こんな方におすすめの記事
- 子どもが漫画ばかり読んでいて、これは読書に入るのか気になっている方
- 「漫画は読書に入らない」と聞いて、取り上げるべきか迷っている方
- 学習漫画・歴史漫画なら読書と言えるのか、判断がつかない方
- 漫画は読むのに、挿絵のない本になると「無理」と閉じてしまうお子さんがいる方
- 「漫画から少しずつ本へ」を試したけれど、うまくいかなかった方
「うちの子、漫画ばかりなんです」
これは、学校図書館でも本当によく聞く悩みです。読んでいることは読んでいる。でも、これを「読書」と呼んでいいのかどうか、自信が持てない。
先に、この記事の答えをお伝えします。「読書に入る/入らない」で考えるより、「漫画と読書は別物」と考えるほうが、ずっとわかりやすいです。
何が違うのかというと、文章を読めるかどうか。ここだけです。
そして、これはあまり言われていないことですが、漫画をたくさん読んだ先に、文章が読めるようになる道は、なかなかできません。「漫画を入口にして、少しずつ本へ」——私もそう書いてある記事をたくさん見てきました。でも図書室で毎日子どもを見ていると、そうはならないことのほうが多いのです。
だからこの記事では、漫画を減らす話はしません。漫画は漫画として思いきり楽しんで、そのうえで「文章のルート」を別につくる——そのやり方をお伝えします。
私は学校司書として、学校図書館に入れる本を年間1,000冊ほど選んでいます。図書室にも漫画はあります。毎日、どの子がどの棚に手を伸ばして、そのあとどうなっていくのかを見ている立場から書きました。そして私自身、小学生のころから今日まで漫画が大好きです。
小学校の中学年〜高学年、一人で本を読む時期のお子さんがいる方に向けた内容です。低学年の場合は、最後のQ&Aもあわせてご覧ください。
結論:「入る/入らない」ではなく、別物です

結論からお伝えします。
- 漫画には漫画の良さがあり、文章には文章の良さがあります。別物です。どちらが上ということはありません
- 違うのは「文章を読めるかどうか」だけ。表現の方法が違い、読み方のルールが違います
- 漫画を読む先に、文章が読める道はなかなかできません。ここは期待しすぎないほうが、結果的にうまくいきます
- だから、文章は文章として別に時間をつくります。毎日5分でも10分でも、触れる時間があればいい
漫画も本も、内容を知って、感情が動くという意味では同じです。そこはまったく変わりません。
ただ、漫画を読んで文章の読解力が育つかというと、そうとは言えません。2つは表現方法が違い、ルールが違うからです。
「漫画が読めるのだから、文章も読めるはず」——これは、あまり通じません。文章は文章で読み方が違いますし、子ども本人がいちばんそれを実感としてわかっています。
ここを分けて考えられると、家でやることがはっきりします。順番に見ていきます。
先に、漫画のすばらしさから話させてください

この記事は「文章も読ませましょう」という話に進みますが、その前にこれだけは書いておきたいです。
私は、小学生のころから漫画が好きです。今でも読みます。漫画に否定的な気持ちはまったくありません。むしろ、すごく好きです。
漫画でしか味わえない世界があります。これだけたくさんの漫画がある国に生まれてよかった、と本気で思っています。
漫画が好きな子は、本当に漫画が好きです
「漫画ばかりで心配」と相談されたとき、私がまずお伝えするのはここです。
漫画が好きな子は、本当に漫画が好きなんです。そこでワクワクドキドキして、感情を動かして、たくさんのことを吸収しています。大切で、素敵な時間です。
友だちとの共通の話題にもなります。漫画から映画、アニメ、声優、俳優、歴史的な背景へと、興味が広がっていくこともよくあります。
ここを取り上げる理由は、ひとつもありません。
学ぶための道具としても、漫画はとても優秀です
漫画は読みやすいので、学習のための道具としてもかなり優秀です。文章では理解しづらい内容も、漫画だと理解できます。
登場人物が描かれていて、吹き出しでしゃべってくれるので、誰が何を言って、どういう感情になったのかが、すぐわかります。
誰からも楽しめる。だから世界中で受け入れられているのだと思います。漫画は、時代や文化を超えて理解できる素晴らしい文化です。
