目次
こんな方におすすめの記事
- 子どもの勉強に読書が本当に役立つのか知りたい方
- 算数や理科の成績が伸び悩み、読解力が原因かもしれないと感じている方
- 「本を読む子は頭がいい」と聞くけれど、本当なのか知りたい方
- 子どもに読書習慣をつけたいけれど、何から始めればよいかわからない方
読書をすると学力が向上する
読書をすると、国語だけでなく、算数・理科・社会の成績もよくなります。 これは感覚的な話ではなく、国内外の複数の研究によって裏付けられている事実です。文部科学省が委託した調査研究(静岡大学、平成21年度)では、読書活動と国語・算数の学力調査結果との間に関連があることが示されています。また、猪原敬介ら(2015年、日本教育心理学会『教育心理学研究』63巻3号)による小学1〜6年生992名を対象とした研究でも、読書量と語彙力・文章理解力の正の相関が確認されています。 なぜ読書が学力を高めるのか。その理由は「読解力が上がるから」という一言では到底語りつくせません。本を読むことは、学力のあらゆる側面に、9つの方向から働きかけています。次のセクションでは、その9つの力をひとつひとつ丁寧に見ていきます。読書が学力を高める9つの力
▶ 基礎——言葉と集中の土台
① 語彙力が増える
読書で育つ語彙力は、すべての教科の理解に直結します。 日常会話では出会わないような言葉が、本の中にはたくさん出てきます。「胸が高鳴る」「しんみりとした」「なんとも言えない心細さ」——こうした表現に文脈の中で繰り返し触れることで、言葉の意味が自然と体に入っていきます。 辞書で単語帳を作って覚えた言葉より、物語の流れの中で出会った言葉のほうが、はるかに記憶に定着しやすいのです。猪原敬介ら(2015年、日本教育心理学会『教育心理学研究』63巻3号)が関東・中国・関西の小学校3校の1〜6年生992名を対象に行った研究でも、読書量のあらゆる指標と語彙力・文章理解力の間に正の相関があることが確認されています。語彙が豊かになればなるほど、わかる文章が増え、すべての教科の理解がスムーズになっていきます。② 読解力が育つ
文章の意味を正確に理解し、書かれていない意図まで読み取る力が育ちます。 読解力については、9つの力の中でも全教科への影響が特に大きいため、後ほど詳しく説明します。③ 集中力が育つ
一冊の本を読み続けることは、集中力を鍛える最良のトレーニングです。 本を読むとき、子どもは映像も音もない活字の世界に、自分の力だけで没入します。この「能動的に集中する体験」の積み重ねが、授業中に先生の話を聞き続ける力や、テストで問題文に集中する力へとつながっていきます。 スマホやゲームが「次々と刺激を与えてくる」のとは対照的に、本は「自分が読み進めなければ何も起こらない」メディアです。この能動性こそが、集中力を育てるカギになっています。▶ 応用——知識・思考・表現へ広がる
④ 知識が増える
読書によって積み重なる多様な知識が、新しいことを学ぶスピードを上げます。 「知っていること」が多ければ多いほど、新しい情報は既存の知識に結びついて理解しやすくなります。「あ、これはあの本に出てきた話と同じだ」という体験が、理科や社会の授業での理解をぐっと深めてくれます。 物語を通じて歴史の一場面を知ったり、科学の入門書で自然の仕組みを学んだり——読書で得た知識は教科を横断して活きていきます。⑤ 考える力が育つ
「なぜそうなったのか」「主人公はどう感じたのか」と考え続ける体験が、思考力を鍛えます。 良い物語は、答えを教えてくれません。物語の展開の中で「どうしてこうなったんだろう」「もし自分だったら……」と自然に考えさせてくれます。こうした能動的な思考のくり返しが、論理的に考える力・批判的に考える力の土台になっていきます。⑥ 作文力・表現力が育つ
豊かな語彙と多様な文章表現に触れ続けることで、書く力・伝える力が育ちます。 「感動した」「すごかった」——語彙が少ないと、気持ちや考えを言葉にしようとしても同じ表現ばかりになってしまいます。読書によって表現の引き出しが増えると、作文・発表・話し合いなど、あらゆる場面で自分の考えを豊かに言葉にできるようになっていきます。▶ 結果——学びへの姿勢が変わる
⑦ 授業がわかりやすくなる
