。読むこと自体に苦手意識が強い子への関わりは、こちらの記事で段階を追って書いています。
新しい文章でたどたどしくなるのは、普通です
音読の効果が見えるまでの期間について、「数週間から1か月で変化を感じられる」と書かれているのを見かけます。わたしは、短く感じます。数か月という単位で見てあげてください。
音読は、先週から今週で劇的に変わるものではありません。積み重ねが効いてきます。
そしてここを知っておいてほしいのですが、単元が変わって新しい文章になると、その文章に慣れるところからのスタートに戻ります。前の文章はスラスラ読めていたのに、新しい文章ではたどたどしくなる。これは普通のことで、後戻りではありません。
音読の効果は、数値で出せるものではありません。でも、確実に効きます。続けていけば大丈夫です。
こんな様子が続くときは、一度学校に相談を
ここだけは、はっきり書いておきます。読み始めのころにゆっくりなのは、まったく問題ありません。1文字ずつ発音しているだけでも、指でなぞりながらでも大丈夫です。見てほしいのは、それがいつまでも続くかどうかです。
国立成育医療研究センターは、読みの困難(ディスレクシア)の初期のあらわれとして次のような様子を挙げています(国立成育医療研究センター「ディスレクシア」)。
- 文字を一つ一つ拾って読む(逐次読み)状態が続き、言葉のまとまりで読めない
- 読んでいるところを確認するように、指で押さえながら読む
- 本を読んでいると、すぐに疲れる
- 幼児期から文字に興味がなく、覚えようとしなかった
同センターは、「文字が読めない」と表現されることが多いけれどそれは誤りで、正しくは「読むのが極端に遅く、よく間違える」のだと説明しています。会話は普通にできるため、怠けている・努力が足りないと誤解されやすいところです。
わたしが家庭でも見ていてほしいと思うのは、次の2つです。音読カードにサインをするとき、耳に残ることがあります。
- 何か月たっても1文字ずつの発音のままで、文章としてまとまってこない
- 1行目を読んでいるはずなのに、2行目や別の行に飛んでしまう
受診の目安として同センターが挙げているのは、「ひらがなの音読に困難があり、努力してもあまり改善しない」「本人に音読が苦手という自覚がある」「知的な遅れはない」といった状態です。
ここで大事なのは、家で判断しようとしないことです。気になったら、まず担任の先生に「音読のときにこうなります」と様子をそのまま伝えてください。学校には特別支援教育の担当者がいて、そこから相談につながります。学校司書に話してもらってもかまいません。早く気づけるほど、手立ては打ちやすくなります。音読の宿題は、そのきっかけをくれる時間でもあります。
音読は「一人読み」への橋です
図書室で一人静かに本を読む時間に、声に出して読んでいる子がいます。とてもいいことです。図書室なので静かにしてもらいますが、一人読みにうまく移れる子は、たいてい声に出して読んでいます。
声に出すと、目で追いながら耳でも聞きます。だから内容が入りやすく、読み間違えたときに「あれ?」と違和感が出て、戻って読み直せます。黙読より、耳から入れたほうが難しい内容がわかるのです。
絵本や簡単な児童書を音読していくうちに、あるとき黙読のほうが理解が速くなる地点が来ます。そこを越えると、自然に黙読へ移っていきます。音読は素通りされがちですが、大事な過程です。読み聞かせから一人読みへの進み方はこちらの記事で詳しく書いています。
ちなみにこれは大人も同じです。わたしも本を読んでいて引っかかったときは声に出してみて、「そういうことか」と分かることがよくあります。お子さんにも「声に出すと分かりやすいよ」と教えてあげてください。
読み聞かせと音読は、役割が違う
読み聞かせは「見る・聞く」、音読は「読む・聞く」。どちらも必要です。
難しい内容がわかる順で並べると、読み聞かせ → 音読 → 黙読になります。いずれ黙読・一人読みを目指すなら、音読はその途中の段を上がる作業です。同じ日に両方やらなければいけない、ということはありません。グラデーションで進んでいけば大丈夫です。
小学生になったら、お子さんに読み聞かせをしてもらう機会があってもいいと思います。児童書を交互に読むのも楽しいです。おすすめは役割分担です。
文章には会話文と地の文がありますが、読んで理解するのが大変なのは地の文です。会話文は日常で聞いていて、自分でも話している形だからです。地の文は大人が読んで、会話文を子どもに読んでもらう。これなら音読も楽しくできます。読み聞かせをいつまで続けるかで迷っている方はこちらの記事も参考にしてください。

よくある質問
まとめ|1日5分、つきあってあげてください
- 音読には意味がある。文章への感度が上がることと、読みのつまずきに早く気づけること
- 担任の先生が見ているのは「やったかどうか」。上手さより、毎日途切れないこと
- 教科書を開いて渡し、冒頭だけ親が読む。読み終わったら拍手でおしまい
- 読み間違いは一字一句直さない。意味が変わるときだけ、大人が正しく読み直す。読めない漢字はその場で教える
- ゆっくりでも、小さい声でも、口が動いているだけでも大丈夫
- 変化は数か月単位。新しい文章でたどたどしくなるのは、後戻りではない
- 1文字ずつのまま進まない・行が飛ぶ、が続くときは担任の先生に様子を伝える
- 音読は読み聞かせと一人読みのあいだの橋。地の文は大人、会話文は子どもで分けてもいい
音読の宿題は、正直しんどいです。子どもは進んでやりません。それでも、1日5分です。その5分だけ、お子さんにつきあってあげてください。積み重ねた5分は、いつか一人で本を読む力になって返ってきます。
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