そのうえで——漫画は漫画、文章は文章。この2つは別物だという意識が、いちばん大事だと思っています。
図書室で、漫画はどう借りられているか

うちの図書室に置いてある漫画
まず、実際のラインナップです。だいたいこんな構成になっています。
| 種類 | 冊数の目安 | ひとこと |
|---|---|---|
| 日本の歴史セット | 20冊 | 1巻から順番に借りていく子が多い |
| 伝記の漫画 | 50冊 | 調べ学習で使うので、ひととおり揃えています |
| 学習漫画(コナン、ドラえもんなど) | 50冊 | テーマ別。巻の表示がないものが多い |
| 『科学漫画サバイバル』シリーズ | 50冊 | 中学年から。いちばん動きます |
| 『つかめ!理科ダマン』 | 10冊 | 科学のキホンを1テーマずつ |
| 古典文学の漫画 | 20冊 | 『竹取物語』『平家物語』など |
ここで大事なのは、いわゆる普通の漫画(ストーリー漫画)は置いていないということです。図書室にあるのは、学習漫画だけです。
なぜ図書室に漫画を入れるのか
年間1,000冊の選書のなかで、漫画をどう扱っているか。基準ははっきりしています。
漫画として楽しむものではなく、漫画を通して学ぶものを買っています。
理由はシンプルで、小学生に必要だからです。
歴史や古典文学のように、触れてほしいけれど、文章ではハードルが高い分野があります。とくに小学生は、時代背景などの知識がまだ身についていないので、文章で読んでもイメージできない部分が多いのです。
それが漫画になると、内容がわかります。『竹取物語』や『平家物語』といった古典文学、歌舞伎の演目などは、積極的に漫画で選ぶ分野です。漫画は、理解の手助けになります。
高学年になると、物語派と知識派にわかれます
棚の様子です。図書室に置いてあるのは学習漫画なので、内容は低学年には難しいです。低学年の子が漫画の棚に張りついている、という光景は、実はあまりありません。
動きが出るのは中学年からで、高学年になって歴史や科学に興味を持つようになると、貸出がぐっと増えます。
そして高学年になると、大きく「物語派」と「知識派」にわかれていきます。学習漫画は、知識派の子たちにとても人気です。
いちばん動くのは『科学漫画サバイバル』シリーズ
具体的に挙げると、いちばん人気があるのは『科学漫画サバイバル』シリーズ(朝日新聞出版)です。中学年から読み始めます。
ギャグも多く、楽しみながら読めるようです。シリーズものなので、1冊読んで興味を持つと、一気読みする子が多いのも特徴です。
人気なぶん、そしてソフトカバーでもあるので、傷みは激しいです。「ページがとれてたよ」と教えてくれることも多い本です。それくらい、みんなに借りられて読まれています。
いっぽう『日本の歴史』シリーズは、貸出回数だけからすると人気があるとは言えません。ただ、歴史に興味を持った子にとっては、熱中される本です。数字と、その子にとっての価値は、必ずしも一致しません。
歴史ものは1巻から、それ以外は好きなテーマから
借りられ方にも、はっきりした違いがあります。
歴史ものは、1巻から順番に借りていきます。時代の流れがあるので、自然とそうなります。
それ以外の学習漫画は、そもそも「何巻」という表示自体がないものが多いので、好きなテーマの本を選んで借りていきます。
おもしろいのはこの先で、1冊読むと、その学習漫画そのものの雰囲気が好きになるようです。最初は科学のテーマを借りていた子が、次は社会のテーマを借りる。そうやって幅広く読んでいくのが見られます。
伝記の漫画は、調べ学習を「誰でも仕上げられる」ものにします
伝記の学習漫画を50冊そろえているのには、理由があります。調べ学習で使うからです。
漫画で読むと、その人の一生がよくわかります。長い文章を読むことが苦手な子でも、内容や登場人物の感情がわかる。ここが、伝記の漫画のいちばんいいところです。
伝記を漫画でそろえておくことで、調べ学習を、誰もが仕上げることができます。
学校では、どんな読書レベルの子でも使えることが、とても大事にされます。漫画は、そのための道具でもあるのです。
それでも「漫画は読書に入らない」と言われる理由

ここまで漫画をほめてきましたが、それでも「読書には入らない」と言われます。理由を分けてみます。