語彙・背景知識・集中力が揃うことで、授業そのものの質が変わります。 先生の説明を聞いてすぐに理解できる。板書の言葉の意味がわかる。教科書を読んで内容がつかめる——読書によって育つ力は、授業での理解に直接つながっています。読書は「教科の外の活動」ではなく、すべての教科学習の土台を育てているのです。⑧ 学習への抵抗感が減る
「活字を読む」ことへの慣れが、勉強そのものへの取り組みやすさを変えていきます。 本に親しんでいる子どもは、教科書の説明文や問題文を「読まなければならないもの」ではなく、「読めるもの・わかるもの」として受け取れる下地があります。「勉強が嫌い」という子の中には、「文章を読むこと自体がしんどい」という子が少なくありません。読書習慣があると、その壁がなくなるのです。⑨ 自分で学ぶ力が育つ
「知りたい」という気持ちが、自発的な学びの原動力になります。 読書は、誰かに「読みなさい」と言われて読むより、自分が「面白い」「もっと知りたい」と思って読んだときに最も力になります。この「自分から求める」読書体験の積み重ねが、自ら課題を見つけて取り組む自律的な学び手を育てていきます。「主体的に学ぶ力」は、これからのAI時代にますます重要になるスキルです。読解力とは何か——9つの力の中で特に重要な力
読解力は、9つの力の中でも特に全教科への影響が大きいため、ここで詳しく説明します。
読解力とは、文字を読む力ではなく、文章の意味を正確に理解し、筆者の意図や情報の構造を把握する力のことです。
「うちの子、本は読めるんですけど……」という場合、「文字を読む力」はあっても「文章を理解する力」がまだ育っていない状態のことがあります。これは決して珍しいことではありません。
読解力は大きく、次の4つの力から成り立っています。
- 語彙力——言葉の意味を正確に知っている
- 解釈力——文章の構造(序論・本論・結論など)を把握できる
- 要約力——内容を自分の言葉でまとめられる
- 速読力——限られた時間の中で意味を取り出せる
なぜ読解力がすべての教科の土台になるのか
算数——文章題の「意味」を読み取る力
算数の文章題が解けない原因の多くは、計算力の不足ではなく、問題文の読み取りにあります。 「3人に4個ずつ配るとき、全部で何個いるでしょう」 この問題を正しく解くには、「3人」「4個ずつ」「全部で」という言葉の意味と関係を正確に理解しなければなりません。文部科学省が委託した「読書活動と学力・学習状況の関係に関する調査研究」(静岡大学、2011年)でも、読書活動と算数の学力調査結果との関連が示されており、読解力の弱さが算数の文章題の正答率に影響することは広く指摘されています。理科・社会——説明文を読む力
理科の問題文には「実験の手順」「条件の説明」など、論理的な構成を持つ文章が登場します。社会では「歴史の流れ」「地理の説明」など、情報量の多い文章を正確に読み取る力が求められます。「読んで理解する力」がなければ、知識を正しく吸収することもできません。全教科に共通する「問題文を読む力」
「〜を求めなさい」「〜について説明しなさい」「〜の理由を書きなさい」という指示を正確に読み取れなければ、知っていても正しく答えられません。読解力は、学力全体を支える基礎力です。読解力不足のサインを知っておこう
以下のような様子が気になる場合、読解力の発達を支えるサポートが効果的かもしれません。- 算数の文章題で「何を聞かれているかわからない」という
- テスト後に「問題文の意味を間違えた」が多い
- 本を読み始めても途中でやめてしまうことが多い
- 物語を読んでも「どんな話だった?」と聞くと「わからない」と言う
- 教科書の説明文を読んでも内容を頭に入れられない
ただし、学力を支えるのは読解力だけではありません。語彙力・思考力・知識なども相互に影響し合っています。読解力が上がれば語彙が増え、語彙が増えれば読解力がさらに伸びる——この好循環が、読書習慣のある子どもの学力を着実に押し上げていくのです。 読解力が育つ具体的な読書方法については、こちらの記事もあわせてご覧ください。 https://ichica-kotoba.com/dokkai-chikara-shikumi-yomikata/
読書量と読解力——どのくらい読めばいい?