理由① 表現の方法が違い、読み方のルールが違う
これがいちばん大きい理由です。
漫画では、場面も、表情も、気持ちも、絵が伝えてくれます。吹き出しを追えば、誰が何を言ったかもすぐわかります。
文章にはそれがありません。文字を読んで、場面を思い浮かべて、気持ちを推し量る——この作業を、全部自分でやることになります。
だから、漫画をどれだけ読んでも、文章のほうのルールには慣れません。同じ「読む」でも、していることが違うのです。
理由② 読む時間が、まるで違う
これは学校の読書の時間で、はっきり見えます。
小説は1冊に1時間かかるところ、漫画では15分だったりします。同じ「1冊」でも、中身がまるで違います。
読んでいるのに言葉が増えない、という相談をいただくことがありますが、冊数と、実際に読んだ文字の量は別ものです。
読んでいるのに語彙が増えない、というテーマはこちらで詳しく書いています。
本を読んでいるのに語彙が増えない子へ|読書で語彙力が伸びる仕組みと家庭でできること
理由③ 読書冊数に入れると、そこにとらわれてしまう
うちの学校では、読書の時間に漫画は認められていません。学習漫画については、先生によって考え方が違います。朝読書ではNGとしている先生もいます。
読書記録や冊数にも、漫画は入れていません。冷たいようですが、理由があります。
漫画で冊数が増えると、そればかりにとらわれて、結局は漫画ばかり読むことを誘導してしまう恐れがあるからです。そして、時間をかけて物語を読んでいる子に、不平等感が生まれてしまうことも心配しています。
数える対象を決めるということは、「何をがんばってほしいか」を伝えることでもあります。
漫画で育つこと・文章でしか育たないこと
| 育つもの | 漫画 | 文章 |
|---|---|---|
| 感情が動く体験 | ◎ 十分に育つ | ◎ |
| 知識・背景知識 | ◎ とくに学習漫画 | ○ |
| その分野を好きになる気持ち | ◎ 入口として最強 | ○ |
| 登場人物の気持ちを読む力 | ○ 絵が助けてくれる | ◎ 自分で読み取る |
| 言葉だけで場面を立ち上げる力 | × 育たない | ◎ ここでしか育たない |
| 長い文章を読み続ける体力 | × 育たない | ◎ ここでしか育たない |
| 気持ちや情景を表す語彙 | △ 入りにくい | ◎ |
この表で見ていただきたいのは、×が付いているところは、漫画をどれだけ増やしても埋まらないということです。
そして同時に、◎が並んでいる左の列も、文章だけでは手に入りにくいものです。だから両方あるのがいちばんいい。減らす話ではなく、そろえる話です。
読書で育つ力の全体像は、こちらにまとめています。
読書で育つ10の力|小学生が本を読むと、勉強以外の何が伸びるのか
図書室で見てきた、いちばん正直な話

ここからは、あまり書かれていないことを書きます。
漫画しか借りない子のほうが、多数派です
漫画しか借りない子は、います。そして正直に言うと、こちらのほうが多数派です。
中学年でも、高学年になっても同じです。大人になっても同じです。漫画は読むけれど文章は苦手、という人はたくさんいます。
だから、お子さんが漫画しか読まないことは、特別なことでも、めずらしいことでもありません。そこは安心してください。
学習漫画を読み終わると、読書が終了になります
ただ、ひとつだけ気になっていることがあります。
図書室にある学習漫画を読み終わってしまうと、そこで読書が終了になってしまうのです。
そのあとは、しかたなく同じ学習漫画を繰り返し借りていく——という姿も見られます。棚に、その子の次がないという状態です。
これが、この記事でいちばんお伝えしたい心配ごとです。漫画を読んでいることが問題なのではなく、漫画が尽きたときに行き先がないことが問題です。
それで本人が困るわけではない、というのが難しいところ
ここが本当に難しいのですが、文章が読めなくても、子ども本人はとくに困っていません。
授業で文章を読むことはありますが、長文を一人で読解するような機会は、そう多くありません。算数の文章問題の意味が理解しづらくても、それを読書の問題だと考える子はいないのです。
子どもの頭のなかでは、読書は読書、算数は算数です。そして——「国語も算数も苦手」だと思っています。
つながっていることに、大人が気づいてあげるしかありません。
「絵のない本は無理」と、見ただけで閉じる
漫画で止まってしまう子は、文章に対する苦手意識がとても強いです。
挿絵がない本は、見るだけで「無理」と拒否してしまうことがよくあります。内容ではなく、見た目で判断しています。
そして読書の時間になると、文章を楽しめる子は次々に新しい本を楽しんでいくのに対して、苦手意識のある子は同じ本を手元に置いて、読んでいるふりをします。「早くこの時間が終わらないかな」という顔をしています。
読む時間を確保することは、とても大切です。読む時間があるから、読むようになるからです。ただし、読む時間があっても読まない子がいるのも事実で、その子には大人の個別の手助けがいります。
この状態から抜け出す手順は、こちらにまとめています。
「本が苦手」「全然読まない」を卒業!読書が苦手な小学生が0冊から抜け出す7つのステップ
漫画と文章は「別ルート」です

文章を読める・読めないの間には、壁があります
学習漫画で止まる子と、文章にいける子がいます。これは、漫画に関わらずある壁のようなものです。
文章を読める・読めないの間には、壁があります。そして——漫画を楽しめたから、文章も楽しめるようになるかというと、そういうわけではありません。
漫画だけの子には、文章への壁があります。いっぽう、物語などの文章も読むなかに漫画も混ざっている子は、どちらも読めます。
順番が逆なのです。漫画が文章に連れていってくれるのではなく、文章のルートをすでに持っている子が、漫画も楽しんでいる。
つながるのは、感情が動いたときだけです
ただし、漫画から文章へつながることが、まったくないわけではありません。条件がひとつあります。
漫画を読むなかで何かにひっかかって、「このことをもっと知りたい」と思えたとき。これが、文章を読む原動力になります。
たとえば、歴史の漫画を読み終わった子が、特定の人物の物語を読むようになることがあります。「織田信長かっこいい」と感情が動くと、読みます。逆に動かないと、読みません。
図書室で実際に見た広がり方も、いくつか挙げておきます。
- 歴史漫画 → 伝記
- 『科学漫画サバイバル』シリーズ → 『空想科学読本』
- (漫画ではありませんが)最強王図鑑シリーズ → 図鑑
共通しているのは、「もっと知りたい」が先にあることです。文章を読まない子が読むようになるには、感情が動くことがいちばん大切です。
期待していいこと・期待しないほうがいいこと
| 漫画に期待していいこと | 期待しないほうがいいこと |
|---|---|
| その分野を好きになること | 読んでいるうちに文章も読めるようになること |
| 知識・背景知識が入ること | 字が多い本への抵抗がなくなること |
| 感情が動く体験を積むこと | 読解力・記述力が伸びること |
| 「もっと知りたい」が生まれること | ページ数の多い本を最後まで読めるようになること |
| 友だちと同じ話題を持てること | 読書の習慣そのものがつくこと |
右の列に期待していると、「あんなに読んでいるのに、どうして」と親のほうが苦しくなります。そして、つい漫画のせいにしてしまう。
漫画は悪くありません。ただ、そこは漫画の担当ではないというだけです。
文章のルートが育っている子・まだない子
| 文章のルートが育っている子 | 文章のルートがまだない子 |
|---|---|
| 漫画も読むが、物語や読みものも混ざっている | 手に取るのが漫画・学習漫画だけ |
| 学習漫画の中の、字だけの解説ページも読む | 字だけのページを飛ばす |
| 挿絵の少ない本でも、とりあえず開いてみる | 挿絵がない本は見るだけで「無理」と言う |
| 読書の時間に、新しい本を次々に手に取る | 読書の時間に同じ本を置いて、読んでいるふりをする |
| 読んだ話の中身を、人に話す | 読んだ話の中身を聞かれても答えられない |
| 「もっと知りたい」から次の本へ行く | 図書室の学習漫画を読み終えて、行き先がない |
右の列に思い当たる場合でも、やることは「漫画を減らす」ではありません。そこは動かさなくて大丈夫です。
足りていないのは、文章のほうのルートです。次の章で、その作り方をお伝えします。
文章のルートを、別につくる6つの方法