ベネッセが行った追跡調査によると、読書時間が「5〜15分」「30分」程度の層の子どもが読解力の得点で高い傾向があり、「まったく読まない」または「1時間以上」の層では得点が低い結果が出ています。 つまり、毎日少しずつ継続的に読むことが、読解力向上に最も効果的だということ。「休日に3時間まとめて」より「平日に15分ずつ毎日」のほうが力がつきやすいのです。 また、読書の効果は「すぐには現れない」という点も知っておきたいところです。語彙力や読解力への影響が出てくるのは、読書を始めてから約1年後というデータもあります。焦らず、長い目で見て続けることが大切です。 読書時間の目安と「読みすぎが逆効果になる理由」については、こちらの記事でくわしく解説しています。 https://ichica-kotoba.com/dokusho-jikan-30pun/物語だけじゃ足りない?説明文にも慣れておきたい理由
読書習慣がある子でも、「物語ばかり読んでいる」というケースは少なくありません。
実は学校のテストでは、説明文を読む力も非常に重要です。テストに出てくる文章の約半分は説明文・情報文であることを考えると、物語だけを読んでいると「説明文の読み方」が育ちにくいという盲点が生まれます。
物語を読むときの「感情や場面を追う読み方」と、説明文を読むときの「情報と論理の構造を読み取る読み方」は、実は異なるスキルです。「国語の物語文は得意なのに、説明文が苦手」「理科や社会の教科書が頭に入りにくい」という場合、この説明文読解力の差が原因であることがよくあります。
子ども新聞が説明文の力を補う
手軽に説明文・情報文に触れるのに最も適したメディアのひとつが、子ども向けの新聞です。新聞記事は「見出しで要点を伝え、本文で事実と背景を説明し、最後にまとめる」という構成が徹底されており、この構成に慣れることで説明文の論理的な流れを読み取る力が自然と育っていきます。 読売KODOMO新聞(週刊・月550円)は絵やマンガも豊富で、説明文に慣れていない子でも取り組みやすいのが特徴です。朝日小学生新聞(日刊・月2,500円)は、毎日読む習慣がついてきた高学年や読書量のある子どもにおすすめです。 物語と新聞のバランス読書については、こちらの記事でくわしく解説しています。 https://ichica-kotoba.com/kodomo-dokkai-hon-shinbun-balance/ 読売KODOMO新聞本選びに悩んだら——「ちょうどいい本」を選ぶ3つの条件
読書で学力を高めるには、ただ本を読めばいいわけではありません。大切なのは、どんな本を、どのように読み続けるかです。
司書として多くの子どもたちの読書を見てきて、学力につながる読書には3つの条件があると感じています。
| 条件 | なぜ大切か |
|---|---|
| ① 面白いと思える本 | 読む意欲がなければ続かない。楽しいから続けられる |
| ② 少しだけ難しい本 | 知らない言葉・新しい考えに出会うことで語彙力・思考力が伸びる |
| ③ 継続して読み続ける | 効果は積み重ねによって現れる。単発では力にならない |
ヨンデミーが解決すること
私自身、学校司書として「あと一冊が見つからなくて読書が止まってしまう」子を何人も見てきました。本の前で立ち止まって、結局何も借りずに帰ってしまう——そういう子ほど、実は本が嫌いなわけではないのです。 毎回、本を選ぶのが一番難しい。これは、プロの司書として現場にいる私の正直な実感です。- 子どもが「面白い」と思う本の傾向はその子によって違う
- 「少しだけ難しい」という絶妙なラインを見極めるのは難しい
- 「次は何を読もう?」で止まってしまうと継続が途切れる

読解力を育てるおすすめの本
司書として、読解力を育てる上で特に力になると感じている本をご紹介します。 『モモ』ミヒャエル・エンデ 著リンク
時間どろぼうと戦う少女モモの物語。抽象的な概念(時間、人生の豊かさ)を読み解く体験ができる不朽の名作です。読み終えた後に「何が大切だったか」を話し合うことで、読解力と思考力が同時に育ちます。
『ぼくらの七日間戦争』宗田理 著
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長文でも読み進められる「読む体力」をつけるのに最適な一冊。高学年から特に人気で、シリーズを通して読む楽しさも体験できます。
『注文の多い料理店』宮沢賢治 著(青い鳥文庫)
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短編集なので読む習慣をつけ始めた子にも取り組みやすく、国語の教科書とのつながりも作りやすい一冊です。
『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』新井紀子 著(保護者向け)