全部やる必要はありません。1つがだめでも次を試せるように、6つ挙げておきます。
① 文章の時間を、漫画とは別に確保する
いちばん確実で、いちばん地味なのがこれです。
漫画の時間を削るのではなく、文章を読む時間を別に置きます。長くなくて大丈夫です。毎日5分でも10分でも、文章に触れさせてあげてください。
学校で朝読書の時間があるのは、まさにこのためです。読む時間があるから、読むようになる。時間がなければ、そもそも始まりません。
読書時間の目安については、こちらにまとめています。
小学生の読書時間は何分が効果的?学力が伸びる目安を学校司書が解説
② 1つ1つの単位が短い本から入る
文章に苦手意識がある子に、私が実際にすすめているのはこれです。
一人で読めるという前提で、1つ1つの単位が少ないものを渡します。高学年なら、たとえばこのあたりです。
- 『54字の物語』(氏田雄介 作/佐藤おどり 絵・PHP研究所)——1話が54字で終わる超短編
- 『5分後に意外な結末』シリーズ(学研)——1話5分で読み切れる短編集
低学年・中学年なら、『かいけつゾロリ』シリーズや『ようかいとりものちょう』シリーズをすすめます。
ねらいはひとつだけです。まずは「自分で読める、読んで楽しい」を体験してもらうこと。ここが、文章のルートの1歩目になります。
かいけつゾロリの次に読む本9冊|ゾロリ卒業のあと、読書が続く子と止まる子の違い
③ 学年ではなく、その子の読書レベルで選ぶ
本を選ぶとき、漫画を読んでいるかどうかは、実はあまり関係ありません。
見るのは、その子が今どのくらいの文章を読めるか、それだけです。学年でも、対象年齢の表示でもありません。
4年生でも、絵本や短編から始めていい。それが「今読める」ところなら、そこが正解です。その子の読書レベルに応じて本をすすめるのが、いちばん現実的です。
学年別の本の選び方は、こちらにまとめています。
小学生の語彙力を伸ばす本おすすめ12冊|学年別の選び方を司書ママが解説
④ 感情が動く1冊を探す
さきほど書いたとおり、文章を読まない子が読むようになるのは、感情が動いたときです。
だから、渡す本の基準は「ためになるか」ではありません。その子が「面白そう」「読んでみよう」と思えるかどうか。ここだけです。
もし漫画のなかに、その子がひっかかっているものがあるなら、そこは有力な手がかりです。好きな時代、好きな人物、好きなテーマ。そこから「もっと知りたい」が生まれることがあります。
ただし、これは狙って起こせるものではありません。起きたらラッキー、くらいの気持ちで待ってください。
⑤ 知っている世界から入る(ノベライズ)
図書室にも、ノベライズ(アニメや映画、ゲームの小説版)は置いています。星のカービィのシリーズ、コナンの映画シリーズ、細田守監督のアニメのシリーズなどです。
登場人物も世界観も知っているので、字だけになっても頭の中で絵が動きます。
ほかの世界をきっかけにして小説に入っていくのは、とても自然で、いいことだと思っています。大切なのは「面白そう」「読んでみよう」という気持ちがわくかどうかであって、入口がどこかではありません。
⑥ 読み聞かせで、文章の楽しさだけを渡す
自分で読むのがまだしんどい子には、これがいちばん効きます。
読み聞かせの強みは、自分で読める本より難しい内容を受け取れることです。文字を追う負担がないぶん、内容そのものに集中できます。「言葉だけで場面が立ち上がる」というあの感覚を、いちばん楽に体験できます。
読み聞かせは、学年で卒業するものではありません。中学年でも高学年でも効きます。絵本まで戻って、そこから積み直しても、まったく問題ありません。
読み聞かせはいつまで続ける?目安は小3・やめどきのサインを学校司書が解説
6つの使い分け
| 方法 | こんな子に向いています | 手間 |
|---|---|---|
| ① 文章の時間を別に確保する | すべての子に。まずここから | 小さい |
| ② 単位の短い本から入る | 「絵のない本は無理」と言う | 小さい |
| ③ 読書レベルで選ぶ | 学年相応の本を渡して失敗した | ふつう |
| ④ 感情が動く1冊を探す | 好きなジャンルがはっきりしている | ふつう(運もいります) |