リンク
「なぜ子どもたちは読解力がないのか」をAI研究者の視点から分析した一冊。読解力の重要性を保護者が深く理解するための本として多くの方に読まれています。
よくある質問
Q. 読書だけで成績は上がりますか?
読書は学力の「土台」を育てますが、即効性のある教科勉強の代わりにはなりません。 語彙力・読解力・思考力・集中力といった学力の根っこを育てる力が読書にはありますが、テストで点を取るには教科ごとの知識・解き方の練習も必要です。読書は「勉強の質を高める下地づくり」として位置づけるのが正確で、長期的に見ると読書習慣がある子のほうが学力の伸びが安定しやすい傾向があります。Q. 漫画でも効果がありますか?
語彙力・読解力の面では本(活字)より効果は限定的ですが、「読む習慣のきっかけ」としては大いに活用できます。 漫画は絵が情報の多くを補うため、活字の文章を読む力はやや育ちにくいという特徴があります。ただし、漫画が好きな子はそれだけ「読むこと」への抵抗がない状態にあります。漫画から入って、少しずつ挿絵の多い児童書、章立ての読み物……と段階的に移行していくことで、読書の幅が広がっていきます。Q. 勉強と読書はどちらを優先すればいいですか?
テスト前は勉強を優先しつつ、日常的には読書の時間を確保するのがおすすめです。 読書の効果は「すぐには現れない」という性質があります。語彙力や読解力への影響が出てくるのは、継続して約1年後というデータもあります。逆に言えば、テスト週だけ読書を休んでも大きなダメージにはなりません。「テスト期間は勉強・普段は読書」というメリハリのある関わり方が、長期的に見て学力を伸ばす上で効果的です。Q. 毎日何分読めばいい?
目安は毎日15〜30分です。まずは「毎日続けること」を最優先にしてください。 研究のデータでも、学力への効果が高いのは「毎日15〜30分程度」の継続的な読書です。1時間以上になると効果の伸びが鈍化することもわかっています。「今日は時間がないから10分でいい」という日があっても、継続することのほうがずっと大切。毎日少しずつ積み重ねることが、読書の力を本当の意味で定着させてくれます。 https://ichica-kotoba.com/dokusho-jikan-30pun/まとめ:読書は「すべての教科の土台」を育てる投資
- 読書が学力を高めるのは「読解力・語彙力・考える力」が同時に育つから。国語だけでなく、算数・理科・社会でも効果は発揮される
- 9つの力は「基礎→応用→結果」の順に積み上がる——語彙・読解・集中が土台となり、知識・思考・表現が広がり、授業理解・学習意欲・自学自習という結果につながる
- 読解力は全教科に影響する力だが、語彙・思考・知識とも相互に育つ。好循環が積み重なって学力が伸びる
- 毎日15〜30分の継続が最も効果的。長時間より短時間継続のほうが力がつく
- 物語だけでなく説明文(子ども新聞など)も読む習慣が、テスト対応力を補う
- 「面白い×少し難しい×継続」の3条件が揃ったとき、読書は最も力を発揮する
子どものことば・コミュニケーション・読書の力を育てるヒントを発信しています。 他の記事もぜひご覧ください。
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