| ⑤ ノベライズから入る | 特定の作品・キャラクターにハマっている | 小さい |
| ⑥ 読み聞かせ | 自分で読むのがまだしんどい/低学年 | 大きい(でも効く) |
上から順にやる必要はありません。ただ、①だけは、どの子にも必要です。読む時間がないところには、何も起きないからです。
つい、やってしまいがちなこと
| やりがちなこと | 子どもが受け取る意味 | 代わりに |
|---|---|---|
| 漫画を取り上げる・禁止する | 好きなものを奪われた | 取り上げない。文章の時間を別に足す |
| 「漫画は読書じゃない」と言う | 好きなものを否定された | 言わない。漫画は漫画で堂々と楽しませる |
| 「漫画ばかり」と本人に言う | 自分は読めていない子なんだ | 言わない。足りないのは本人ではなく文章の時間 |
| 「漫画が読めるんだから本も読める」 | 読めない自分はサボっている | 別ものだと認める。読み方が違うだけ |
| 漫画を読書冊数に数えて安心する | 数さえ増えればいいんだ | 数えるのは文章の本だけにする |
| 読み終わるたびに「どんな話だった?」 | 読むたびにテストされる | 聞かない。子どもから話すのを待つ |
4行目は、私自身がいちばん気をつけていることです。
「漫画が読めるんだから、文章だって読めるでしょう」——大人にはそう見えます。でも、子ども本人は「これは別のものだ」と実感としてわかっています。そこを一緒にされると、読めない自分が悪いという話になってしまいます。
1行目の「取り上げる」も、効果が逆に出ます。漫画を取り上げても、その子が文章の本を読み始めるわけではありません。読む時間そのものが、まるごとなくなるだけです。
引き算ではなく、足し算で解きます。
わが家の場合

兄弟で、読んでいる漫画がまったく違います
うちの子どもたちも、漫画を読みます。家で読んでいます。
長男(6年生)が好きなのは『キングダム』『チ。』『三国志』。文章も読めるので、話につながりがあって、前後の関係を追わないといけないものでも理解して読んでいけます。
次男(4年生)は、星のカービィのスピンオフ漫画や4コマなど、かなりライトな内容です。次男は文章が苦手で、漫画も単発ですぐ楽しめるような内容が多くなります。
同じ「漫画を読む」でも、読んでいるものが違う。ここにも、文章を読む力の差がそのまま出ています。
「絵のない本、無理」と、何度聞いたことか
一人読書ができるようになるのも、挿絵なしの文章が読めるようになるのも、大変だったのは圧倒的に次男でした。
長男は、あまり手を出さなくても勝手に文章を読みだした印象があります。次男は、手取り足取り教えて、やっと読めるようになりました。
「絵のない本、無理」——何度聞いたことか。
だから、絵本を一緒に読むところから、1つ1つ付き合っていきました。特別なことは何もしていません。戻れるところまで戻って、そこから積み直しただけです。
絵本→漫画→物語、という移行はしていません
これは、書いておきたいことです。
わが家では、絵本→漫画→物語という移り方はしていません。本としては、絵本→物語です。漫画は、読書のルートに入っていません。
漫画は漫画として楽しんでいます。今も、どちらも楽しんでいます。2本のルートが、並んで走っているイメージです。
読み聞かせから一人読みへ、という文章のほうのルートは、こちらにまとめています。
小学生が「自分から本を読む子」になる関わり方|読み聞かせから一人読みへ
漫画は買います。ただし「月に1冊」の枠には入れません
わが家の本は、ほとんどが図書館の本です。そのうえで「月に1冊は買っていい」というルールにしています。
まず前提として、漫画を読むことも、買うことも禁止していません。ほしい漫画があれば買います。
ただ、月に1冊という月1回のお楽しみの中には、漫画を入れていません。これは、文章を読んでほしいからです。理由も本人たちに伝えてあります。
買ってもらうために、子どもは一生懸命に本を選びます。そうやって「これ面白そう」と思って選んだ本は、ちゃんと読めるんです。その気持ちを引き出すために、このルールにしています。
学習漫画や歴史漫画は、図書館で借りてきます。あるいは図書館に行ったときに1時間くらい滞在するので、その場で読んでいます。
何を買って何を借りるかの線引きは、こちらにまとめています。
子どもの本は買う?借りる?|学校司書ママの使い分けと「買う1冊」の決め方
その「面白そうな1冊」を探し続けるのが大変な方へ|ヨンデミーという方法
ここまで読んで、こう思った方もいると思います。
「言いたいことはわかったけれど、その本を毎回探すのが大変なんです」
そのとおりだと思います。文章のルートは、1冊選べば終わりではありません。しかも、その子の読書レベルに合っていて、なおかつ感情が動く本を探すことになります。読み終わればまた次がいります。
本当にしんどいのは、読ませることではなく、選び続けることです。
それを代わりにやってくれるのが、ヨンデミーというオンラインの読書教育サービスです。
AIがその子にぴったりの本を選んでくれる
ヨンデミーの中心は、選書です。はじめに読書のレベルと好みを診断して、その子が今読める難しさで、興味に合う本を選んで届けてくれます。
2026年8月21日からは、その選書が「育てる選書」に変わりました。感想を送ると次のおすすめが3冊表示されて、その中から読みたい1冊を子どもが自分で選びます。好きなものをまっすぐ深める1冊・少しずらした1冊・ジャンルが大きく変わる1冊、という組み合わせで並ぶそうです。
漫画ばかり読む子に、親が選んだ物語を渡してもなかなか進みません。好きの近くから少しずつずらしていって、最後の1冊は本人に選ばせる。この記事で書いた進め方と、考え方は同じです。
この記事で「学年ではなく、その子の読書レベルで選ぶ」と書きましたが、この見当をつけるのが、親にはいちばん難しいところです。厚さや対象学年は書いてありますが、その子にとって読めるかどうかとは別の話だからです。
学年とレベルがズレて当たり前だという話は、こちらに書いています。
ヨンデミーレベル(YL)とは?学年とズレて当たり前な理由を司書ママが解説
毎日3分のミニレッスンがある
本が届くだけではなく、アプリの中で毎日3分ほどのミニレッスンがあります。読み方のコツや感想の書き方を、少しずつ学べる仕組みです。
この記事の①「文章の時間を別に確保する」を、親が声をかけずに続けられるのが大きいところです。親の負担にならない仕組みだけが、続きます。
図書館と連携できる
選んでもらった本は、買わなくても大丈夫です。図書館の蔵書と連携して、おすすめされた本をそのまま予約できる機能があります。
本代がふくらまないので、合わなかった本を「もったいない」と思わずに返せます。文章のルートを作り始める時期は、合う・合わないがはっきり出ます。気楽に返せることは、かなり大事です。
ヨンデミーの「図書館自動予約」を使ってみた|設定方法と、本の準備がラクになった話
兄弟で実際に体験したときの様子は、こちらにまとめています。
ヨンデミーの口コミ・評判と料金|司書ママが兄弟で体験した正直レビュー
無料体験ができるので、合うかどうかは試してから決められます。
よくある質問
まとめ
この記事でお伝えしたかったことを、もう一度まとめます。
- 「読書に入る/入らない」ではなく、漫画と読書は別物。違うのは、文章を読めるかどうかだけです
- 漫画はすばらしいものです。感情が動き、知識が入り、興味が広がる。取り上げる理由はひとつもありません
- ただし、漫画の先に文章が読める道はなかなかできません。ここは期待しすぎないほうがうまくいきます
- 心配なのは、図書室の学習漫画を読み終えたときに行き先がないこと。漫画そのものではありません
- だから、文章のルートを別につくります。毎日5分でも10分でもいい。時間がないところには何も起きません
- 選ぶのは、学年ではなくその子の読書レベル。1つ1つの単位が短い本から始めてください
- 文章を読まない子が読むようになるのは、感情が動いたとき。「面白そう」がすべての出発点です
漫画は、時代や文化を超えて理解できる素晴らしい文化です。漫画は漫画として、堂々と楽しませてあげてください。
そのうえで、文章のほうにも小さな道をつくる。2本のルートは、並べて走らせることができます。
今日、5分だけでいいので、文章の本を開く時間を作ってみてください。そこからしか始まりません。そして、そこからなら始まります。
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